●今日の一枚 21●
Pablo casals
A Concert At The White House
クラシックものである。チェロの神様パプロ・カザルスのライブ盤である。1961年、大統領J.F.ケネディの招きに応じて、ホワイトハウスで行った貴重なドキュメント盤だ。
1939年、スペイン内戦は独裁者フランコ軍の勝利に終わる。第二次大戦以降もフランコ独裁政権は続き、失望したカザルスはスペインに民主政府のできるまでステージに立たないと、事実上の引退を宣言してしまう。その後、多くの彼の支持者たちによって何度か音楽祭のステージに引っ張り出されたが、祖国スペインのフランコ独裁政権を承認する国ではコンサートを行わないとの信念を持っていた。したがって、フランコ政権の承認国であるアメリカでコンサートを開くというのはひとつの驚きであったのだ。一般には、ヒューマニズムの指導者ケネディに対する信頼と誠意をあらわそうとしたためだといわれる。
85歳の誕生日をまじかに控えたカザルスであったが、瑞々しく力強い演奏だ。スペイン民謡の⑪鳥の歌は短い演奏ながら、やはり感動を禁じえない。長くその土地をふんでいない祖国スペインへの深い想いが察せられる。ライブ盤ならではの臨場感も伝わってくる。特に、会場に立ち込めるピレピリした緊張感がすごい。カザルスのチェロの音は、どこまでも深い。クラシックはまったくの素人の私だが、カザルスのチェロの響きには思わす゛聴き入ってしまう。
1960年代、音楽家も歴史や政治のなかで生きていたのであり、それとの格闘の中で、音楽をつむぎ出していたのである。