安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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10月29日、宇都宮ライトレールに乗る

2023-11-05 19:19:51 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
10月28~29日の2日間、都内のイベントで「次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する」を発売するため上京したのに伴い、8月に開業したばかりの宇都宮ライトレールに乗ってきました。

<写真>芳賀・高根沢工業団地電停にて


28日朝に千歳を発ち、昼前に羽田着。28日夕方5時半から都内で人との約束があるため、正午過ぎの新幹線で宇都宮に行き、往復乗ったらすぐ新幹線で都内に戻るという超駆け足での訪問でした。そもそも宇都宮市自体、新幹線で何度も通過していますが、前回降り立ったのがいつか思い出せないほど久しぶりです。もしかすると、福島勤務時代に車で訪れて以来、10数年ぶりかもしれません。街の印象含め、率直に感じたことを書きます。

<写真>ライトレール乗り場 JR宇都宮駅と直結している


<写真>宇都宮電停から線路を望む


7月に富山市のライトレールに乗った際にも感じましたが、まちづくりと一体化した公共交通という、今後の1つの方向性を示しているのではないかというのが率直な印象です。

「平石」電停から「清陵高校前」電停まで専用軌道区間で、「清陵高校前」から「芳賀・高根沢工業団地」電停(終点)までの区間も道路上を走りますが、道路と線路は区切られています。

<写真>芳賀・高根沢工業団地電停からは横断歩道で直接工場に通じている


富山のライトレールと大きく違うのは、信号のコントロールがライトレール優先であることです。富山は路面電車の前を横切って右折する自動車を含め、通常信号と変わりませんが、宇都宮ライトレールは、道路側の信号を「赤」+「直進・左折矢印」表示にして、ライトレールが走る際に自動車が電車の前を横切って右折できないようにしていること。これによって定時運転を確保していました。

乗っている間、今までの路面電車と「何かが違う」と思っていましたが、専用軌道区間でも、道路との平面交差地点に踏切を置いていません。ライトレールが通るとき、平面交差する車道側の交通信号を赤にする運用になっていました。夜間など、踏切警報音による周辺住民からの苦情をなくせる上、電車の定時運転も確保できる新しい方法です(今の法制度では踏切の新設が認められないという事情もありますが)。

富山も宇都宮も、(私が乗りに行ったのがいずれも休日という点もありますが)乗客にとにかく若者層(運転免許を取れない18歳未満)が多かったことも印象的でした。

2017年に内閣府が行った「公共交通に関する世論調査」で「あなたは、鉄道やバスがもっと利用しやすければ、出かける回数が今より増えると思いますか」という質問に対し、「増えると思う」「少しは増えると思う」と答えた人の比率が、18~29歳までの若年層で最も高かった調査結果と合致しています(リンク先調査の8ページ、問3参照)。

今回、宇都宮ライトレールに特徴的なこととして、小さな子どもを連れた母親が、子どもの分の運賃もまとめて払うのではなく、子ども自身に現金を持たせ、払い方を覚えさせていたことです。親がまとめて払うやり方だと、子どもは親と一緒のときしか公共交通に乗れませんが、自分で払えるようにきちんと教えれば、子どもが自分1人だけでも乗車できるようになります。「次世代の公共交通の担い手」を、みずからの手で積極的に育てていこうという市民意識は、富山よりも宇都宮のほうが強いと感じました。

それはとてもいいことなのですが、気になる点もありました。家族連れが下車する際、大人はICカードで支払っていますが、子どもの分の半額運賃は、現金でしか支払えないことです。これだけ子どもの利用が多いのであれば、子ども用のICカードがあってもよいのでは? と感じました。

運賃箱の上に表示されている運賃が、大人表示のまま子どもに切り替えられないことも気になりました。たとえば150円区間の場合、子どもが現金払いをする際も表示は150円のまま、運転士が目視で80円(端数の5円は切り上げ)の投入を確認していました。

<写真>運賃箱


これだと、大人2人に子ども1人がまとめて下車するような場合、いくら払えばいいのかわからなくなりそうです。子どもが1人でも乗れるように育てようという意識がせっかく市民の側に生まれているのですから、せめて運賃表示が子ども用に切り替えられるよう、早急にシステムを改修すべきだと感じました。

路面を走る大都市中心部と、専用軌道を走る郊外区間を連結するという点では、富山も宇都宮も共通しており、今後のトレンドになりそうです。既存の鉄道でこの形態を取るものとしては、広島電鉄(市内線(路面)と宮島線(専用軌道)の直通)や筑豊電鉄などがありますが、今回、改めてこれらの先進性を感じました。

特に筑豊電鉄は、乗り入れしていた西鉄北九州市内線の路面電車が1992年に廃止されています。こんな時代が来ると思わず、何とか廃止を免れるのが精一杯の状況の中、生きながらえてきたのでしょう。それが、ぐるっと時代が1周し、「都心~郊外直通運転」が脚光を浴びる時代が再び来たのですから、世の中はわからないものです。

宇都宮名物の餃子を食べる暇すらなく、足早に宇都宮を後にしましたが、驚いたのは新幹線「やまびこ・つばさ」のうち「つばさ」編成から自由席がなくなっていたこと。帰宅後に調べたところ、2022年春改正から全車指定席化されていました。「はやぶさ」以外にしばらく乗っていなかったため、今回初めて気づきました。

しかも、行き帰りともに新幹線「やまびこ」指定席が売り切れで、自由席も満席のため、東京~宇都宮の全区間で立ちっぱなしだったことです。新幹線で、往復の全区間座れなかったのは、年末年始以外では初めてのことで驚きました。しかし、福島原発訴訟関係の用事でしばしば東京~福島・仙台間に乗っている妻によると「東北新幹線は最近はいつ乗ってもこんな状況」とのことでさらに驚きました。東北新幹線は需要に供給が追いついておらず、このままの状況が今後も続くのであれば、増結や増発などの抜本的対策が必要だと思います。

〔完乗達成〕宇都宮ライトレール

2023年の完乗達成路線は、7社13線(参考記録を含めると8社14線)。7月に上方修正した今年の目標、15線にあと2線と迫った。ただ、今後は遠征機会もあまりなさそうで、達成は微妙になってきた。

<動画>【祝・開業!】2023.10.28 宇都宮ライトレール 芳賀・高根沢工業団地発車

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7月29日~30日 猛暑の中、京急線完乗達成

2023-07-30 23:29:22 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
7月29日は午後から横須賀市内で所用だが、その前に全線完乗活動をさらに進める。午前中、未乗区間となっている京急大師線に全線乗り小島新田へ。京急川崎まで折り返した後は本線に乗車。金沢八景から逗子線を逗子・葉山まで乗り通す。

翌29日、横須賀市で所要を終えた後は、横須賀中央から京急本線で浦賀まで乗り通す。京急本線は堀之内~浦賀が未乗車だったが、これで完全乗車となった。

<完乗達成>京急大師線、逗子線、本線

これで、会社としての京急も全線完乗となった。

なおこの結果、7月の新規完乗達成は、富山地方鉄道不二越・上滝線、立山線、富山ライトレール(富山駅~岩瀬浜、以上7月16日)、富山地鉄本線、黒部峡谷鉄道(7月17日)、相鉄新横浜線、東急新横浜線(7月28日)と合わせて、これで5社10線となった。上半期の1社2線と合わせると6社12線である(参考記録を含めると7社13線)。ここで、今年の新年目標だった「5路線乗車」どころか、10線も軽く越えてしまった。

今年もまだ5ヶ月も残っていること、最近の体調も悪くないことを考えると、まだまだ行けそうだ。そういうわけで、2023年の新年目標(5路線乗車)を大幅に上方修正し、15路線乗車の目標を新たに設定する。残り3線なので、頑張れば達成できない数字ではない。

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7月28日~相鉄・東急新横浜線の完全乗車をあっけなく達成

2023-07-28 23:57:36 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
予告通り、7月28日から上京し、7月30日まで都内に滞在している。

7月28日午前、羽田から京急で横浜に向かう。横浜から相鉄に乗り換え西谷へ。ここから今年3月に開業した相鉄・東急新横浜線日吉までの区間を乗り通し、そのまま武蔵小杉へ。今日もうだるような猛暑だが、熱中症対策には有効なうどんを昼食に摂った後、武蔵小杉から横須賀線で都内に出る。

<完乗達成>相鉄新横浜線、東急新横浜線

3度目の挑戦でようやく完乗を達成。相鉄・東急新横浜線が私にとって「第2の只見線」になる事態は、何とか避けられた。

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真夏の北陸の旅(第3~4日目)~長年の悲願だった黒部峡谷鉄道に!

2023-07-18 23:25:59 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
あいの風とやま鉄道・黒部駅前「ホテルアクア黒部」で朝6時に目覚める。今朝も電鉄黒部を7:14発の富山地鉄本線・宇奈月温泉行きに乗らなければならない。普段の仕事の時でもこんなに早く起きないのに、因果なものだ。

電鉄黒部駅は、あいの風とやま鉄道・黒部駅から少し離れており、徒歩で10分程度かかる。遅くとも7時にはホテルをチェックアウトしなければならない。・・・が、朝食開始は平日は6時だが、土日祝は7時で、とても間に合わない。せっかく朝食付きプランを予約したのに、ついてないな……と昨夜のチェックイン時にフロントでぼやいたら、「6:45に食堂に来てください。せっかく朝食付きの代金を支払ってくれているのですから、何とかします」と取りはからってくれた。食堂従業員は準備のため6:30頃には出社しており、1~2人分なら対応できるという。ホテル側の取り計らいに謝意を伝え、約束通り6:45分に朝食を摂る。胃の手術を受けて以来、早食いは厳禁なのだが、こんな時は仕方ない。最近は早食いもけっこうできるようになってきた。

7時ちょうどに、改めてフロントに謝意を伝え、チェックアウト。通常、当ブログでは宿泊した旅館・ホテルの名前は紹介しないルールにしているが、このような特別な取り計らいやサービスを受けた場合には、感謝の意を込めて紹介することがある。

朝から汗だくの猛暑の中を歩いて電鉄黒部に到着。7:14発、宇奈月温泉行きに乗る。宇奈月温泉に7:46に到着。いよいよ長年の悲願だった黒部峡谷鉄道に乗る。宇奈月温泉駅から、黒部峡谷鉄道・宇奈月駅までは大人の足なら徒歩5分だ。予約している宇奈月8:17発のトロッコ列車に乗る。

もともと交通の便の悪い地域の上、冬季運休という壁もあり、黒部峡谷鉄道の乗車は望んでもなかなかかなわず、長年の悲願だった。東京方面からは、北陸新幹線・黒部宇奈月温泉駅ができて多少は訪れやすくなったかもしれないが、それも気持ち程度だろう。



定刻通り、トロッコ列車は宇奈月駅をゆっくりと滑り出す。曲がりくねった762mmのナローゲージを、2両編成の電気機関車の牽引するトロッコ車両が40km/h程度の速度で走るが、観光列車にはこのくらいの速度がちょうどいい。地元出身のタレント室井滋さんの観光案内が、リズムがあって乗客を和ませる。9:33、欅平に到着。

<動画>2023.7.17 黒部峡谷鉄道 宇奈月~欅平(全区間ノーカット)


欅平に、ガイドブックに載っていない思わぬ見所があるかもしれないと考え、帰りは11:04欅平発まで1時間半を確保している。駅屋上の展望台などを見るが、とにかくこのうだるような猛暑には参った。まだ昼食には早いと思ったが、朝6時に起きて動き回っているため空腹を感じる。欅平駅2階のレストランで早めの昼にする。

11:04、欅平発の黒部峡谷鉄道の列車は、雨天など悪天候の場合に備えて「リラックス車両」を事前予約していた。窓が閉まる箱形の一般車両で、トロッコと乗り比べてみようと思い、運賃の他、わざわざ500円の料金まで払ったが、いざ乗り込んでみると冷房がない。窓は全開になっているが、停車中など風が吹き抜けないときは車内が暑い。

天気がどうなるかわからないための「賭け」の要素が大きかったが、抜けるような青空の下、この猛暑ではどう見てもトロッコが正解だった。改札通過後、車内改札が行われていないこと、トロッコ車両も座席に余裕を持たせる運用になっていることは往路でわかっていたので、こっそりトロッコ車両に乗り込む手もあったかもしれない。

欅平を定刻通り発車した列車は、宇奈月に12:23着。富山地鉄・宇奈月温泉発の列車は12:45発で、少し時間がある。外はうだるような猛暑なので、駅前に関西電力が設置している発電所記念館(入場無料)を見る。富山地鉄本線に乗り、今度は新黒部で下車(13:09着)。黒部宇奈月13:34発北陸新幹線「はくたか564号」で大宮まで行き、南浦和から武蔵野線に乗る。

武蔵野線に乗るのは本当に久しぶりだ。記憶に間違いがなければ、横浜勤務時代の1998年か99年を最後に乗っていない。実に四半世紀ぶりだ。そのまま立川へ向かい、知人と落ち合う。この日は立川市内のホテルに泊まる。夜になっても30度を超える異様な猛暑の中、飲食店を歩いて探すのも面倒になり、コンビニで食材を買い込んでホテルに戻った。

翌18日朝。立川のホテルを出て八王子に向かう。八王子から横浜線で新横浜に出る。いよいよここから3月に開業したばかりの相鉄・東急新横浜線の乗車をめざしたが、ここで思わぬ事態が起きた。東急線内での「車両故障」のため、ダイヤが大幅に乱れている。次の日吉方面の発車は30分後の午前11時過ぎで、あまりに遅すぎる。ここにこだわっていたら、この日、年休を取ってまで遠征を続けた最大目的である「ストップ!リニア訴訟」東京地裁判決(13:00から傍聴抽選)に間に合わなくなる。

なんてことだ……と無念の思いがするが、やむを得ない。相鉄・東急新横浜線乗車は断念し、そのまま東海道線で東京に向かう。

<完乗達成>富山地鉄本線、黒部峡谷鉄道

結局、今回の北陸の旅の3~4日目で完乗達成したのはこの2社2路線のみ。2日目の2社3路線と合わせ、2社5路線(この他、参考記録1社1路線)にとどまった。北陸鉄道を落としたのも痛かったが、簡単に乗れると思っていた相鉄・東急新横浜線まで落とすとは思っていなかった。

北陸鉄道は、いずれ北陸新幹線敦賀開業(2024年春に予定)後のいずれかの段階で、乗りに行くチャンスはあると思う。相鉄・東急新横浜線は、6月3日にも挑戦したが、よもやの台風襲来で失敗している。2度続けての失敗とは……。

鉄道乗車に限らず、私のルールでは、3度続けて失敗したことからは、しばらく「冷却期間」を置くと決めている。今後、7月末と10月下旬に上京予定があるが、もしもう1回失敗した場合は、3度目となるので、相鉄・東急新横浜線の乗車はしばらく(数年スパンで)延期することになると思う。悪い流れも数年置けば、変わる可能性があるからだ。

完乗に3回挑戦したが、台風、地震発生、大雨により3度とも失敗した只見線は「冷却期間」を3年置くことに決めた。実際には、その間に大雨による不通期間があり、結局、4度目の挑戦までに4年もの間を置くことになった。4度目の挑戦では、「俺の行くところ、晴れなかったことがない」というファン仲間でも屈指の晴れ男、J・S氏に全区間、同行を求めてようやく達成したことがある。

全線完乗には時に困難が伴う。相鉄・東急新横浜線は、もしかすると私にとって「第2の只見線」になるかもしれない。

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真夏の北陸の旅(第2日目)~富山地鉄に乗る

2023-07-16 20:59:20 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
2日目となる7月16日早朝、ホテルを午前6時に出て、地下鉄で大阪駅へ。「サンダーバード1号」に金沢までの全区間乗る。経営悪化で上下分離の動きが出ている北陸鉄道には「乗れたら乗りたい」くらいの気持ちだったが、朝から35度近い猛暑に加え、北鉄金沢駅の場所がなかなかわからないため、結局乗れずじまいになってしまった。北鉄に乗れなかったために生まれた中途半端な空き時間は、金沢屈指の観光名所である近江町市場や兼六園に行くには短すぎるし、ちょっとした用事を済ますには長すぎる。結局、金沢駅の散策で終わった。

当初計画では金沢10:58発、北陸新幹線「はくたか560号」に乗る予定だった。北鉄浅野川線を往復してから乗り継ぐには最速でもこの列車になるはずだったが、北鉄に乗り損ねたため、予定を早め金沢10:34発「つるぎ706号」(富山行き)に全区間乗り通す。はっきり言えば新幹線に乗るような距離ではないが、新幹線と在来線の乗継割引が多くの区間で廃止となる中、同じJR西日本エリア内ということもあってか北陸本線特急と北陸新幹線とはいまだに乗継割引が適用される。トータルで見るとあまり変わらない。

10:57、富山駅着。昼食を摂るにはまだ早すぎるので、手荷物預かり所にキャリーバッグを預け、電鉄富山駅に向かう。北陸新幹線を1本早めたのだから、富山地鉄も1本速い列車に乗れることを期待したが、……結局、乗り継ぎできるのは当初計画と同じ列車だった。

富山地鉄には初めて乗る。はるか昔は国鉄からの乗り入れや連絡運輸(乗車券類の通し販売)も行われていたが、だいぶ前に姿を消した。駅窓口で聞くと、1日フリーパスがあるという。買おうとしたが、富山地鉄のような営業キロの長い私鉄では、ひょっとすると2日間フリーパスがあるかもしれないと思い、聞けばそれもあるという。おおざっぱな計算でも、今後、当初の計画通りに乗り進められれば確実に元が取れるので、購入する。2日間で4,600円だが、地方私鉄とは思えない富山地鉄の路線の長さを思えば安いものだ。





11:45に電鉄富山駅を出て、まずは不二越・上滝線を岩峅寺(いわくらじ)まで乗り通す。12:20、岩峅寺着。すぐに12:26発の立山線・立山行きに乗り換える。12:54、立山着。

立山駅からは、立山ケーブルで美女平をめざす。ケーブルカーは鉄道事業法適用であるものの、索道に分類され、私の全線乗車ルールでは対象外。乗車しても参考記録扱いだが、多くの登山客やスキー客が訪れる「立山黒部アルペンルート」の一部をなすこのケーブルカーに、ここまで来て乗らない手はない。それに、もし将来「ケーブルカーも乗車対象」とルールを変更するようなことがあったときに、「やっぱりあのとき乗っておけばよかった」とは思いたくない。乗れるものには乗っておけ、と自分を奮い立たせ、駅に並ぶ。

正直なところ、ごった返す登山客でケーブルカーは臨時便を運転しなければならないほどの大混雑。長蛇の列ができていたが、1本待つことで乗れた。何しろ新型コロナの5類移行後としては初の3連休なのだ。

観光地なのだから昼食を摂れる場所は美女平にあるだろうと思ったが、考えが少々甘かった。数軒ある飲食店はどこも満員で、すぐに入れそうな様子には見えない。やむを得ず、帰りのケーブルカーに乗り、再び立山駅に下りる。駅構内に登山客向けの軽食店があったので、うどんを食す。塩分・水分ともに豊富なうどんは、熱中症対策としてはとても適したメニューといえる。

<動画>2023.7.16 立山ケーブル 立山~美女平


立山からは、岩峅寺まで立山線を折り返した後、寺田まで立山線を走り、本線に直通する14:00発電鉄富山行きに乗る。予定通り、15:10電鉄富山駅着。

ここで、地域公共交通活性化再生「優良事例」とされるライトレールをめざす。JR西日本・富山港線時代に一度乗っているが、一部区間は道路上に付け替えられるなどして、旧富山港線とまったく同じではない。少なくとも、ルートが変わった区間には乗っておかなければならない。

富山駅は、もともと駅南側を走っている市内電車と、北側を岩瀬浜まで走っていた旧富山港線転換ライトレールを直通運転できるようにするため、富山駅をぶち抜き、線路を駅構内でつなげるという大胆なもの。市内電車からやってきたLRT車両に乗る。途中、単線区間があるためLRTはなかなか富山駅を発車できなかったが、対向列車が富山駅に入線するとようやく道路信号が青になった。

道路信号に従いしばらく路面区間を走る。「奥田中学校前」電停付近で、LRTは大きく左折して道路を外れると、旧富山港線のレールに乗る。ここで右側を見ると、道路の向かいに遊歩道のような細い道があり、これが旧富山港線の跡地だとすぐにわかった。長年、鉄道ファンをやっていると、廃線跡は何となくわかるようになる。

旧富山港線区間に入ると、LRT車両は急にスピードアップする。60~80km/hくらいは出していることが速度計からわかる。停留所の数は旧富山港線時代より大幅に増えた。国鉄系気動車から床面の低いLRTに変わったため、JR時代のプラットホームは廃棄され、新たに電停が作られている。

岩瀬浜に到着すると、駅前のロータリー付近で待機していた「フィーダーバス」がロータリー内に進入してくる。列車とバスの乗り換え待ち時間をなくすためで、全駅ではないものの、主要駅では行われている。正直、「ここまでやるのか!」と驚かされるが、冷静に考えれば、列車の到着に合わせてバスを運行するというのは、乗客目線で考えれば当たり前のことだ。この「当たり前」が日本ではなかなか実現せず、近年ではできなくて当たり前というある種のあきらめムードが支配的だった。富山港線時代は乗れば必ず座れるほど空いていたのが、いまや始発駅でも座れないのが当たり前なほど車内は混んでおり、しかも休日のせいか、明らかに中高生とわかる若年層が多いことも特筆すべきだろう。



なるほど、国が地域公共交通活性化再生「優良事例」に挙げたくなるのもわかる。「当たり前」のことを、当たり前にやることが実は最も難しいのだ。その当たり前のことを、当たり前に実現した富山市の努力を多としたい。

同時に、指摘しておかなければならないのは、日本中、どこでも富山市のようにできるわけではないということである。もともと、富山地鉄という地元に広く定着した有力な私鉄が長大な路線網を持っており、その会社にJRのローカル線を引き受けてもらうことができた。市内電車と旧富山港線転換ライトレールがうまく接続できたのも、両者が富山地鉄という1事業者の中で完結しているという背景を抜きにすることはできない。複数の公共交通事業者の枠を超えた連携という、国がめざす本来の活性化再生の域にはまだ達していない。それに、富山のような好条件が重なっている場所はほとんどない。地元に根ざした有力な私鉄も市内電車も持たない他都市が同じようにしたくても、できないのが実情だろう。

国が、地域公共交通活性化再生の旗を振ることに反対はしないが、他のすべての地域にこれと同じことを求めるのは、「みんなに大谷翔平になれ」と求めるようなものだ。所与の条件が揃っているのかどうかを見極めてからでないと、単なる公共交通のコンパクト化、縮小だけに終わりかねない。そんな危惧も同時に感じた。

富山駅に戻ってきた私は、午前中、預けたキャリーバッグを手荷物預かり所で回収。富山地鉄本線を、電鉄黒部まで乗る。あいの風とやま鉄道・黒部駅にほど近い「ホテルアクア黒部」に投宿。明日も早朝の出発になるため、早めに就寝、猛暑下の遠征による疲れの回復に努める。

<完乗達成>〔新規乗車〕富山地方鉄道不二越・上滝線、立山線、〔奪還〕富山ライトレール(富山駅~岩瀬浜)、〔参考記録〕立山ケーブル

※立山ケーブルは索道のため参考記録。また、富山ライトレールは旧富山港線時代に一度全線完乗しているが、富山駅~奥田中学校前電停付近までは旧富山港線時代の場所から、道路上にルートが変わっている。このため、富山駅~奥田中学校前までの区間を新規乗車区間とみなし、富山ライトレールの富山駅~岩瀬浜を「奪還」(完全乗車達成後、線路付け替えにより再び未乗車区間が発生した場合において、当該未乗車区間の全部に再度乗車し、全線乗車状態を取り戻すこと)として整理した。

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2023年上半期 鉄道全線完乗達成状況まとめ

2023-06-30 21:04:55 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
早いもので、2023年も上半期が終わる。ここで、2023年上半期鉄道全線完乗達成状況をまとめる。

【2月】関東鉄道竜ヶ崎線・常総線

新年目標として、今年は5線区の乗車達成を掲げた。2月、関東鉄道竜ヶ崎線・常総線に乗り、幸先のよいスタートと思ったが、結局この両線のみで上半期は終わった。

実は、「レイバーネット日本」でリニア問題を扱う企画を予定しており、その事前取材のため、6月3~4日に長野県大鹿村に入ることになっていた。東京駅に集合、車に乗り合わせて現地に向かうため、東京滞在ついでに開業間もない相鉄・東急新横浜線に乗ろうと考えていたが、あろう事か、6月2日深夜、日本に最接近した台風2号の影響で現地取材が中止となった。

すでに東京入りしていた私は、6月3日、天候回復を待って相鉄・東急新横浜線だけでも何とか乗ろうと考えていた。しかし、ホテル最寄りの京急蒲田駅から、横浜方面の列車はダイヤの乱れでいつ来るか駅員にもわからないという。東海道新幹線も3日午前中まで運休というニュースを聞いたところで完全に気持ちが切れてしまった。急きょ、動いていたリムジンバスで空港に向かい、空いていた航空便で北海道に戻ることにした。

結局、目と鼻の先まで来ていながら、このとき相鉄・東急新横浜線の乗車はお預けとなってしまった。悔しいが、全線完乗活動は登山と同じで、危険だと思ったときは撤退する勇気を持つことも必要である。下半期に再度、乗車を目指すが、新年目標の5線区乗車を達成できるかどうかは微妙な状況になってきたと思っている。

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【転載記事】JR指定席「重複発売」顛末記

2023-05-25 23:52:36 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
「指定席に座っていたら後から乗ってきた男が『そこ僕の席なんですけど』。私は間違ってないのに、舌打ちまでされて...」(北海道・30代女性)(Jタウンネット)

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シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Bさん(北海道・30代女性)

正しい席に座っていたのに、後から来た乗客に「そこは自分の席だ」と言われた――Bさんは大学時代、そんな体験をした。

しかし相手が間違っているわけでもないようで......。

<Bさんの体験談>

大学生だった時のことです。その日私は、実家のある函館から大学がある弘前に向かうためJRの特急列車に乗りました。

指定席に座っていると、途中から乗ってきた男性客がかなり機嫌悪そうに「そこ僕の席なんですけど」と言ってきて......。

乗車券を見せてもらうと...

乗車券を見せてもらったところ、私も男性も全く同じ席番号でした。

そう説明するも、彼は私の乗車券の番号を見ようともしません。私の勘違いと思い込んで舌打ちする始末です。

私が車掌さんに聞こうと立ち上がると、タイミングよく車掌さんが登場。「この度は大変失礼致しました」と言って、私に「こちらへどうぞ」と促しました。

私が席から離れると、男性客はすぐさま音を立てて着席。疲れていたのかもしれませんが、誤解とはいえ、余りにも尊大な態度に悲しい気持ちになりました。

しかし、それもつかの間。車掌さんはなんと私をグリーン車へ連れてきて下さったのです。しかも、案内されたのは他のお客さんから離れた静かな席でした。

人生で初めてのグリーン車ということもあり萎縮して「差額を支払います」と言ったのですが、

「全く必要ありません。この度は私どものミスで大変失礼いたしました。良い旅を」

と車掌さん。こちらが申し訳なるような過剰な謝罪をすることもなく、終始穏やかに、かつはきはきと対応して下さいました。

驚きすぎて車掌さんの名前を控えるのをうっかり忘れてしまったことを本当に後悔しています。

新幹線が開通して以降、函館~青森間の特急列車にはもう乗れなくなってしまったけれど、アラフォーになる今も、しがない学生の1人を丁寧に案内して下さったあの車掌さんへの感謝を忘れません。

あの時の車掌さんへ。大学で色々あり、精神的に荒んでいた時期に、あなたの立派な姿が心に沁みました。本当にありがとうございました。あなたがあれ以降もたくさんの一期一会の乗客の方々を笑顔にしていることを、北の大地から祈っています。
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Jタウンネットは、インターネット版タウン情報誌のようなもので、全国各地の「ちょっといい話」を紹介するコーナーがある。せっかくの鉄道ネタなので、少しコメントしておこうと思う。

「マルス(指定席発行機)が間違えるわけがない」などと、何も知らずにコメントしている人もいる。「バカほど口を出したくなる」はネットに限らず世の常だと思うが、恥ずかしいことこの上ない。確かにマルスは間違えないのだが……。

重複発売(指定席の二重発売)が起きる原因として最も多いのは、乗客の都合で出発前に払い戻された席を、駅係員がマルスに戻す際に誤って別の席を戻してしまう。その席が別の人に再び発売される。つまり人間のミス(ヒューマンエラー)が原因である。

一般論としては先着順なので、重複発売が起きてしまった際にその席を使う権利は先に座った人にある。だが、中にはこのような理不尽な態度を取る客もいる。車掌は、このような事態に備えて、窓口発売しない席(調整用席)を1~2席程度持っているとされる(お盆や年末年始などの最繁忙期には、その余裕さえないこともあるが……)。実際には、この例のように上の等級の席が割り当てられることもある。

この記事を読んで、なかなか粋な措置を執る車掌だと感心した人もいるかもしれない。だが、私の手元にある1979年版の古い「鉄道ジャーナル」の記事では、名古屋~博多間で当時、運転されていた寝台特急「金星」でやはりB寝台券(三段式の下段以外)の重複発売が起きてしまい、片方の乗客をB寝台(下段)に案内する様子が描かれている。このような調整は旧国鉄時代から行われており、いわば伝統芸でもある。

「金星」のケースも、先に寝台を使用中だった女性客に、後から乗車してきた男性客が席を替わるよう要求。車掌が女性客を空いていた下段に移動させたが、酒に酔った状態で乗車してきた男性客が、下段は満席だと説明する車掌に「本当に下段は空いてないのか、ウソじゃないだろうな」などと絡むシーンも描かれている。ただし、記事では下段以外の寝台から下段に移動させた女性客に、本人の同意を得て、寝台券の差額を払ってもらったと記されている。

(注:現在では、寝台特急が「サンライズ出雲・瀬戸」しかなく、三段式B寝台車も存在しないため、時刻表の記載を見てもわからなくなっているが、私の手元にある「JTB時刻表」2011年6月号の記載を見ると、寝台料金は、三段式の上・中段が5,250円、三段式の下段と二段式の上・下段が6,300円となっている。当時の三段式B寝台は、下段のみ二段式B寝台と同じ大きさで、上・中段は下段より寝台の幅が狭かったため、上・中段にのみ安い料金が設定されていた。

より厳密に言えば、乗車後にこのような変更をする場合は、旧国鉄が制定し、JR各社がほぼそのまま引き継いだ「旅客営業規則」のうち、第249条に規定する「区間変更」に該当する。249条第2項(2)で、料金券については「原乗車券類に対するすでに収受した料金と、実際の乗車区間の営業キロ又は同区間に対する料金とを比較し、不足額は収受し、過剰額は払いもどしをしない」と規定しており、差額を徴収した「金星」車掌の取り扱いが正しいが、これは乗客側から「席を替わりたい」との申出があった場合の規定であり、重複発売に関しては国鉄~JR側の責任で、本人のせいではないことから、しばしば差額を徴収しない取り扱いが行われてきた。)

この「金星」のケースでも、先に乗っていた女性客のほうに優先使用権があったと考えられるが、いずれのケースも先に乗車していた女性客のほうが移動の憂き目に遭っている。だが、不快な思いをさせた代償として、上級の座席・寝台を用意することで決着させている。どちらの乗客を移動させるかは規則に規定されていないため、車掌の裁量に委ねられるが、旧国鉄時代もJR化以降も鉄道はサービス業なので、鉄道会社から見てリピーターになってほしいと思う客、お行儀のいい客、分別のある客のほうに上級の座席・寝台が用意されていることがわかる。読者のみなさんも、仮に自分が車掌の立場だったらいかがだろうか。たぶん、この車掌と同じように行動するだろう。

国鉄~JRの指定券は、途中駅から乗車する乗客に対しては、その乗客が乗車する駅の発車時刻までは発売してよいことになっているので、始発駅を発車した後も、指定券は途中駅で売れ続けることになる。当然、どの席が売れているかは始発駅出発時点から変化しているが、「金星」の時代は通信手段が発達しておらず、車掌には、始発駅発車時点でどの席が売れているかを示すデータが出発前に紙で渡されるだけだったから、始発駅出発後の指定券発売状況の変化を車掌がリアルタイムで知る手段はなかった。

これも旧国鉄が制定し、JR各社がほぼそのまま引き継いだ「旅客営業取扱基準規程」(旅客営業規則の運用通達に当たる)第168条では、「(注)指定席特急券を所持する旅客が、その指定駅で使用の請求をしなかつた場合は、列車が当該指定駅を発車後、相当の時間をおいて、旅客が乗車しなかつた事実を確認後他の旅客に発売するように注意すること。」とする乗務員向けの注意書きがある。ただ、実際にこの(注)のとおりに運用できるのは、始発駅出発前に車掌が渡された紙のデータ上で「売れていることになっている席に、実際には誰も乗ってこない」というケースに限られていた。車掌の手元のデータで空席となっていても、実際には始発駅出発後に途中駅で売れている可能性があるため、乗務員がこのような「発車後の転売」措置を執ることはかなり困難だったといえる。

通信技術の進歩により、車掌が携帯している端末にマルスの情報が逐次反映されるようになったのは比較的最近のことだ。冒頭で紹介した「Jタウンネット」の記事に登場する、グリーン車を割り当てられたBさんの大学生時代といえば、少なくとも20年くらい前のことで、「金星」の時代と大して変わらなかったはずである。

当時、大学生だったBさんを、同じ等級である普通車指定席の空席に案内したとしても、その席が途中駅で売れていた場合、再び移動してもらわなければならない可能性がある。しかし、たとえばこの列車がすでに青森県内に入っている場合、弘前までのわずかな区間で、途中駅からわざわざグリーン車に乗ってくるような客はほとんどいないだろう。従って、現時点で誰も座っていないグリーン席なら、おそらく弘前まで空席のままの可能性が高く、重複発売の調整にはちょうどいい--Bさんをグリーン車に案内するに当たり、車掌はおそらくそんなふうに考えたのではないだろうか。

当ブログでは、かねてから鉄道は公共交通であり、公共財であると訴えてきた。だが鉄道には、それと同時に輸送サービス業としての側面も持つ。乗客に気持ちよく利用してもらい、リピーターになってもらえるよう配慮することは輸送サービス業である以上、当然のことである。最近のJRはコロナ禍で苦しい状況にあるが、こうしたきめ細かな配慮、サービスの積み重ねこそが鉄道の明日を切り開くということも、忘れてはならないと思う。

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関東鉄道に全線乗車 20年来の希望果たす

2023-02-26 21:21:48 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
国交省への要請行動を行った2月24日が連休の谷間だったため、そのまま週末を利用して、長年乗りたかった関東鉄道に行くことにした。もともと未乗車だったが、2004年公開の映画「下妻物語」でモデル舞台になって以来、ずっと行ってみたかった。深田恭子さんが芸能界で地位を確立するきっかけともなった作品の公開以来、20年来の希望だった。

2月25日朝9時過ぎ、都内のホテルをチェックアウトし出発。東京駅から、常磐線快速で龍ケ崎市へ。隣接する関東鉄道佐貫から11:35発、龍ケ崎行で11:42、龍ケ崎へ。折り返しとなる11:50、龍ケ崎発佐貫行きで戻る。

竜ヶ崎線キハ0・310系


キハ0・310系に掲げられた「関東鉄道開業100周年記念」ヘッドマーク


龍ケ崎市から常磐線で取手へ。取手からは、常総線に乗ることにする。構内に入り、1992年に衝突事故があった取手駅構内を見る。



12:29取手発下館行き列車は、2018年に登場した関東鉄道では最新の5020系だ。5010系とよく似ているが、前照灯が従来型(非LED)で下部にあるのが5010系、LEDで上部にあるのが5020系というところで見分けられる。

関東鉄道は、ローカル私鉄では大変珍しく、取手~水海道(17.1km)が非電化ながら複線だ。常総線全体(51.1km)からすると3分の1程度だが、日本の鉄道では複線化するほど列車密度の高い路線はたいてい電化されるので、非電化・複線自体が珍しい。JRであれば、北海道の函館本線(新函館北斗~東室蘭)、室蘭本線(三川~沼ノ端)、九州の筑豊本線(折尾~若松)あたりがあるが、ローカル私鉄ではかなり珍しいと思う。

だが、複線化が必要である理由はすぐにわかった。取手~水海道間では反対列車と次々にすれ違う。ほとんどの列車が1~2両編成だが、列車本数がとにかく多いのだ。乗客も、発車直後の西取手で大勢が降り、大勢が乗ってくるなど、めまぐるしく短区間での利用が繰り返される。これは大都市近郊に見られる利用形態で、取手~水海道に関する限り、幹線と言っていい。

編成を短くする代わり、列車頻度を高めていつでも乗れるようにすることで新たな需要を喚起する(フリークエンシーサービス)。関東鉄道は、これに見事に成功している。



常磐線は、取手~藤代間に交直切替のためのデッドセクションがあり、事実上、取手までが直流区間。心理的にも「ここまでが首都圏の北限で、ここから北は東北」という意識があり、東京への通勤圏の北限となっている。地域住民の生活実態がどうであれ、取手を首都圏の北限と見なせるならば、取手発の常総線と、取手より北の龍ケ崎市駅に隣接する佐貫駅発の竜ヶ崎線を持つ関東鉄道は、関東と東北にまたがる営業エリアを持っていることになる。

途中、つくばエクスプレスとの乗換駅・守谷を経由し、水海道へ。ここでは12:58から13:06まで8分停車する。水海道を出ると単線になり、乗客もその乗降も一気に減り、ローカル線然とした姿になる。幹線とローカル線の2つの顔を持つという点でも、常総線は興味深い路線だと思う。

「下妻物語」の舞台になった下妻駅でも13:34から13:38まで4分停車。この4分を利用し、下妻駅を撮影する。「下妻物語」の痕跡らしきものを探したが、さすがに19年も前の映画にまつわるものは見られなかった。最近は「聖地巡礼」をする人もほとんどいないのかもしれない。



2023.2.25関東鉄道常総線 下妻~大宝


下妻を出ると、残りはあと少しだ。終点・下館には定刻通り13:58着。1時間30分の旅が終わった。

<全線完乗達成>関東鉄道竜ヶ崎線・常総線

ここまでで、私鉄全体の完乗達成率は78%を超えた。2023年は久しぶりに「新規完乗5路線」の目標を掲げている。達成のため幸先のよいスタートを切った。

<参考>1992年6月2日  関東鉄道取手駅列車衝突事故当時のニュース映像


<事故当時のニュース記事>
常総線暴走事故30年 被害者、今も祈る安全 関東鉄道、教育と対策徹底(「茨城新聞」2022.6.2付け)

関東鉄道では過去、このような事故も起きている。忘れないようにしたい。

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2023年 新年目標

2023-01-15 22:03:30 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
さて、大変遅くなりましたが、2023年の新年目標を発表します。コロナ禍と、私自身の精神的不調もあって、2020~2022年の3年間は新年目標の発表を見合わせました。そのため、目標発表は4年ぶりです。

2023年は5線区以上の完乗達成を目標とします。今年は「相鉄・東急新横浜線」、福岡市の地下鉄「七隈線」延伸、そして全国初の全線新設LRT(次世代型路面電車)「芳賀・宇都宮LRT」の開業が予定されています。このうち、相鉄・東急新横浜線だけは、必ず乗りたいと考えています。このほか、首都圏周辺で4線区乗りたいです。

宇都宮のLRTも、できれば乗りに行きたいですが、開業が延期になった上、試運転からいきなり脱線事故が起きるなど前途多難です。開業後にきちんと運行できるかどうかも見守りたいと思います。

しかし、鉄道会社が試運転を無事故で終えることすらできないとは……改めて、日本の鉄道技術力の著しい低下を感じますが、3大都市圏以外では、日本の鉄道はもう四半世紀以上、廃線以外のことは何もしてこなかったのですから、技術力など低下して当然だと思います。鉄道事業者には、鉄道開業150年を機会に心を入れ替えていただきたいと思います。

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2022年 鉄道全線完乗達成状況まとめ

2022-12-28 23:42:15 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
さて、年の瀬となり、年内に鉄道の未乗区間に乗車する予定はないので、ここで今年の鉄道全線完乗達成状況をまとめる。昨年に引き続き目標を掲げなかったが、今年は破竹の勢いで(?)完乗活動が進んだ。

【4月】予讃線、内子線
【5月】とさでん交通、東急池上線
【6月】小田急江ノ島線
【8月】阪神武庫川線、近鉄南大阪線、吉野線、御所線、道明寺線
【10月】仙石東北ライン(東北本線)松島~高城町、仙石線〔奪還〕、石巻線〔奪還〕、上田電鉄別所線、伊豆急行

合計はJR2社、私鉄7社、15路線で、内訳は以下の通り。

【JR】5路線(四国2、東日本3)
【大手私鉄】4社7路線
【中小私鉄】3社3路線

新規開業線(当ブログのルールでは開業日から1年以内)、廃止路線に該当するものはなく、また「奪還」は2路線。東日本大震災による線路付け替えで営業キロが変更となった路線で、乗り直しによって再度完乗達成となった。

今年、これほど一生懸命に完乗活動に取り組んだのは、2016年以降北海道の廃線問題に追われ、また2020年以降はコロナによる影響も加わって遅れに遅れた完乗活動のペースを挽回したかったことが大きい。また、ウクライナ戦争により、いつ人類が滅亡するかどうかもわからないから、今のうちにやり残したことはできる限りやっておきたいという気持ちになったことも大きいと思う。

今年発生した問題は基本的に解決しないまま越年する。来年も、不安定で危機的なムードは変わらないだろう。完乗達成を急ぎたいと考えており、ここ数年発表していなかった目標も、来年はおそらく発表することになると思う。

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