中学に上がる前から
眼鏡を必要とする近眼に。
黒縁に
牛乳瓶の底を思わせる
分厚いレンズと、
どうにも恥ずかしくて
ならなかった。
そのせいで
女性にはとんと無縁の
寂しい青春だった。
思い切って
コンタクトに替えた。
すると
不思議に女性にモテた。
彼女もそんな一人で、
結婚まで考えた。
ところが、
喫茶店でデートを
楽しんでいた時に、
急に目が痛んだ。
前夜徹夜仕事で、
コンタクトをズーッと
はめっ放しだったせいである。
慌ててコンタクトを外した。
すると相手の顔が見えない。
仕方なく
ポケットに忍ばせてあった
眼鏡をつけた。
あの黒縁のである。
「わたし眼鏡の男の人嫌いなの」
彼女が最後に残したキツイ言葉だった。
また眼鏡に戻った。
無理に見た目に拘っても、
所詮無駄な足掻きなのを知った。
ありのままで生きて、
縁がないのなら諦めよう。
そんな私を酔狂にも受け入れた妻は、
五十年近くも
牛乳瓶眼鏡の旦那に
付き合ってくれている。
眼鏡を必要とする近眼に。
黒縁に
牛乳瓶の底を思わせる
分厚いレンズと、
どうにも恥ずかしくて
ならなかった。
そのせいで
女性にはとんと無縁の
寂しい青春だった。
思い切って
コンタクトに替えた。
すると
不思議に女性にモテた。
彼女もそんな一人で、
結婚まで考えた。
ところが、
喫茶店でデートを
楽しんでいた時に、
急に目が痛んだ。
前夜徹夜仕事で、
コンタクトをズーッと
はめっ放しだったせいである。
慌ててコンタクトを外した。
すると相手の顔が見えない。
仕方なく
ポケットに忍ばせてあった
眼鏡をつけた。
あの黒縁のである。
「わたし眼鏡の男の人嫌いなの」
彼女が最後に残したキツイ言葉だった。
また眼鏡に戻った。
無理に見た目に拘っても、
所詮無駄な足掻きなのを知った。
ありのままで生きて、
縁がないのなら諦めよう。
そんな私を酔狂にも受け入れた妻は、
五十年近くも
牛乳瓶眼鏡の旦那に
付き合ってくれている。