こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ワクワク

2017年07月16日 10時20分35秒 | Weblog
カレーを作って、
ひとりごそごそとお昼にします。
ちょっと早めなのは、
出かける予定があるからです。
そう。
今日は娘のバイオリン演奏の舞台があります。
家でじっとしているのもアレだから、
早く日吉神社に出向いて、
会場周辺を楽しんでみよう。
出演時間は夕方6時前とか。
田舎の小学校は1クラスで少人数。
まとまりがよくて、
いまもいい関係が続いています。
小学校で担任だった先生も、
友達も、そのお母さんも、
チラシをどこかで発見して、
みんなが連絡を取り合って、
足を運んでくださるそうです。
ハハハ、田舎っぺくささ丸出しですが、
親としては、うれしい限りです。
特に世界の狭い生き方をしてきた父親には、
感激いっぱいです。(ホロリ)
実は娘、
いま参加している管弦楽団では、
加古川出身で通っています。
田舎の名前を出しても、
誰も知らないとか言っていますが、
自分が生まれ育った故郷の名前を、
ホコリにしてもらいたいなあ。
リュックに、
ビデオカメラを詰めて、
出かける用意万端です。
ビデオに撮るのは、
数年ぶり。
果たしてうまく撮れるかどうか、
頑張るしかないのです。

あ?
隣の部屋で娘らの
音合わせが始まりました。
ユカタで演奏するとか、
これまた楽しみです。
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別冊付録・3

2017年07月16日 00時49分47秒 | Weblog
野球漫画が全盛でしたね。
一峰大二、辻なおき、貝塚ひろしら、
そうそうたるメンバーでした。
ただし運動神経音痴の私は、
漫画に出てくるカーブや
シンカーなんて理解の範疇外だったな。(笑)
息子が二人いるけれど、
小さいころにキャッチボールの相手を務めたのは
わずか二度だけ。
顔でボールを受けるのだから、
息子らもあきれただろうな。

そんな親の血を引いているのに、
二人とも高校でのクラブは、
サッカー部にバレーボール部。
もう何も助言できなかったっけ。
ちなみに、
長女は陸上競技部。いやはや。
末娘が、やっと芸術畑に進んでくれて、
ホッとするものがあります。
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ひととき

2017年07月15日 09時08分07秒 | Weblog
100均の種子でこうなりました。
ウハウハ。
ナスはちょっと?な代物ですが、
トマトときゅーり、いんげんは一人前。
枝豆はおいしかったですね。
ちなみに、最近家の周りに猿の姿を目撃。
これまでイノシシと鹿の害だったのに、
猿君とは、
これは太刀打ちできそうにないですね。(溜息)
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別冊付録・2

2017年07月15日 01時07分18秒 | Weblog
イベントの準備に
バタバタしています。
明日はまちライブラリーで、
エッセー教室の予定。
日曜にはハチドリ祭りに
足を運ぶ予定です。
娘の久しぶりのソリストぶりが
見られると思うと、
やや興奮の体です。(笑)
久しぶりにビデオ撮影でもするかな。


さて今日は、
きのうの続きで、
別冊付録を、紹介します。
結構有名な作家たちの作品です。
さすがに一世を風靡した大家たちは、
作品もオーラを放っています。
ただし別冊付録で、
小冊子本の表紙です。
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別冊付録

2017年07月14日 01時05分29秒 | Weblog
倉庫に積んだままになっていた
段ボールを開けて、
断捨離に入っています。
しかし、
懐かしいものが出てきました。
昔は月刊漫画誌に、
付録がついていました。
ボール紙の工作品や、
日光写真とかいろいろついてて
楽しみでした。
そんな中でも、
本誌の四分の一より少し大きめの、
別冊付録は面白かったですね。
本誌の連載漫画の続きだったり、
特別漫画だったり、
趣向を凝らしていました。
その別冊漫画が詰まった段ボールの箱が
あったのです。
ホコリくさいのも気になる暇もなく、
読みふけってしまいました。
今はない、
月刊漫画誌、
「少年」「少年画報」
「冒険王」「漫画王」
「ぼくら」「少年クラブ」……!
の懐かしい別冊付録の数々です。
少年に戻って、
素朴なストーリーに癒されます。
いや~!生きててよかった~~!(笑)
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ばたばた

2017年07月13日 01時27分01秒 | Weblog
イオンの売り出し日に、
格安卵を手に入れたので、
きょうは冷凍保存しておく
メニュー作りに徹した。
クレープを25枚、
パンケーキを10枚、
ホットケーキを8枚、
そしてお好み焼きを15枚
焼き上げた。
みんな卵と小麦粉が
材料の中心だ。
混ぜ合わせるのはすぐだが、
焼くのに時間を要する。
並行してネットサーフィンを楽しんだ。
飽きないための一策だ。
夢中になってしまうと、
焦がしてしまうが、
そこはB型人間、
ながら族のハシリともいわれている。
なになにしながらなになにするのは
お任せだ。

焼きあがると、
冷ましておいて、
プリン、コーヒーゼリー、
牛乳ゼリーを作り置きする。
ゼリーといっても寒天を代用に使う。

100均で買っておいた、
蓋つきの丸い容器が便利で、
蓋を閉めて保存しておけば、かなり持つ。

冷凍庫には、
焼き上げたハンバーグと、
イナリ寿司ように炊いた寿司揚げを、
煮汁につけた儘のパックが入っている。
もちろん、イオンでいつも買う、
まるまるの食パンを、
いろんな用途に応じた厚さにカットしたのも、
出番を待っている。
もっと細かくいえば、
カット小口ネギに、
ホウレンソウや小松菜をボイルしたのを、
使い勝手を考えてカットして保存している。
他にパン粉とピザ用チーズも。
みんな詰めてあるのは、、
100均で仕入れた透明容器。
いろんなサイズが合って重宝している。
100均様様である。

キッチンとパソコンの前を行き来しっぱなしで、
夜を迎えてしまった。
今夜はブログの確認は無理だ。
とりあえず、
きょうの一部始終を書いておくことにした。

さあ明日は二日分のブログのコメント整理だ。

決意は固いが、
やはりB型人間、
気分やだから、確証のほどは何とも……?
勝手ながらご容赦ください。
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ひとり

2017年07月12日 02時05分26秒 | Weblog
火曜日は
イオンの売り出し日
『火曜市』です。
ここ何週かは、
夫婦で出向いていたのですが、
きょうはひとり。
ふたりだと都合がいいのです。
卵を一度に2パックづつ買えるからです。
実は、
『火曜市』の目玉は卵の安売り。
税込みで105円。
昔はまとめ買いをしたものだが、
今は1000円以上の買い物をしたら、
ひとり1パックが手に入る。
最低10パックをまとめ買いしていた時も、
ちゃんと『ひとり1パック』のルールが。
レジを出たり入ったり、
卵だけを買ったものです。
今はそう都合よくいかない。
とにかく1000円
買い物をしなければいけない。
妻が計算機で加算し、
夫は買い物をと、
ふたりいると二人三脚でスイスイ。
それが一人だと
自分で計算をしなければならない。
老眼と近眼だから、
携帯の計算機能も使えないので、
右手にメモ帳とバールペン。
筆算での買い物は、
とにかく時間がかかる。

「1118円です」
卵105円を除くと
『1013円』とガッチリ。

いやはや大変な買い物だが、
頭を細かく使うので、
頭のボケ防止にもってこいです。

きょうは2218円買い物で、
卵2パック確保です。
やりましたね。(大笑い)

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記憶の風景・朝帰り

2017年07月11日 00時53分46秒 | Weblog
弁当会社の
夜勤が終わると
深夜四時前。
眠い目をこすりながら
車を飛ばして帰る日々だ。
仕事量が少ない日で、
一時間早く終わった。
帰り着いた家は
真っ暗で静まり返っている。
疲れがドッと来た。
出るのは溜息だけ。
玄関のカギは
新聞受けの底。
ゴソゴソやっていると、
いきなり背後からかかった声。
「おたく、何してはるんや!」

Y新聞の配達員だった。
その声の感じから、
泥棒と間違われているのに
気付いた。

「わし、
ここの人間やで。
夜勤明けで、
そこのH弁当会社から
帰ってきたとこなんや」

「ああ!
そらご苦労はんです。
お疲れやのに、
勘違いしてもうて、
えろう済んません!」

気の毒になった。
深夜にゴソゴソでは、
泥棒に間違われても
当たり前なのだから。

「いつも弁当買ってます。
うまい弁当ですね」

そんなべんちゃらと一緒に
朝刊を手渡してくれた。
彼の素朴で正直な笑顔は、
私の疲れを
いっぺんに
吹き飛ばしてくれた。


どんな時にも、
必ず出会いがあり、
ドラマとなった。
それが人生だったんだ。
いま、つくづくそう思う。
遅かったかなあ。(笑)
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若き演奏家たち

2017年07月10日 01時06分38秒 | Weblog
いま深夜1時半。
ひとつ部屋をはさんだ別室から、
バイオリンとピアノの音が
ひっきりなしに聞こえる。
来週16日に実施予定のハチドリ祭りで、
演奏する娘の練習である。
ピアノ伴奏は娘の高校時代の同窓生。
いまは京都芸術大学ピアノ専科生。
コンクールで優勝もしている
ピアニストである。
音大に進まなかった娘が、
片田舎のイベントで演奏するのに、
進んで伴奏をやってくれているらしい。
考えてみれば、
娘は音高で
素晴らしい仲間たちと
知り合ったものだ。
春には、
同窓生が集まって演奏会をやっている。
娘は演奏する側ではなく、
ピアノ演奏の、
楽譜捲りと事務局を担当している。
同窓生全員の結集で開かれた、
コンサートは、
感動の渦だったらしい。
音大の現役生が持てる力を、
フルに発揮したのだ。
そんじょそこらの演奏会で
終わるはずがない。
娘は自分の立ち位置を
ちゃんと把握している。
音楽の世界にかけようとする仲間たちを
生かすための黒子役も、
そう考える娘の意志だったらしい。
そして、
今度は自分がソリストとして演奏するのに、
一流への道を突き進むピアニストが、
手弁当で支援してくれている。
セミプロどまりの娘に、
付き合っても、
彼女には得にならないと思うが……?

ピアノの音は、さすがにランクが違う。
その伴奏に生かされて
娘のバイオリンも、
いつもを超越する、
いい音色を出している。
相乗効果という奴だろう。

娘と仲間の練習はまだ激しく続いている。
(?)
よく知っているメロディーが流れてきた。
情熱大陸のテーマー曲である。
葉加瀬太郎が、
私たちの心に響かせ届けてくれた情熱を、
いま娘たちが演奏している。

しばし、ワード打ちの手が止まり、
聞きほれてしまった。

年頃になって父親と距離を取り始めた娘だが、
その演奏が耳に届く距離にいられる幸せに、
いまわたしは酔い痴れている。

ちなみに、
今回のイベントは、
震災復興支援にエールと支援金を託す
ボランティアイベントです。

福岡・大分のみなさん。
負けないで頑張ってください!
そういうことしかできない現実が空し過ぎます……!
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ちょっと退屈な創作

2017年07月09日 10時11分22秒 | Weblog
刺身包丁でマグロの柵をひくのもリズムがいる。三千を上回る切り数だった。イカとサーモンはすでに切り揃えてある。まずまず順調な流れに、坂手翔太は満足を覚えた。
 ゾクゾクする。足元から厳しい冷気が立ちのぼる。生魚を扱う調理場は、一年の大半が冷房を効かせた独房と化す。厳冬期はさすがに冷房は止まるが、ストーブなど暖房器具はやはり持ち込めない。何枚も重ね着して耐えるのが関の山だった。白い上っ張りはパンパンにふくれボタンは引き千切れそうだ。それでも寒さから完全に逃れられはしない。
 気をつけるのが風邪。一度ひいてしまうと必ず長引く。気の緩みが一番の敵だった。緊張感が解ける時を狙い撃ちするウィルスは、ここぞとばかり襲ってくる。首筋に悪寒が走ったら万事休す!もはや手遅れである。
 調理場の片隅にひっそりと掛けられた時計は、一時四十三分を指している。もちろん深夜である。よく遅れる時計だった。人間と同じで厳しい環境は、時計も苦手なのだろう。仕事前に調整するが、まだ誤差は生じていない。勤務は明け方の五時に終わる。とはいえ物量の多寡によって前後する。いくら超過勤務になろうとも、残業手当はまずつかない。サービス残業がイヤなら、とにかく作業を迅速に進めて終わらせるしかない。
 将太がこの仕事に入ったのは五年前。それまで2×4工法のパネル製造工場に勤めていたが、収入を増やす必要に迫られ転職した。ハローワークで紹介されたのが、仕出し・弁当製造の食品会社『陣太鼓』だった。深夜勤務専属で時間給千三百円と、2×4パネル工場で貰う時給の一・三倍以上になる。しかし生活のリズムは極端に狂った。
「大丈夫なん?夕方から翌朝までずーっと立ち仕事でしょ。体を壊さないか心配やわ」
 出産を控えた若菜は、額に皺を寄せた。夫の転職にあまり乗り気ではなかった。とはいえ子供が増えると、建築会社の収入ではきつくなる。他に選択肢はない。将太は胸を叩き「まかしとけ。大丈夫やて」と笑ってみせた。
「なにかやる事ある?」
 調理場を覗いたのは、パートの岩瀬佳美だった。白い帽子とマスクで、見えるのは目だけで、どんな顔かは想像するしかない。若いのか年を食っているのかさえ、容易に判断は付かない。ただ目だけだと美人に見えた。
佳美や他のパートたちが調理場に姿を見せるのは深夜の二時過ぎ。それまでは、生ものを使わない安価な弁当を盛り付けている。ひと晩で三千食から五千食前後の弁当を製造する現場は、喧噪で慌ただしい戦場だった。
 ベルトコンベアーのラインが六本。長さは十メートル近い。その両側に白衣のパート・スタッフがずらりと並ぶ。コンベアーで流す弁当容器に、調理された総菜やご飯を手際よく詰めていく。フライや卵焼きなど、ひとりがひとつの惣菜を担当するので、抜け落ちがあれば誰の責任かすぐ判明する。気が抜けない大変な作業だった。熟練したパートなら、両手を間断無く動かし、抜け落ちなく盛り込む。将太も時おり盛り付け場に駆り出されたりするが、コンベアーの速さについて行けず、両隣のパートに迷惑をかけてしまったりと、苦手にしている。
「今日は結構仕事がありそうやね」
「まあな。それじゃワサビ台からや」
 刺身に添えるワサビは、薄く切り揃えた胡瓜を台にワサビを盛る。単純な作業だが数が多いと厄介である。しょっちゅう担当する岩瀬佳美は手慣れている。彼女に任せておけば、翔太がしゃしゃり出る必要はない。
「ねえ。坂手さんて真面目やんか。奥さんしか目に入らへんの?」
「え?」
 思わぬ問いかけに驚いて、佳美を見やった。彼女は手を止めて、将太を見詰めている。白く大きいマスクがスッポリ覆われた顔に目だけがくっきりと浮かび上がって見える。
「ほかの女の子に興味はないの?」
「あ?ま、まあな……」
「坂手さんて、あたしの好みなんやけどなあ」
 将太は目を逸らせて空咳をした。
 ぽっちゃりした佳美は、はっきり言って好みのタイプだった。ただマスクに隠れた顔の美醜は判断しょうがない。仕事を一緒にするようになって一年は経つが、彼女の素顔を覗く機会は一度もなかった。冗談口を叩くようになっても、やはりマスクを外した顔に遭遇したことはない。
「けったいな冗談いわんときや……」
 どぎまぎする自分を咄嗟にごまかしたつもりが、もともとそんな器用さを持ち合わせていない。狼狽えているのはもろ分かりだった。翔太は顔がカァーッと熱くなるのを感じた。都合よくその顔はマスクに隠れている。
それでも佳美はちゃんと見透かしているかのように、目が笑っている。
「坂手さん、幕の内一○六五のお刺身、お願いします!」
 商品番号を口にしたのは、盛り付けのパート女性で、割と年を食っている。有無を言わせぬキャリアがあった。値の張る幕の内弁当の上が盛り付け時間を迎えたらしい。
「ああ、切れてるわ。冷蔵庫の上段や。イカとマグロにサーモン一緒に入っとるコンテナーやで。それ持っていって」
「あいよ。分かった、これやな」
 盛り付け場へ取って返す彼女。去り際にちらっと目を走らせたのが気になった。
 気勢をそがれた格好で、佳美はワサビ台を作る作業に戻っている。何事もなかったかのようにすまし顔である。将太は冷静さを取り戻すべく、調理台を離れた。
調理場の奥まった一角に通称『トリ部屋』はある。から揚げや照り焼きに使う鶏肉の下調理専用の部屋で、サルモネラ菌中毒を防ぐ目的で隔離部屋仕様になっている。
 将太は並ぶコンテナーを見下ろした。唐揚げ用にカットされた鶏肉が調味液に浸かっている。ブラジル産の冷凍鶏肉だった。『トリ部屋』は凍えてしまいかねないほどクーラーがきつい。心の乱れで火照った顔を宥めるには好都合だった。
初めてではなかった。翔太はまだ若い。調理場にいると、しょっちゅうパートの女性からちょっかいをかけられる。大半は生真面目な将太を揶揄するものだが、中には本気で迫る相手もいた。佳美はその一人で、しょっちゅう誘惑してくる。人妻なのに、あわよくばといった思いが顔にあらわれている。
 翔太の妻、若菜は三人の子どもの育児に忙しく、将太の扱いはいつも後回しにする。三人も子供がいれば当然の成り行きだった。性格上押し黙って我慢しているが、その状況が長くなればやはり不満は生じる。 将太の現状を推し量れば、さっき佳美が見せた積極的な態度にふらついたのは自然の理だった。
「どうしたの?」
 佳美だった。『トリ小屋』から出てこない将太にしびれを切らせたのだろう。もうひと押ししようとの魂胆を漲らせている。
「いや、なんもあらへん。盛り付けが忙しなる時間やわ、さっさと仕事片づけるか……」
「ちょっとぐらいええやないの。仲ええとこ見せつけたったら面白いよ」
 佳美は意味ありげに笑った。マスク越しの目に女っぽさが溢れ出ている。将太は言葉を飲み込んだ。めまぐるしく頭が働き、防衛本能が危険信号を激しく点滅させた。
「そないなこと……もう、仕事中やで」
「もうみんな知ってるもん」
「え?何を」
「わたしが坂手さんと、おかしいって」
 佳美は「クククッ」と笑った。
 将太は頭にガーン!と一発食らった。(みんなが知っている?俺と佳美がおかしい……?冗談じゃない!そんな仲やあらへん!)
「初心(ウブ)なんや、坂手さんて。だから好きなんやけど」
 どうやら佳美がいいふらしたらしい。
「止めろ!」 
邪険に振り払い『トリ小屋』を出た。
「待ってよ。どないしたん?」
「休憩や。胡瓜台が済んだら、こっちの仕事は終わりやで、盛り付けへ戻ってんか」
 素気なく言ってのけた。意表を突かれた格好で、佳美は不満げに口を閉じた。
 将太は調理場の外に出ると、自動販売機で缶コーヒーを買った。やはり気が動転している、ボタンを押し間違えた。熱いコーヒーを飲まないとやっていられない寒さなのに、将太の手には冷たい缶コーヒーがあった。慌てて小銭を出すと、別に熱いのを買った。冷たい方はポケットに押し込んだ。缶の冷たさがズボンを通して腿を痺れさせる。熱いのを飲み干すと、なんとか人心地はついた。
 携帯の電源を入れた。溜まったメールを開けると、一番最初に若菜からのものがあった。
『いま仕事の真っ最中だよね。お疲れさま。こちらは三人の可愛い子ちゃん、やっと寝てくれた!みんなあなたにそっくりの寝顔。眺めてて吹き出しちゃった。あー、くだらないメールで、ゴメン。明日の朝、好きなもの作っとくから、食べて下さい!寝てるかも知れないけど。以上です。頑張れ、おとうさん!』
(馬鹿やろ、起きとけよ)
 将太は軽く毒づいた。胸の内に温かいものが広がる。早く家に帰りたくなった。無性に若菜と子どもらの顔が見たかった。
(さあ、もうひと踏ん張りや!)
 将太は空き缶を専用箱に放り込んだ。
 調理場に戻ると、佳美の姿はなかった。マグロの刺身にかかる。あと三百切れ。邪魔が入らなければ、あっという間に終わる。
「マグロ二百五十切れ、できてますか?」
 佳美だった。盛り付けに戻ってしおらしい。見返ると佳美の目はいやらしく光っている。
 翔太はマスクの下で、大きな溜息をついた。
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