●今日の一枚 3●
Madeleine Peyroux careless love
マデリン・ペルー。最近聞いた女性シンガーの中ではピカ一だ。なんというか、翳りを感じるフィーリングがとても良い。アメリカ生まれだが、母親とともにフランスに移住。15歳で家をでてパリの街角で歌い、ついでバンドに加わりヨーロッパ各地を旅して歌ったという放浪の歌手だ。声量があるわけでも、テクニック的にすごいというわけでもないが、なんともいえない陰影のある歌い方をする。『Swing journal』2005.4月号は、「ビリー・ホリデイがシャンソンを歌ったらどうなるか。エデット・ピアフがジャズを歌ったらどんな風になるか---という興味に対する確かな答えがある」などとわけのわからぬ大絶賛をした(脱帽マークだった)。わたしは『Swing journal』誌のようには全然思わないが、まったくちがう意味において絶賛したい。
⑤between the barsがとても気に入っている。シンプルで暗い曲だが何か人生の悲しみを思わせる曲である。今、たまたま⑤が流れている。後ろで控えめに聞こえるオルガンの響きがたまらない。どうしようもない人生の悲しみを考えさせられてしまう。ああまずい、涙が出てきそうだ。
8年前に発表した前作dreamlandもなかなか評判がよく、購入してみたが、私としては断然このcareless loveがお勧めである。先ほどの『Swing journal』誌ではないが、彼女に是非シャンソンの名曲を歌わせてみたい。『これからの人生』とか……。
たまにではあるが、こういう歌手がでてくるからジャズ聞きはやめられない。