障害者自立支援法は、聴覚障害者にとっても功罪が相半ばする法律だが、以下の点で抜本的改正を求める必要がある。
(1)コミュニケーション支援事業事業に応益負担を求める余地を残していること
根本的には、(5)の予算に限界があることが背景になっている。
さらに、コミュニケーション支援は聴覚に障害のある人だけへの支援ではないことや自立支援給付の個別給付と地域生活支援事業の制度の違いを無視したり、理解していないことが原因だ。
しかも行政側から、障害の「重さ」を理由に他の障害と比較して聴覚障害を軽視したり、障害者間の対立を招くような説明をしたことなどが各地で問題になった。
(2)コミュニケーション支援支援事業の地域格差を招いたこと。
1995年にそれまで都道府県の手話通訳者派遣事業が市町村の手話通訳派遣事業が制度化されて以降も、障害者自立支援法の成立時にも各市町村の派遣事業の格差是正をきっちりとしてこなかったため、派遣の範囲や対象が市町村でまちまちのままだ。
地域によっては、域外の派遣を認めないことや通訳者の交通費の負担などがある。これは形を変えた応益負担そのものだ。
聴覚障害者の生活や活動は制度発足時と比べて大きく拡大しているにも関わらずに、派遣制度の改善、充実をしないまま放置されてきた。
障害者自立支援法で要約筆記者派遣事業が市町村の義務になったのはよいが、手話通訳派遣事業にならって制度化されているので、これらのサービスの利用を制約する問題まで引き継がれている。
(3)通訳者の身分や資格が明確でないまま、事業が行われている。
このことは、聴覚障害者の人権を擁護すべき通訳者が身分も不安定で、低い報酬で従事している。経済不況下でパートに出る人が増え、通訳の確保にも困るようになっている。
(4)派遣事業のコーディネーターの養成と設置が明確でないこと。
手話通訳者、要約筆記者は人のコミュニケーションに関わる事業に従事し、その利用者がコミュニケーションに起因する多くの問題を抱え持っていることから、慎重に派遣する人を決定し、事前に派遣の現場の状況を把握したりする必要がある。派遣した結果からも人権に関わる問題がないか、よりよいQOLが得られるような支援を考える必要がある。
これらをになうのがコーディネーターだ。サークルや市職員が片手間にやる仕事ではない。
(5)コミュニケーション支援事業を含む地域生活支援事業が裁量的経費であること。
ニーズが増大しても国からは予算が補填されずに、全国の市町村にサービスの拡大が期待できない。
これまで実施していない地域で事業を行う場合、国からの補助金がそのままではどこかにしわ寄せがくる。
要約筆記者として十分な報酬を支払うだけでも予算が不足するのは目に見えている。
(6)「介護給付」や「訓練等給付」にコミュニケーション障害が加味されず、コミュニケーション支援が位置づけられていないこと。
聴覚障害のある人が介護給付を受ける場合に、通訳は考慮されていない。
(7)要約筆記者派遣事業が地域生活支援事業のコミュニケーション支援事業となったことを個別給付の事業と混同したことから、団体派遣事業がなくなっていること。
要約筆記は、手話の分からない難聴者や中途失聴者、あるいは補聴器で聞こえる難聴者、健聴者などが一緒にコミュニケーションする場合に不可欠なコミュニケーション支援の方法だ。
しかし、コミュニケーションの支援は聞こえない人だけのためにあるのではない。その場にいる人全体のコミュニケーションを支援している。つまりコミュニケーションの「場」に対する支援という性格がある。
これは要約筆記が始まってから変わりがない。もともとコミュニケーションの場に対する支援だった。
その他、日常生活用具の給付対象となるコミュニケーション機器の数が少ないこと、補聴器等の購入補助に一部自己負担があること、補助の給付基準が障害者当事者でなく、所帯であることなど、是正すべき内容が多い。
ラビット 記
9月26日14:00
記事の説明を分かりやすいように一部変更しました。
(1)コミュニケーション支援事業事業に応益負担を求める余地を残していること
根本的には、(5)の予算に限界があることが背景になっている。
さらに、コミュニケーション支援は聴覚に障害のある人だけへの支援ではないことや自立支援給付の個別給付と地域生活支援事業の制度の違いを無視したり、理解していないことが原因だ。
しかも行政側から、障害の「重さ」を理由に他の障害と比較して聴覚障害を軽視したり、障害者間の対立を招くような説明をしたことなどが各地で問題になった。
(2)コミュニケーション支援支援事業の地域格差を招いたこと。
1995年にそれまで都道府県の手話通訳者派遣事業が市町村の手話通訳派遣事業が制度化されて以降も、障害者自立支援法の成立時にも各市町村の派遣事業の格差是正をきっちりとしてこなかったため、派遣の範囲や対象が市町村でまちまちのままだ。
地域によっては、域外の派遣を認めないことや通訳者の交通費の負担などがある。これは形を変えた応益負担そのものだ。
聴覚障害者の生活や活動は制度発足時と比べて大きく拡大しているにも関わらずに、派遣制度の改善、充実をしないまま放置されてきた。
障害者自立支援法で要約筆記者派遣事業が市町村の義務になったのはよいが、手話通訳派遣事業にならって制度化されているので、これらのサービスの利用を制約する問題まで引き継がれている。
(3)通訳者の身分や資格が明確でないまま、事業が行われている。
このことは、聴覚障害者の人権を擁護すべき通訳者が身分も不安定で、低い報酬で従事している。経済不況下でパートに出る人が増え、通訳の確保にも困るようになっている。
(4)派遣事業のコーディネーターの養成と設置が明確でないこと。
手話通訳者、要約筆記者は人のコミュニケーションに関わる事業に従事し、その利用者がコミュニケーションに起因する多くの問題を抱え持っていることから、慎重に派遣する人を決定し、事前に派遣の現場の状況を把握したりする必要がある。派遣した結果からも人権に関わる問題がないか、よりよいQOLが得られるような支援を考える必要がある。
これらをになうのがコーディネーターだ。サークルや市職員が片手間にやる仕事ではない。
(5)コミュニケーション支援事業を含む地域生活支援事業が裁量的経費であること。
ニーズが増大しても国からは予算が補填されずに、全国の市町村にサービスの拡大が期待できない。
これまで実施していない地域で事業を行う場合、国からの補助金がそのままではどこかにしわ寄せがくる。
要約筆記者として十分な報酬を支払うだけでも予算が不足するのは目に見えている。
(6)「介護給付」や「訓練等給付」にコミュニケーション障害が加味されず、コミュニケーション支援が位置づけられていないこと。
聴覚障害のある人が介護給付を受ける場合に、通訳は考慮されていない。
(7)要約筆記者派遣事業が地域生活支援事業のコミュニケーション支援事業となったことを個別給付の事業と混同したことから、団体派遣事業がなくなっていること。
要約筆記は、手話の分からない難聴者や中途失聴者、あるいは補聴器で聞こえる難聴者、健聴者などが一緒にコミュニケーションする場合に不可欠なコミュニケーション支援の方法だ。
しかし、コミュニケーションの支援は聞こえない人だけのためにあるのではない。その場にいる人全体のコミュニケーションを支援している。つまりコミュニケーションの「場」に対する支援という性格がある。
これは要約筆記が始まってから変わりがない。もともとコミュニケーションの場に対する支援だった。
その他、日常生活用具の給付対象となるコミュニケーション機器の数が少ないこと、補聴器等の購入補助に一部自己負担があること、補助の給付基準が障害者当事者でなく、所帯であることなど、是正すべき内容が多い。
ラビット 記
9月26日14:00
記事の説明を分かりやすいように一部変更しました。