王様の耳はロバの耳

横浜在住の偏屈爺が世の出来事、時折の事件、日々の話、読書や映画等に感想をもらし心の憂さを晴らす場所です

「終戦のローレライ」を読む その2

2007-03-10 07:16:10 | 本を読む
「終戦のローレライ」続き
第2巻第2章2
7月26日夜イ507は五島列島沖の秘密兵器「ローレライ」投棄の現場付近に戻りました
そこには先の米国潜水艦「トリガー」が回収を待ち伏せしています
それに気づいた絹見艦長は「回収延期」を命じますがエブナーが脅迫同様の手段で回収を強行します
イ507に搭載の「特殊潜航艇海龍」にエブナーと清永が乗り折笠が回収要員として特殊潜水具を着て「ローレライ」の探索です 
「トリガー」の魚雷攻撃で被害を受けた「海龍」と折笠ですが混乱の中で「椰子の実」の歌声を聴き「ローレライ」に潜り込みます 何と中には若い娘が乗っていました イ507の魚雷攻撃で損害を受けたトリガーが退避する中、緊急浮上した「ローレライ」と「海龍」はイ507に収容されます

折笠と少女の会話で秘密兵器とは「音響兵装PSMB1」その核になるのが先に投棄された小型潜水艇「ナーバル(一角鯨の事)」に乗っていた「パウラ」という少女の特殊能力であり潜水艦の装置との総体での特殊機能をライン川の魔女に例え「ローレライ」と呼んでいる事が判ります
なんと黒髪で日本風の容貌ドイツ語を話す娘「パウラ」は10日以上も水中にいた事になります 回収(救出)作戦は人命確保の点で限度ぎりぎりでした

第3章
翌日明け方 徹夜での「ナーバル」の搭載と「海龍」の曳航策取り付け(「海龍」の搭載場所を「ナーバル」が占めたので)と修理 同じくイ507の修理も夜明けまでには終わりそうです
艦内では時岡軍医が「パウラ」の疲労と栄養失調による衰弱の手当てをしています
又エブナーは救出時の反乱同様な行為を咎められ監禁されますがその際折笠がパウラはエブナーの妹である事を告げ皆に彼の許しを乞います

さて午前8時過ぎ軍令部よりイ507宛に電報命令「ウエーク島に向かい根拠地隊に特殊兵器を引き渡す事」とあります
これで回収作戦にしては食料と燃料が充分に供給されている事がわかりました 軍令部は最初からウエーク島回送を想定していたという訳です しかし絹見は「ローレライ」を解明しないと軍令部の本意がわからないとしてエブナーと面談します

この後約100頁に亘って父方の祖母を日本人に持つエブナーとパウラの数奇な運命が語られます ヒットラー率いるナチスドイツの台頭 アーリア人種至上主義、異民族の根絶、優良人種の国家的生産、混血の人種改良、ついには劣等(と決め付けた)民族の組織的根絶 もう胸の悪くなる様な記述が続きます その過程でのパウラの特殊能力の発現、エブナーの生き残る為のナチ親衛隊への傾倒等 そして元はフランス製潜水艦であったイ507の数奇な戦歴 
そして「特殊兵器」或る時は「ローレライ」とはパウラの水を媒体とした対象物を探知するという特殊能力とそれを図示化するPSMB1を搭載するイ507をも統合する三次元的立体レーダーシステム(爺の言葉)である事が判明します そしてその欠点は核となるパウラがシステムを通じ犠牲者の心の痛みを自分の痛みとして感じて失神してしまう為一会戦に一度しか使用できぬ点なのです 幽霊の正体見たり枯れ尾花 このシステムで圧倒的な物量を誇る米軍を畏怖させる事が出来るのでしょうか?

さてそれから何日たったのでしょう ウエーク島に一路向うイ507は突然雷撃を受けます 新たな米潜水艦に頭を抑えられ後ろの「トリガー」とで挟み撃ちを喰らった様です

以下数行は余談です
講談社本によればイ507は硫黄島沖40マイルを一路「西進繰り返す西進」している所を偵察機に捉えられたと書いています 爺が思うには五島列島沖でウエーク島行きを命じられた船舶は内海航路を取ろうと大隈半島を迂回しようと一路「東進」しないとウエーク島に到着しないのではと思うのです 皆さんは如何思われます?
さてイ507の発令室ではエブナーより改めて一度に二隻を攻撃できない事を確認します そこへパウラが「感情破壊」のドイツ製薬剤を使う事を申し出ます でも薬を使えば「脳の感情野は破壊されパウラは部品に過ぎなくなります」 パウラはイ507の乗組員が人間らしく扱ってくれた気持ちに自分の命を犠牲にする でもこれは何なのであろう? 折笠は「こんな事は軍人の本分でない」と反対します 秘密兵器をウエーク島へ回送する事は「つまるところ天皇陛下のご命令」だと強弁する甲板士官に対しても「天皇陛下がこの場におられたら反対する」と言い返します
なんと田口掌砲長の「帝国海軍の員数外の潜水艦では人間らしく死にたいとの折笠の気持ちを汲んでくれ」とのとりなしがされます
1隻だけならローレライが有効な事を確認した絹見は「ローレライ発動」を命じます

三次元レーダーに浮かぶ潜水艦に曳航してきた「海龍」を叩きつけ撃沈 浮上しながら艦載砲で「トリガー」を粉砕します 

折笠の介添えで「ナーバル」内のパウラは従来より苦しみが軽く回復も順調のようです イ507の浮上に合わせ折笠は「ナーバル」のハッチを開ける 目の前には7月30日の日の出の太陽が昇る所であった

同じ時刻 広島の仮泊した料亭 軍令部の大湊大佐は呉での朝倉大佐の行方不明を確認すると共にイ507は特殊兵器回収がなされ太平洋を横断するほどの燃料を補給され出港した事を確認した 命令書を受けた軍人の中には恣意的に朝倉に協力した節も疑える 大湊が知った事には26日連合軍はポツダム宣言を日本につき付けた 「無条件降伏」 降伏しなければ迅速かつ充分な壊滅あるのみと締めくくられた

その頃陸軍特殊情報部はV600番台のコールサインを持つB29が12機程度テニアン島近海を飛行するばかりで爆撃に参加しないで飛行するのに気づいていた そしてB29は機上より長文の電報を度々ワシントンに打っている事も傍受していたが意図が判らなかった
このV600番台のコールサインを持つB29の1機エノラ・ゲイが広島に飛ぶまで後1週間の余裕が残された

第2巻終わり 第3巻へ続く
写真:本物の海龍
コメント
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