国際障害コーカスIDCは、国際障害連盟IDAに加盟する国際難聴者連盟IFHOHの他、世界ろう連WFD、世界視覚障害者連盟WFB、知的障害者、精神障害者などの国際組織に加え、アジア太平洋等地域の障害者団体を加えたこの特別委員会のための協議組織だ。
特別委員会の会期中毎朝9時から、IDCの各テーマ別の検討グループが集まって意見交換をする。この会議はマイクもなく、肉声で意見交換するので、聞き取りにくい。
17日の朝、マッケイ議長がこの会議に参加して、熱意を込めて会議に臨む方針を説明した。もう新しい提案は取りあげない、過去に2週間の会期を二回行い、何度も議論して、意識を変えて来た。人間と同じように、会議も成長している、後退はあり得ない。個別の障害者団体の要望は取りあげない、他の障害者団体の理解と賛同を得て、一緒に提案して欲しい、新しく参加して国々がこの過去の議論を理解していない提案をしてくる。各国の説得に当たって欲しいと強調した。
一部の障害者団体が、今までの議論で見えなかった新しい問題が見つかったらどうするのか、まだ検討しなければならないことはあると畳み掛ける。マッケイ議長は、各組織で十分検討し、他の組織と合意の上出して欲しいと応え、何とか今会期中に草案の見通しを付けたいとの意気込みが伝わって来た。
IDCの会議に現れた国際難聴者連盟のデューガンさんが、8/9に発表されているIDCの提案に、文字通訳のことが載っていると言う。この提案を取り入れてくれたイスラエルの人を探している。まだ会っていないので顔も知らないと言う。イスラエル政府の席にいる人が知っているのではないかと会いに行ってみたらその人だった。何か話してはいたが、明るい表情ではない。
しかし、この時点では私たちはIDCの第9条の条項に問題があるとは気がついていなかった。
ラビット 記
IDCの提案する第9条の中に、文字通訳(speech-to-text repoters)の言葉はなく、文字変換(speech-to-text)のみが情報アクセスのg項に載っていることが分かった18日、国際難聴者連盟のデューガンさんに問題の指摘と対応を協議した。IDCのメーリングリストに何回も何回も載せてくれるように要望して、やっと条文に文字変換(speech-to-text)が掲載された。これを支持してくれたイスラエルの人と話をした。
彼女の話によれば、自分がそこに入れたのではない。別の担当者が入れた。しかし、IDCは条約案に採用させるだけの力はない、この時点で条約案に取り入れるには政府を動かす必要があると言う。
マッケイ議長が草案に対する意見の調整をIDCに期待しているが、IDC自体がいろいろな考えを持つ障害者団体の集まりなので、案自体に不合理さが残るのはやむを得ないような言い方だ。これが国際障害団体の協議体の限界なのだろうか。
それでも、医療モデルではなく社会モデルの提唱、合理的配慮や国内、国際モニタリング機関の設置などを提案して来た意味は大きい。
デューガンさんがカナダ政府のNGO代表のスティーブン・エスティ氏に事情を説明したがエスティ氏の表情は硬い。エスティ氏は難聴者で、文字通訳を政府の費用で連れて来て、壇上の右側で会議の通訳を見ている。
聞くとカナダ政府に文字通訳のことは要望しているが取りあげないと言われている、17日にマッケイ議長が第9条について意見はないかと聞いた時に誰も手を上げなかった(実際にはタイ代表のみ挙手)ので、議長は問題がないと思っている。ここで問題があると政府に発言させるには相当の内容でないと難しい。それを要望する全難聴はどうして日本政府に挙手させなかったのか、日頃の政府との関係までさらされることになるとまで言われる。
エスティ氏は、それでも分かった出来るだけ説得すると言ってくれた。同氏は政府代表の席に行って、文字通訳のことを提案してくれるように熱弁を振るっていた。後で聞くとやはり発言はしないと。文字の表記が挿入されているので、これには字幕やその他も文字の表示の他に、文字通訳も入っているという解釈ナノで、無理にこれ以上は要らないと。日本の内閣府も今回の代表団結団式の際に、同様の受け止め方をしていることを聞いた。しかし、全難聴は確実なものにするために各国政府やその他の障害者団体の理解を得るように努力することにしていた。
国連の会議は、各国政府の協議で進められる。障害者当事者が政府代表になっている場合を除いて、発言は出来ても参考意見にとどまる。アラブ系とそれ以外の国が応酬しあってパワーポリティクスを目の当たりにする。こうなると出来ることは国際世論を広げるしかない。午後のアジア太平洋障害フォーラムAPDFの後に予定している、IFHOHと全難聴、JDFのサイドイベントに全力を尽くすしかない。
(8/18の午後1時過ぎの状況)
ラビット 記