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ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
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<安全問題研究会コメント>日本社会に衝撃与えた信楽高原鉄道事故から30年 崩壊の最終章に入った民営JRに別れを告げ、直ちに再国有化で再建を

2021-05-20 20:49:59 | 鉄道・公共交通/安全問題
遺族の決意が国を動かし、事故調組織を実現させる 信楽高原鉄道事故30年(産経)

信楽事故から30年 次世代へ教訓つなぎ風化させるな(産経)

1991年5月14日、乗客42名が死亡した信楽高原鉄道事故から30年となった(当時のニュース報道)。30年間の歩み、遺族・被害者の闘いがもたらした成果については、上記の産経の2つの記事が良く取材しまとめている。他紙の報道も見たが、特にこの産経の2記事が優れていると判断したのでご紹介する。

なお、これを受け、安全問題研究会が以下のとおりコメントを発表した。

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<安全問題研究会コメント>日本社会に衝撃与えた信楽高原鉄道事故から30年 崩壊の最終章に入った民営JRに別れを告げ、直ちに再国有化で再建を

1.42名もの大量の犠牲者を出し、日本社会に大きな衝撃を与えた信楽高原鉄道列車正面衝突事故から30年を迎えた。安全問題研究会は、42名の犠牲者及びその関係者に対し、謹んで哀悼の意を表する。

2.事故の起きた1991年は、国鉄分割民営化によりJR7社が発足してから5年目であった。国鉄からJR各社に不採用となり、国鉄清算事業団に送られた職員1047名が最終的に解雇されたのはこの前年、1990年のことである。民営化からまだ5年経過しておらず、日本の市民に旧国鉄と特定地方交通線廃止・整理の苦い記憶が強く残っている時期のことであった。

3.事故現場となった信楽高原鉄道は、国鉄再建法に基づく第1次特定地方交通線・信楽線を継承した第三セクター鉄道であり、信楽町で開催中の「世界陶芸祭」に合わせて信楽線に臨時に乗り入れてきたJR西日本の急行列車と、信楽高原鉄道の列車が単線上で正面衝突したものである。JR西日本は厳しい批判にさらされたが、赤字線として信楽線を一度は見捨てておきながら、儲かるイベント時だけ見捨てたはずの路線を徹底的に利用し尽くし、42名の命を奪い去ったJR西日本の利益優先、安全軽視の姿勢を見れば、それらの批判は受けて当然のものである。

4.発足直後のJR西日本が、JR東日本・東海と比べて中国山地などの条件不利地域を多く抱える一方、運賃・料金は本州3社同条件でスタートするなど無理を重ねながらの厳しい経営を強いられていることが明らかになっていった。当時、当研究会は発足しておらず、インターネットもない時代だったが、「民営JR7社体制は西日本の安全問題と、やがて訪れる北海道のローカル線問題を“両輪”として破滅へのレールをひた走るであろう」と警告した。バブル経済を背景としてJR7社がいずれも好決算を続け、民営化は大成功と宣伝されていた時期だけに、ほとんどの人から一笑に付されたが、この恐るべき惨事こそ「新自由主義JR」に忍び寄る破滅への最初の予兆だった。

5.30年後の今日、当研究会の警告は最も厳しい形で現実となった。JR西日本は福知山線脱線事故、新幹線のぞみ台車亀裂事故を相次いで起こした。信楽高原鉄道事故に関しても、信楽高原鉄道と折半していた被害者への賠償について「主な責任は信楽高原鉄道側にある」と主張し、訴訟まで起こして賠償負担割合を少なくしようと策動を続けた。この事故でJR西日本がきちんと襟を正していれば、福知山線事故など後続の事故を防ぐきっかけにもなり得ただけに、ここでJR西日本を監視する運動の社会化を図れず、次の事故につながってしまったことは当研究会としても非力を詫びなければならない。

6.しかし、この事故は、貴い犠牲と引き替えにその後の鉄道事故の調査や遺族・被害者のケアといった面で多くの前進が勝ち取られるきっかけとなった。それまで日本に常設されている公共交通機関の事故調査組織は海難審判庁、航空事故調査委員会のみであり、陸上交通機関の事故調査組織は常設されていなかった。信楽高原鉄道事故をきっかけとして、遺族・吉崎俊三さん(2018年死去)の呼びかけでTASK(鉄道安全推進会議)が結成され、鉄道事故に関しても事故調査機関の常設を求める活発な活動が展開された結果、航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の設置が実現した。

7.国土交通省に対する粘り強い働きかけの結果「公共交通事故被害者支援室」の設置が実現したのもTASKを中心とした運動によるものである。日航機墜落事故遺族会「8・12連絡会」との協力の下に、被害者が横につながり合い、社会を動かす力を具体化した画期的事例であった。後に発生した福知山線脱線事故(死者107人)でも、具体的な成果が速度照査型ATS(自動列車停止装置)の義務化、JR西日本歴代3社長への強制起訴程度にとどまっていることを考えると、信楽高原鉄道事故において得た成果は福知山線事故をもしのぐ大規模なものであるといえよう。

8.公共交通機関の安全を求める当研究会の活動に終わりはなく、30年は単なる通過点である。幸い、日航機事故を最後に営業中の旅客機事故で乗客が死亡した例はないが、高速ツアーバス・スキーバスなどの事故は断続的に起きている。これらはいずれも、公共財である交通機関を最安値に向かって際限なく競争させ、乗務員の労働条件も乗客の生命も無慈悲に叩き売りする新自由主義の最も残酷な帰結であった。

9.北海道のローカル線問題も「全路線消滅」すら視野に入れざるを得ない重大局面を迎えた。この事態もまた、公共財を市場原理に委ねる新自由主義がもたらした残酷な結末である。信楽高原事故42名、福知山線事故107名の生命、国労組合員ら1047名の雇用、北海道の半分にも及ぶローカル線――これらのすべてを奪い尽くす新自由主義に対して、当研究会は怯むことなく宣戦を布告し、全国各地を新自由主義の墓標で埋め尽くすまで徹底的な闘争を続ける。

10.今日の新型コロナ感染拡大も、病院や保健所の統廃合などを通じて新自由主義がもたらした危機である。感染の恐怖や必要のない死の危険に直面した多くの市民が新自由主義への敵意を抱き始めている。新自由主義を葬り去る過去半世紀で最大のチャンスが到来している。

11.当研究会は今年1月、利益優先、安全軽視のJR民営7社体制を最終的に清算し、再国有化をめざすため「日本鉄道公団法案」を決定した。JR再国有化の実現に向け全力を尽くし、信楽高原鉄道事故犠牲者42名の無念に応えたいと考える。

 2021年5月14日
 安全問題研究会

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【福知山線事故16年】改めて「組織罰」について考える

2021-04-29 20:38:52 | 鉄道・公共交通/安全問題
《JR福知山線脱線事故16年》加害企業の刑事責任は?遺族・有識者が「組織罰」導入訴えブックレット出版(ラジオ関西)

《JR福知山線脱線事故16年》加害企業への「組織罰」は問えるのか?東電・福島原発事故 強制起訴裁判、関係者は語る(ラジオ関西)

新型コロナ感染拡大の影響で、関西では昨年に続き、今年もJR西日本主催の追悼の会が中止となった。この事故の検証がよほどいやなのか、「追悼の会」もセレモニー化させ、できるだけ早くに幕を引きたいとの思惑は、この間のJR西日本の姿勢から透けて見える。JRがプレスリリースする「公式発表」をなぞっているだけの大手メディアの報道からはそうは見えないであろうし、「JR西日本が何度も反省の意を示しているのに、そんな一方的な決めつけはひどい」と思う人もいるかもしれない。

しかし、当ブログが間近で見てきたJR西日本の姿勢からは、そんな反省、謝罪など口先だけの嘘っぱちにしか見えない。本当に反省しているなら、なぜ事故現場近くの「慰霊の園」や展示の写真撮影すらさせないのか。「遺族の意向」と言うが、誰がそんなことを言っているのか。少なくとも私の知る遺族、藤崎光子さんはそんなことは言っていない。

昨年、ノーモア尼崎集会の前日に訪れた「慰霊の園」で、私は公園管理者との間で撮影をめぐって散々やり合った。

 「なぜ撮影が禁止なのか。私は今まであらゆる大事故の現場に行ったが、どこも撮影自由だった。禁止はJR西日本だけだ」
 「他は関係ない。遺族の中に撮影してほしくないという人がいる」
 「どの遺族がそんなことを言っているのか。本当にいるなら今すぐここに連れてきてほしい。逆に、私の知る遺族は事故の起きた現場はできる限り公開してほしいと言っている。あなたが本当かどうか疑うなら本人に電話して、今すぐここに来てもらってもいい」
 「そんなことを言われても困る。とにかく禁止なので」
 「制服を見たところ、あなたはJR西日本の契約した警備会社の人のようだが、JR西は慰霊公園を訪れる人との応対などの重要な業務を警備員にやらせている。JRの社員とおぼしき人たちはあちらでさっきから掃除をしているが、本来なら逆ではないのか。なぜJR西日本の社員みずから慰霊の園の説明をしないで警備員にやらせているのか」
 「私は詳細を知りませんので、会社に聞いてください」

JR西日本とはつまるところこのようなクソ会社である。本当に事故を真摯に反省している会社ならあり得ない対応と思うが、いかがだろうか。

さて、そんなわけで福知山線事故から16年を迎えた。15年でもなく20年でもない、こう言ってはなんだが「中途半端」な年数であることに加え、会社主催の追悼行事が中止になったこともあり、例年になく追悼ムードに欠ける4.25となった。だがそれでも、先日お伝えしたとおり、中央のメディアでも事故16周年のことはきちんと報道された。

遺族のみなさんも集会や独自の追悼行事を開けなかった。大森重美さんらで作る「組織罰を実現する会」も、今年は例年のような行事を開けないので、「組織罰はなぜ必要か~事故のない安心・安全な社会を創るために」(現代人文社)と題したブックレットを作った。私も早速ネット経由で申し込んだ。この連休中にも届けば読みたいと思っている。

組織罰とは、責任や権限が分散し、運営が複雑化した現代の大規模組織(官庁や大企業など)の過失で事故や災害が起きた際に、法人に巨額の罰金刑を科する刑事罰法制のことである。責任や権限が分散しているため、大企業・組織ほど個人の責任は職務権限との関係で問いにくく、法人を罰する規定がないため企業も罪に問われない。こうした現状を正し、過失事故・災害の責任を巨額の罰金の形で企業に負わせようというものだ。

英国では、2008年に労働党政権下で「法人故殺法」が制定された。企業に対する罰金刑に上限を設けず、現実に生じさせた被害額に相当する額を賠償として企業に負わせることができる。この法律成立後、英国では公共交通機関の事故が3割も減少。法制定時、頑強に抵抗した英国産業連盟(経済団体。日本の経団連に相当)も「事故を起こさないことによって企業に信用が生まれ、かえってビジネスによい影響がもたらされた」として今では法人故殺法を承認している実態がある。

物事の表面をなぞっただけで本質など知る気もないネット住民を中心に、日本でも組織罰の法制化には否定論、反対論が多い。「高額の罰金刑が科せられれば、企業が訴追を逃れるため自社に不利な証拠を隠ぺいするようになり、かえって真相究明ができなくなる。むしろ司法取引を導入し、処罰しない代わりに原因究明に加害企業を協力させた方が、再発防止につながる」が反対論の主なものである。

そんなことは、事故以来今日までの16年間ですでに議論され尽くしている。福知山線事故被害者も、事故後はいくつかのグループに分かれた。当ブログ・安全問題研究会が把握しているだけでも、①JR西日本の責任追及は棚上げにし、JRと協力しながら再発防止に向け努力しようとするグループ、②あくまでJR西日本の責任追及にこだわるグループ、③「遺族中心の動きにはついて行けない」として生き残った負傷者だけで独自の行動を続けるグループ--の3つの潮流がある。①の中心が浅野弥三一さん、②の中心が「組織罰を実現する会」の大森さんや藤崎さん、そして③の中心にいるのが「JR福知山線事故・負傷者と家族等の会」の三井ハルコさんである。

②で責任追及を続けている人たちも、16年間の闘いの中、「JRが安全文化を身につけ、再発防止が徹底されるなら」と期待して①の人たちと一緒に再発防止に向け協力して動いた時期もあった。しかし、2008年に発生した運輸安全委員会の報告書事前漏洩事件や、遺族の前に一度も謝罪に出ず、刑事裁判でも無罪を主張し続けた井手正敬元会長の姿勢に絶望して、②の人たちは袂を分かつ決意をしたのである。JR西日本が口にする「反省」を本物と見るかどうかが決定的な分岐点だった(①の人たちも、おそらくJR西日本の「反省」を全員が本物と信じているわけではないと思う。JR西日本という巨大組織との長い闘いに疲れ、本物と信じることにした人たちも多くいるであろうことは付け加えておきたい)。

組織罰を実現する会がモデルとしている法人故殺法制定後の英国で、公共交通の事故が3割減ったことはすでに述べた。逆説的なようだが、組織罰制度は「安くない安全対策費を負担してでも、事故で賠償を払うのに比べれば安くつく可能性が高い」と企業に理解させ、安全対策をきちんと講じさせることに主眼が置かれている。つまり、組織罰法制は、発動させないようにするのが目的の法制度であり、逆に言えば、発動されるような事態が引き起こされれば負けなのである。

たかだか5千億円の津波対策費を出し渋ったために、福島第1原発が津波に襲われた結果、東京電力は現時点ですでに21兆円の賠償負担をしている。組織罰法制が日本にあれば、東京電力を21兆円の罰金刑に処し、その費用で国が被害者に賠償することができるわけだが、まともな思考回路を持った企業なら、そうなる前に5千億円の津波対策費を払うほうが安いと判断するだろう。そうした思考に企業を変え、事故を未然に防止させるのが組織罰制度の目的なのである。それゆえに組織罰制度は、発動されるような事態が引き起こされたらその時点で負けだと考えなければならないのである。

組織罰制度に反対している人はそのあたりの事情が分かっていない。証拠の隠ぺいをするような企業が出るから反対という人は、福知山線事故遺族の中で初めは①だった人が、②の立場に変わっていったのはなぜか考えてほしい。遺族がJR西日本の責任追及をあきらめてでも安全文化の確立に向け①の人たちと協力してきたのに、それが踏みにじられ、裏切られたという思いを抱いているからこそ②の立場に転じたのである。

組織罰を導入すれば、企業が証拠を隠ぺいする恐れは確かに検討すべき点のひとつだろう。それならば現在の原子力損害賠償法のように、過失責任の有無を問わない制度にすればよい。過失責任の有無にかかわらず、損害を発生させた時点でそれと同じ額の罰金刑が科せられるとなれば、証拠隠ぺいの意味もなくなる。仮に真相究明、再発防止ができなくても、JRや電力会社などの独占企業体は別として、一般の民間事業会社に対しては経営破たんして市場から追い出すという「最大級の制裁」を加えることができるのだ。

当ブログ・安全問題研究会は組織罰制度導入に賛成であり、そのために努力しているが、福知山線事故被害者のみなさんに対しては、①~③の立場の人すべてを協力対象と考えている。今後、それぞれ立場が異なっても、いろいろな協力要請があれば、①~③の立場の違いにかかわらず、すべてに応じるつもりでいる。

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【管理人よりお知らせ】ノーモア尼崎事故集会中止について、他

2021-04-27 22:13:24 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

1.松木謙公候補当選! ご支援ありがとうございました

すでに報道でご承知の通り、4月25日投開票の衆院道2区補選は、当ブログ管理人が日本鉄道公団法案を託した松木謙公候補が当選しました。ご支援いただいたみなさまに厚く感謝申し上げます。当選しても松木さんの任期はわずか半年しかありませんが、当ブログ・安全問題研究会は、同法案の国会提出を各政党に働きかけていきます。

また、同日行われた参院長野選挙区補選、参院広島選挙区再選挙でも野党統一候補が当選しました。与党側は全敗を「想定外。広島では勝てると思っていた」とコメントしていますが、当ブログは広島在住の知人を通じて、選挙戦最終盤で「宮口治子さん(野党統一候補)優勢」との情報を得ており、その通りの結果になりました。

周囲をイエスマンばかりで固めた最近の首相官邸・自民党執行部を見ていると、明らかに情報収集能力が落ち、情勢評価も甘くなっています。当ブログのほうが、最近は正確に情勢評価できていると感じています。

2.「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る集会」は中止となりました

毎年、福知山線脱線事故の起きた4月25日周辺の日程で欠かすことなく開催されてきた「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る集会」は、関西における新型コロナの感染拡大を考慮した結果、今年はやむを得ず中止となりました。延期ではないので日程を再調整しての開催もありません。事故の起きた翌年、2006年にこの集会が始まって以降、中止となるのは初めてであり、大変残念ですがやむを得ません。

3.Youtube「タブレットのチャンネル」の更新(新動画投稿)を、今後は原則として行わないこととしました

当ブログの姉妹サイトであるYoutube「タブレットのチャンネル」への新規動画投稿を、今後は行わない方向にしたいと考えています。

すでにYoutubeは飽和状態で、最近は平凡な動画を投稿してもアクセスもされなくなっています。アクセスを稼ぐためには、よほどの工夫を凝らすか、奇をてらったものに編集することが必要ですが、当ブログ管理人にはそこまでの動機もモチベーションもありません。新型コロナの影響による外出自粛が長期化した結果、管理人の動画撮影能力も落ちており、最近は自分自身が撮影した動画のクオリティに納得できること自体がほとんどなく、撮影しては消去の繰り返しになっています。

自分には動画撮影の能力もなく、向かないと最近では考え始めていて、動画による情報発信は、得意な人やデジタルネイティブ世代に譲ろうと思っています。当ブログ管理人は、著書を出版したこともあり、やはり得意分野である文字での情報発信に集中すべきだとの思いも強まっています。

そういうわけで、今後、「安全問題研究会」チャンネルでは原発問題やJR問題の集会など一定の発信を続けますが、「タブレットのチャンネル」における鉄道動画の更新は、当分の間、しないことに決めました。多くの方がチャンネル登録していることを踏まえ、チャンネル自体は消去せず残しますが、管理人自身によほどこの分野に関する前向きな心境の変化がない限り、更新再開も考えられない状況なので、今後は過去に投稿済の動画のみでお楽しみください。

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【JR福知山線脱線事故16年】遺族の藤崎さんから久しぶりの電話

2021-04-25 23:12:49 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR福知山線脱線事故から16年 遺族たちが犠牲者を追悼(NHK)

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107人が死亡したJR福知山線の脱線事故から25日で16年となりました。新型コロナウイルスの影響で、追悼慰霊式は2年連続で中止され、遺族たちはそれぞれの場所で祈りをささげました。

(中略)

●長女を亡くした藤崎光子さん

脱線事故で当時40歳だった長女を亡くした藤崎光子さん(81)は、自宅近くで取材に応じ「『年月が悲しみを癒やす』というのはうそだ。年月がたてばたつほどつらさは増し、悲しい思いの中で生きていくのが事故のあとの人生だ。今でも、娘の『なぜ私は殺されたの』という声が聞こえる。食事をしていても、『なぜ私はそこにいないの』という声が聞こえる。JR西日本には、安全な会社になってほしい。私のような遺族を生まないでほしい」と話していました。
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日曜日の昼、何気なく見ていたニュースが福知山線事故16年のニュースを報道しているのを見て、改めて、ああ、今日は「この日」だったな、と思い出す。新型コロナウィルスの感染拡大が続き、「○○祈念の日」などの節目の感覚も鈍くなっており、よくない傾向だと気を引き締め直す。

ニュースを見終わり、一息ついたところで電話がかかってきた。遺族の藤崎さんからだ。事故当日は現場を訪れ献花したり、講演活動に呼ばれたりするなど忙しい藤崎さん。事故が起きた4月25日の当日に電話がかかってくるのは初めてのことだ。新型コロナの影響で講演や追悼などの行事が中止になったせいだろう。

「午前中まで、マスコミの取材に応じていました。あなたのお連れ合いさんから写真立てをいただいたので、それに娘の写真を入れて取材に応じたんですよ」と言う。ちょうど、妻とその話をしていたところだった。夕方のNHKニュースで改めて福知山線事故16年のニュースが放映されたが、その際には写真立てに入れた娘さんの写真を持ってコメントする藤崎さんの姿が映し出された。

藤崎さんには、今後に役立ててもらえるよう、当ブログ管理人の共著「地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望」を1冊献本した。当ブログ管理人は、本文2節の他にコラムも1本、執筆を担当しており、「組織罰を実現する会」が取り組んでいる「組織罰」法制化運動と併せて藤崎さんを紹介している。鉄道や原発などで大事故が起きているのに、「大企業ほど責任と権限があちこちに分散しているため特定の個人には責任を負わせられず、かといって組織を裁く法律もないため法人も処罰できない」という理由で誰も責任を取らず、被害者だけが泣き寝入りしなければならない「後進国・日本」はいつまで続くのか。こういう無責任さが、今回の新型コロナでも「どうせ誰の責任も問われないのだから適当に“やってる感”だけ見せておけばいい」という惨劇につながっているのだ。想定される範囲できちんと安全対策を取らなかった経営者、政策責任者が刑事責任を問われる仕組みを作らないと、有事のたびに同じことが繰り返される。無責任の連鎖に終止符を打つため、当ブログも可能な限り藤崎さんに力添えをしていきたいと考えている。

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日航機墜落事故から35年目の夏 真相究明求め市民団体発足 事故調報告と外務省公文書が示唆する驚きの事故原因とは?

2020-08-25 19:51:42 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2020年9月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。なお、管理人の判断で「航空問題・空の安全」カテゴリでの掲載としました。)

 ●事故原因再調査求め、市民団体発足

 1985年、日本航空123便が群馬県御巣鷹山中に墜落、単独機としては史上最悪の520名が死亡した事故から8月12日で35年を迎えた。折からのコロナ禍に加え、昨年の台風被害で事故現場に向かう登山道の一部が崩れたこともあって、今年は例年以上に慰霊登山を控える人が少なくなかった。

 だが、35周年の節目の今年、事故原因追及、真相究明という意味では大きな動きがあった。地元・群馬県の地方紙「上毛新聞」が7月28日付けで次のように伝えている。

 『8月12日で35年となる日航ジャンボ機墜落事故を巡り、遺族や関係者らが国や日航に情報開示などを求めるために任意団体を立ち上げた。事故調査委員会(当時)がマイクロフィルムで保存した事故調査資料や墜落機のボイスレコーダー(音声記録装置)、フライトレコーダー(飛行記録装置)の生データの遺族への開示を要求するほか、相模湾に沈んだままになっている機体の一部残骸の引き揚げと再調査を訴える』

 事故で夫を亡くした吉備素子さん(大阪府在住)が会長を務め、「日航123便 墜落の新事実」(2017年)や「日航123便墜落 圧力隔壁説をくつがえす」(2020年7月新刊)などの著書があり、奇跡的に救出された4人の乗客のひとりで元日航アシスタントパーサ落合由美さんの同僚でもあった青山透子さんが事務局を務める。

 『調査資料開示を巡っては、国や日航が遺族による情報公開請求に応じず、一部遺族の不信感につながっている。世界の航空・船舶事故では数十年たってから新事実が判明する例もあるとされ、吉備会長は「35年たった今だからこそ、事故直後には難しかった情報の開示や(相模湾からの)残骸引き揚げを実現して、真相を明らかにしてほしい」と話した』

 上毛新聞記事はこのように続けている。事故機、123便に最初の異常が起きたのは1985年8月12日午後6時24分35秒ごろ。「ドーン」という衝突音のような異常音の発生だった。このとき、同機は相模湾上空を飛行中で、崩壊した垂直尾翼の大半が相模湾内に沈んでいることが明らかであるにもかかわらず、政府はこの間何回、いや何十回も行われてきた垂直尾翼引き揚げの要求を頑なに拒み続けてきた。この政府の頑なな姿勢の裏に「何かある」と感じる市民も多く、航空機事故調査委員会(現在の運輸安全委員会の前身)が公表した「後部圧力隔壁崩壊説」への疑問を持つ人も今なお少なくないのが現状だ。

 ●当研究会も疑問 矛盾だらけの「圧力隔壁崩壊」

 当研究会も、圧力隔壁崩壊説には大きな疑問を持ってきた。今から6年前、2014年の8月に「レイバーネット日本」に発表した論考を、かなり長くなるが再掲しておこう。

〔「レイバーネット日本」に筆者が2014年に公表した「日航機事故から29年~フジテレビ特番を見て やはり解明されなかった「疑惑」」より〕

 ミサイル撃墜説、自衛隊「無人標的機」衝突説を初めとして、この間、ありとあらゆる言説が流されてきた。この事故のことを卒業論文のテーマにしようと考えた学生が教授に相談したところ「君の命が危ない。悪いことは言わないからやめなさい」と言われた、またある大物政治家が「私が首相になったらすべての真相を明らかにする」と漏らし、そのために政権中枢から遠ざけられた、など事故から数年は事実とも嘘ともつかない風説も乱れ飛んだ。だが、そのどれもが決定的な証拠を欠いたまま、事故原因に納得できない人たちが独自の真相究明を今なお続けようとしているのが、この事故の特異なところなのだ。

 日航乗員組合の組合員で、同社の航空機関士(当時)だった芹沢直史氏は、事故の真相究明に取り組んでいたジャーナリスト角田四郎氏に対しこのように答えている。「過去、日航では自社機事故の後、返還されたボイスレコーダーは必ず乗務員に公開され、その一部は訓練に供されています」「通常なら〔事故原因の〕調査中にボイスレコーダーを聴かされ解読する手伝いをすることさえあったのに、今回は一切ノータッチです。組合からも再三、公開を要求してきましたが、今だ応じていません」。

 1985年午後6時24分35秒頃に「ドーン、ドーン」という異常音が響き、警報が鳴動を始めた直後、ボイスレコーダーに記録された高浜正巳機長の声がどのように聞こえるか。事故調が発表したこの部分の筆記録は、1985年8月27日の第1次中間報告では「何かわかったの」だったのが、翌86年6月3日の「聴聞会報告」では「なんか・・・・」になり、87年6月の最終報告では「なんか爆発したぞ」になるなど二転三転している。

 事故調が航空工学の「専門家」を揃えながらこの程度の解析もできないという事実に驚かされた。後に、「なんか爆発したぞ」との筆記録の記載に対し、疑問の声が上がり始めた。この時点では、123便はまだ「スコーク77」(いわゆる非常事態)も宣言しておらず、この時点で「ドーン」音がなぜ「爆発」とわかるのか、というもっともな疑問だった。2005年に放送されたTBS「ボイスレコーダー~残された声の記録」による生音声の放送で、この部分が「なんかわかったの」であることがはっきりした。インターネット上に流出した生音声を拾って私は何度も聴き直したが、「なんか爆発したぞ」に聞こえたことは一度もない。

850812JAL123便ボイスレコーダー


 事故直後、事故調委員の間で、また「圧力隔壁崩壊説」に批判的な有識者の間で最も鋭い論点になったのがこの部分の聞こえ方だった。「初めに爆発が起こって圧力隔壁が壊れ、続いて垂直尾翼が崩壊。与圧がなくなって急減圧が起きた」という事故調の描いたストーリー通りであるためには、この部分はどうしても「爆発したぞ」でなければならなかった。だが実際には何度聴き直しても高浜機長の声は「なんかわかったの」にしか聞こえなかった。だからこそ、ボイスレコーダーは隠されなければならなかったのだ。

 圧力隔壁崩壊説が間違っていることを、私は、これまでに接したいくつもの証拠を挙げて証明することができる。そのひとつが下の写真だ。遺族の小川領一さんが公表したもので、撮影は事故で亡くなった父の哲さん(当時41歳)。この写真を掲載している「御巣鷹の謎を追う」(米田憲司著、宝島社、2005年)では領一さんによる写真の公表日時を「85年10月13日」としているのに対し、ジャーナリスト角田四郎氏の著書「疑惑 JAL123便墜落事故 このままでは520柱は瞑れない」(早稲田出版、1993年)では「事故の5年後に公表」としているなど、情報に混乱も見られるが、そのこと自体は写真の信頼性に傷をつけるものではないから、ご紹介する。



 この写真で注目すべき点は、なんといっても酸素マスクを着用していない乗客がいることだ。この日の123便は満席で、キャンセル待ちも回って来ず、搭乗をあきらめた人も多かったから、使われていない酸素マスクの座席に「主」がいなかったわけではない。

 この写真が撮影された時間、123便は少なくとも高度6000メートル以上を飛行していた。123便の高度変化は下の図の通りである(事故調発表のデータを基にしており、これも「御巣鷹の謎を追う」に掲載されている)。

 上空で、大気が存在するのは高度約10000メートルまでといわれる。私たちが生活している地上の気圧は、気象条件によっても変化するが概ね1000hPa(ヘクトパスカル)程度。高度1000メートル上るごとに気圧は約100hPaずつ減少するから、高度6000メートルより上を飛行しているこのときの123便の機外の気圧は約350~400hPa程度だ。富士山頂の約半分程度の気圧しかないことになる。こんな状態で、事故調報告通りに圧力隔壁が崩壊、垂直尾翼が機体から離脱して機体後部に大穴が開き、機内と機外の気圧が同じになるほどの急減圧が起きれば、まず酸素マスクなしで意識を保つことは無理だ。それなのに、123便の機内では乗務員はもとより一般乗客の中にさえ、酸素マスクを使用していない人が多くいるのがわかる(丸を付けたのが使われていない酸素マスク)。どうみても急減圧が起きている機内には見えない。

 さらに、これほどの高度を飛行しているにもかかわらず、操縦席では機長、副操縦士、航空機関士のだれも酸素マスクをしていないし、急減圧発生の際は直ちに「デコンプレッション(急減圧)!」と乗務員が称呼しなければならないとされているにもかかわらず、ボイスレコーダーの生音声にはそのような声はなかった。 

 圧力隔壁説が正しいとした場合に、機内で乗員乗客が酸素マスクをつけなくてよいほどの状況と整合性をとれる説明をするためには、少なくとも123便が発表よりかなり低高度を飛行していなければならない。たとえば、高度が3000メートル程度であれば圧力隔壁が壊れ、機体に大穴が開いたとしても、急減圧は起こらずに済むであろうから、矛盾なく圧力隔壁説を事故原因とできるであろう。ただし、今度は事故調が発表している高度図がおかしいという話になり、やはり事故調報告は全く信用できなくなる。


123便の高度図(事故調報告から)


 私は、123便がこうした低高度を飛行していた可能性はほぼなかったと思っている。第一、発表された航路図によれば、123便は富士山のすぐ近くを飛行しており、これほどの低高度を飛行していたら、御巣鷹の尾根に到達する前にどこか他の山に激突していたであろう。そもそも低高度ほど気圧が大きいから空気抵抗も大きい。垂直尾翼を失い、油圧による操舵機能も失われていた123便がそのような大きな気圧に抗しながら飛行するのは困難を極めたはずである。操縦不能に陥りながら、墜落まで123便が30分以上も飛行を続けることができたのは、空気抵抗の少ない高高度だったからだと考えるのが自然である。それでは、急減圧は…? やはり「なかった」と判断せざるを得ない。

 事故調が圧力隔壁説にこだわるのは、事故を起こした機体番号JA8119号機がこの7年前、大阪空港で起こした「しりもち事故」と関連づけたかったからだろう。事故がボーイング社の設計ミスによるものとなれば、日米航空業界の威信に傷がつく。JA8119号機特有の問題であり、ボーイング社の設計ミスでないとなれば、日米航空業界を打撃から守ることができる。不可解な事故調の姿勢、そして「起きていた事実からは全く導き出すことができない」矛盾だらけの圧力隔壁説に対する事故調の異常なこだわりの背景に、やはりこうした「政治決着」の臭いを感じざるを得ないのである。

〔引用終了〕

 ●青山さんの渾身取材が明らかにした事故現場での「ガソリン、タール臭」「事故ではなく事件」外務省公文書、そして「異常外力着力点」とは?

 青山さんは、元同僚の落合由美さんを瀕死の重傷に追い込んだ事故の真の原因を探りたいとの思いからこの間、取材を継続してきた。当研究会も資料収集・整理や「ボイスレコーダー~残された声の記録」で断片的に放送されたボイスレコーダーの内容分析、御巣鷹山の慰霊登山などに取り組んできたが、真相究明をしたいとの思いとともに、真相に近づくことに対する恐怖感もこの間ずっと持ち続けていた。取材を続ければ続けるほど「この事故の真相を追求すれば、いずれ日米軍産複合体との直接対決という運命が筆者を待ち受けている」との確信が強まったからだ。

 123便は、墜落後御巣鷹山中で一晩中燃え続け、翌13日早朝になってから発見されるが、その間、事故現場が長野県側だというデマ情報を一晩中流し続けたのがNHKと防衛庁だったことはすでに知られている。そもそも、航空機の燃料にはケロシンという軽油に似た物質が使われており、引火点はガソリンよりはるかに高く燃えにくい。また航空機の運航にあたって、短距離便なのに必要以上の燃料を積めば燃費が悪くなる一方、ぎりぎりの燃料しか積まなければ気象条件などで航路を変える際に燃料不足の懸念が生じる。経費節減と安全運航のバランスを考慮し、多くの航空便は実際に必要とされる量の2倍程度の燃料を積むとされる。東京~大阪という短距離を飛ぶ予定だった123便がそれほど多くの燃料を積む必要もなく、事故機が一晩中燃え続けたことに対しては多くの専門家から「あの燃料量でそんなに長く燃え続けるわけがない」との疑問の声が事故当時からあった。加えて、遺体の検視に当たった医師からも「過去の航空機事故でこれほどの黒焦げの遺体を見たことがない」と疑問の声が上がっていたのである。

 ケロシンは軽油に似た燃料なので、軽油や灯油に近い臭いがする。燃料成分の比率が高く、重油に近い性質を持つガソリンと軽油、灯油の臭いがはっきり別物であることは、専門家でない一般の人でもわかるだろう。ところが当時、救助活動にあたった人々の中から現場で「ガソリンのような臭いがした」との多くの証言もあるのだ。

 青山さんの著書「日航123便 墜落の新事実」では、123便事故や御巣鷹山の固有名詞に一切触れず、元軍人や軍事評論家に対し、ガソリンやタールのような臭いがするゲル状の物質としてはどんなものがあるか、と問うている。「火炎放射器の燃料」との回答でほぼすべての取材対象者が一致したと青山さんは記している。異常事態発生後、操縦不能となり迷走飛行を続ける123便の腹部に「オレンジ色の物体」が刺さっていたことや、墜落現場に近い上野村の児童生徒の多くが「123便を追いかけるように2機のファントムが飛んでいた」と証言していたことも紹介している。

 事故当時も現在も、日航機には垂直尾翼部分にあの有名な「ツルマルマーク」の赤色、「JAL」の会社名を示す黒文字が使われているほかは白一色で、オレンジ色の塗装が使われたことはない。このオレンジ色の物体が何かはずっと議論が続いてきたが、「圧力隔壁説否定派」の中で一貫して有力なのが自衛隊の無人標的機「チャカII」であるとの見解だ。当時、自衛隊への納入を直前に控え、受注元である石川島播磨重工で最終テスト中の自衛艦「まつゆき」が「チャカII」とそれを追尾するミサイルの発射実験をしていたとする証言もある。この「チャカII」を追尾ミサイルがまさに撃墜しようとする「交点」に123便が入り込み、撃たれた。それが世にいう「無人標的機衝突説」の要点である。

 青山さんの新刊「日航123便墜落 圧力隔壁説をくつがえす」はこの説の検証を試みている。青山さんが外務省に情報公開請求を行った結果、発見されたのは驚くべき公文書だった。事故わずか2日後の1985年8月14日付けでレーガン米大統領から中曽根康弘首相(いずれも当時)に送られた文書に、外務省職員が「日航機墜落事件に関するレーガン大統領発中曽根首相あて見舞いの書簡」と手書きで記載している。外務省は事故でなく事件と認識していたのだ。

 これが単なる外務省職員の書き間違えやミスでないことは、1985年8月22日、事故10日後の別の書類でも同様に記載されていることでよりはっきりする。公文書の件名が「JAL墜落事件(レーガン大統領よりの見舞電に対する総理よりの謝電)」と記載されているのだ。

 外務省をはじめ官公庁では文書台帳と呼ばれるものがあり、文書番号、件名とともに処理経過が記載される。件名は台帳に最初に記載されるため、特に慎重な検討を経て決められる。上層部もこの件名とすることを承認していたことを示すものだ。

 運輸安全委員会に引き継がれている事故調文書の情報公開にも青山さんは取り組んでいるが、その中にも注目すべき資料があった。事故報告書の「別冊」に位置づけられる資料「航空事故調査報告書付録――JA8119に関する試験研究資料」だ。JA8119とは事故機123便の機体番号であり、自動車のナンバー同様、機体固有の番号として国交省で登録される。そこには1985年8月12日午後6時24分35.07秒に「異常外力」が発生したとの記載がある。それはまさに「ドーン」という異常音がボイスレコーダーに記録されているのと同じ時間だ。垂直尾翼のほぼ中央部、異常外力が発生した場所を「異常外力着力点」として図示までしている。この日、123便の垂直尾翼中央部、事故調が図示した「異常外力着力点」で何らかの異常外力が発生したことを、事故調報告の「別冊」が認めているのである。

 ●最も恐れていた「結論」

 「ああ、やっぱりそうだったのか……」

 「日航123便墜落 圧力隔壁説をくつがえす」を読み終えたとき、筆者の首筋には冷や汗が出ていた。この嫌な冷や汗に最初に見舞われたのは、「疑惑 JAL123便墜落事故 このままでは520柱は瞑れない」(角田四郎著、早稲田出版、1993年)を読んだ時だった。おそらくこの事故、いや「事件」に関し、無人標的機衝突説を本格的に世に問うた初の著書だったと思う。そんなことはありえない、いやあってほしくないとの筆者の気持ちを打ち砕いたのが「疑惑」だった。

 事故原因について調査し真相に近づけば近づくほど、圧力隔壁説から遠ざかり、最もたどり着いてほしくない結論に近づいていくことの苦しさを筆者はずっと抱きながらこの30年以上を生きてきた。ボイスレコーダーに記録された「ドーン、ドーン」という2回の衝突音声の1回目はJAL123便に「チャカII」が衝突する音で、2回目は追尾してきたミサイルが「異常外力着力点」に衝突する音。この音とともに垂直尾翼は破壊され、油圧によるコントロールを失った123便は迷走飛行に入る。事態が事故ではなく「事件」であることをいち早く察知した自衛隊は直ちにファントム2機を差し向け、123便を追尾。目撃者のほぼいない御巣鷹の深い山中に123便が墜落するのを確認した(ミサイルを発射し撃墜した可能性も残る)。事故の真相を隠すため、救助隊が夜のうちに事故現場に入らないよう、12日は一晩中防衛庁みずから、またNHKを使って「事故現場は長野県側」との偽情報を流し続け、その間に現場に入った自衛隊員らが遺品や事故機の破片、遺体などあらゆるものを火炎放射器で焼き尽くし証拠隠滅を図った――。

 反軍備主義、平和主義の立場を守り、自衛隊に賛成でない筆者とて日本国民の一員である。「同じ日本国民によって構成される組織の一員として、災害救助などに出動し、顔の見える存在である自衛隊員たちがそんなことに手を染めるわけがない」「防衛庁・自衛隊という組織とは別に、個々の自衛隊員たちに疑いはかけたくない」という気持ちは常にこの間、どこかにあった。しかし青山さんの新刊は、「疑惑」で一度、打ち砕かれかけていたそんな筆者の気持ちを最終的に粉砕するものとなった。コロナ禍で遺族さえ自由に慰霊登山をできない異例の夏。35年目を迎えた2020年夏はこれまでになく重苦しく筆者の前を通り過ぎようとしている。

 ●今後の「会」の活動は?

 最後になってしまったが、青山さんたちが結成した会の名称は「日航123便墜落の真相を明らかにする会」という。事故関係者や遺族のほかに、情報公開制度に詳しい弁護士らを擁しているのが特徴だ。個人情報保護法制定や森友・加計学園問題を受けた2017年12月の公文書ガイドラインの改定に関わり、「桜を見る会」をめぐる公文書破棄問題でも安倍政権を批判する三宅弘弁護士、地元の群馬県弁護士会所属の赤石あゆ子弁護士らも加わり、政府が頑なに拒み続けている関係公文書の公開に挑む。「30年もたてば全てをオープンにするというのが歴史公文書の利用についての基本原則。理由を付けて開示しないのはおかしい」と三宅弁護士は指摘する。制度本来の趣旨に基づいた適切な運用を国や日航に求めるという。過去30年間、ずっと御巣鷹問題にかかわってきた筆者も、可能ならこの会に関わり、真相究明の一助になりたいと考えている。その結論がどんなに恐ろしいものであったとしても、不思議とこの事故に関する限り、何が来てもそれほど恐ろしいとは思わない。 

<参考文献>
・「疑惑 JAL123便墜落事故 このままでは520柱は瞑れない」(角田四郎著、早稲田出版、1993年)
・「日航123便 墜落の新事実」(青山透子著、河出書房新社、2017年)
・「日航123便墜落 圧力隔壁説をくつがえす」(青山透子著、河出書房新社、2020年7月新刊)

(2020年8月23日)

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ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る集会開催~JR各社の安全崩壊明らかに

2020-07-25 20:36:06 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2020年8月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。なお、管理人の判断で「鉄道・公共交通/交通政策」カテゴリでの掲載としました。)

 「ノーモア尼崎事故! 生命と安全を守る集会」が7月4日、尼崎市内で開催された。例年であれば事故の起きた4月に合わせて開催されるが、今年は新型コロナの影響で延期。ソーシャルディスタンスの確保に配慮しながら、それでも例年の約半分の100人が集まった。例年行われるデモ、事故現場での献花も中止された。

 ●JR西日本・北海道~安全崩壊とデータ改ざんの実態報告

 集会では、「鉄道業務における業務外注化と労働問題」と題し、桐生隆文さん(JRに安全と人権を!株主・市民の会)が記念講演。JRが基幹業務の外注化を次々推し進めた結果、技術継承に失敗し、労働条件低下や技術不足、交通弱者へのしわ寄せ、偽装請負などの違法行為が続発している状況が報告された。

 JR現場からは、平田尚さん(国労西日本)がこの間、継続して取り組んでいる片町線・鴫野駅でのホームからの乗客転落事故について報告した。危険な急カーブ上のホームが設置された鴫野駅ではホーム要員が削減される一方、ホームドアなど安全設備の設置は進んでいない。だが全国から9294筆の署名を集めるなど粘り強い闘いで、JR西日本も転落事故の多さと対策の必要性を認めた。今年4月、衆院決算行政監視委員会でも取り上げられるなど、JRを追い詰めている。

 JR東日本では、鴫野駅と同じような構造を持つ駅として長年の懸案だった中央本線・飯田橋駅の大カーブ上のホームが直線上に移転されることで解消した。恥ずかしい話だが、かつて本稿筆者も懇親会後の飯田橋駅で、乗車中に足を踏み外し、停車中の列車とホームとの隙間に片足を落とした経験を持つ。このときは自力で乗車できたが、隙間の空いたホームを恨めしく思ったものだ。

 JR北海道に関しては、筆者もこの間の道内の動きと、2019年のレール検査データ改ざん問題の裁判について報告を行った。2013年、函館本線大沼駅で起きた貨物列車脱線事故をめぐって、保線管理労働者がレール検査データを改ざんしたのではなく、JR北海道が曲線半径を実際より大きく見せる改ざんを行っていたのではないかとの指摘に会場から驚きの声が上がった。

 その他、水道民営化反対の闘い、JAL争議団、全日建連帯関生支部から闘いの報告があった。「関生支部が600日を超える不当勾留から委員長、副委員長を取り戻せたのは一般市民が黒川検事長の定年延長を阻止する闘いに立ち上がったから。市民と労働組合の連帯が大切」との指摘は重要だ。「大阪府警から『お前らは国家権力と闘うんやろ。だからわしらもお前らには何をやってもいいんや』と言われた」と生々しい弾圧の実態が暴露されると、再び会場から驚きの声が上がった。

 ●リニア、計画とん挫

 一方、JR東海が2027年の開業を目指して工事を進めてきたリニア中央新幹線は、静岡県でのトンネル建設で大井川の流量が毎秒2トンも減少するとの試算がまとめられて以降、静岡県が工事を認めず暗礁に乗り上げている。

 大井川は1級河川であり、開発許可の権限は国にある。だが静岡県自然環境保全条例では、自然環境に重大な影響を与える事業が行われる場合、事業主体と県との間で自然環境保全協定を締結する必要があることを定めている。対象となる事業の選定権は知事にある。こうした県の権限を背景に、川勝平太静岡県知事は、中央リニア新幹線についても保全協定締結の対象になるとの考えを示してきている。6月中に静岡県内のトンネル工事の「準備工事」を始めなければ2027年の開業に間に合わないとして、金子慎JR東海社長が川勝知事に2人によるトップ会談を申し入れた。だが、6月26日の会談も物別れに終わった。川勝知事は「JR東海が行おうとしているのは本体工事と別個の準備工事ではなくトンネル本体工事そのもの」であり、認めることはできないとの考えを崩していない。

 あまり知られていない事実だが、静岡県の抵抗がなくてもリニア中央新幹線はもともと2027年の開業は絶望的な状況にあった。名古屋駅周辺地域ではいまだ用地買収すら終わっておらず、予定通りの開業が絶望的であることは関係者の間では公然の秘密だったが、JR東海による巧妙な情報操作で隠されてきた。今回、静岡県の抵抗でいよいよ隠しきれなくなり、メディアが一斉に報道する事態となったのだ。

 川勝知事は、トップ会談「決裂」後の記者会見で、静岡県内だけで事業が遅れているわけではないにもかかわらず「静岡県だけが悪者にされている」と不快感を示した。メディアが数字を取る(=視聴率を上げる)ためには、詳細を知らない視聴者にとってわかりやすい構図に落とし込む必要がある。「中央と静岡県の対立」という構図ならわかりやすく数字も取れる。旧国鉄職員局長として、国労組合員など1047名首切りに関与しながら、分割民営化後のJR東海に君臨、自分の存命中にリニア中央新幹線開業のテープカットを見ることだけを目的に老醜をさらし続ける「アベ友右翼」葛西敬之前代表取締役会長が6月の株主総会以降、代表権のない取締役名誉会長に退いたこと、安倍政権が新型コロナ対策で失態を繰り返し、レイムダック化しつつあることも見逃せない。

 静岡県では、1980年代にも中部電力による取水によって大井川が涸れるなどの被害を受け、県民による水返せ運動が闘われた歴史を持つ。島田市など大井川沿線10自治体も、水問題が解決しない状況での工事着工は認めない方針だ。

 静岡県民の6割が、水問題をめぐる県の方針を支持しているとの世論調査結果も出ている。静岡県内でほぼ唯一の水源である大井川の流量減少に対しては、住民のみならず医療機関、特産品であるお茶農家、ウナギ産業従事者など県内経済界にも懸念の声がある。政府が力任せに推進する国策に対し、不利益を押しつけられる地元が自治体、経済界、住民一体となって闘っている。当事者、関係者にとってはいささか失礼な表現になるが、沖縄の基地問題同様、事態は面白く、目が離せない状況になってきた。

(2020年7月25日 「地域と労働運動」第239号掲載)

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【管理人よりお知らせ】ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る7.4集会での当研究会報告資料をアップしました

2020-07-11 23:39:22 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

新型コロナウィルス感染拡大の影響で、毎年4月に開催されている「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る集会」は延期されていましたが、コロナウィルスの影響が小さくなってきたことを受けて、7月4日に尼崎市内で開催されました。

例年より会場の収容人員を少なくし、感染拡大のおそれがあるデモ、事故現場への献花行動が中止となりましたが、それでも例年以上に有意義な集会となりました。

安全問題研究会からは、ここ数年取り組んできたローカル線問題には大きな進展がなかったこともあり、今年は2014年以来久しぶりに安全問題に焦点を当てたJR北海道問題な報告を行いました。

その際に使用した報告資料を公式サイトにアップしました。以下のリンクから見ることができます。

~JR北海道~リンクする安全と経営問題(追補 ポスト・コロナの新しい鉄道像をも見据えて)

PDF版配付資料版も合わせて掲載しています。

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<安全問題研究会コメント>公共交通の未曾有の危機の中で迎えた福知山線脱線事故15年 風化許さぬ遺族・被害者と連帯し公共サービス再建の闘いを

2020-05-06 15:03:52 | 鉄道・公共交通/安全問題
1.乗客・運転士107名が死亡し、国鉄分割民営化以降では最悪となったJR福知山線脱線事故から4月25日で15年を迎えた。安全問題研究会は、公共交通の事故とその被害者をなくすことを目指して発足したみずからの原点を改めて確認するとともに、事故犠牲者、すべての被害者に改めて哀悼とお見舞いを申し上げる。

2.事故から15年の春を、被害者たちもまた異例の形で迎えることになった。節目であるとともに、JR西日本が毎年、事故日直前の土曜日に開催してきた慰霊の集いが、従来通りの開催であれば事故当日の4月25日に重なる今年は、単なる通過点の意味を超えた1日となるはずであった。だが新型コロナウィルス感染拡大で慰霊の集いを含む関連行事はほとんどが中止に追い込まれた。

3.関連行事が中止に追い込まれる中で、今年もほとんどのメディアが全国ニュースで報道を続けたことは、事故被害者にとって数少ない希望である。福島第1原発事故など、これより後に起きた出来事の多くが、責任追及を恐れる支配層の意を受ける形で全国ニュースから消し去られているが、この事故は1985年の日航機事故と並んで今なお全国ニュースでの報道が続く。

4.この背景に、遺族をはじめとする被害者たちの粘り強い闘いがあることはいくら強調してもしすぎることはない。JR西日本歴代3社長の刑事裁判は無罪となったが、被害者は事故企業に高額の罰金刑を科することができる組織罰制度の法制化を求めていまも取り組みを続けている。日航機事故の被害者団体である「8.12連絡会」は、その後に起きた大事故の被害者団体の多くが休眠状態となる中で、事故から35年目の今なお活動を続ける。事故被害者同士が互いの交流を通じて横の連帯を作り出し、先に起きた事故の被害者が後から発生した別の事故の被害者をケアする取り組みも広がる。事故被害者のケア、サポートに対する経験が市民社会に蓄積されてきている。

5.一方で、政府や加害企業の取り組み、意識改革は遅々として進んでいない。政府は被害者が強く求める組織罰法制化の願いを見捨てて顧みず、100年前に作られた個人中心の刑事罰制度を改める気配も見られない。2017年12月の新幹線「のぞみ」台車亀裂事故に関しては、直ちに列車の運行を中止しなかったJR西日本において「列車の走行に支障がないとありがたい」という心理状態(確証バイアス)が作用していたことが事故の原因とする運輸安全委員会の調査報告書がまとめられた。「何が起きているのかが分からない場合や判断に迷う場合は、列車を停止させて安全の確認を行う」(報告書)という当たり前のことを運輸安全委が改めて求めなければならない事態が続いている。

6.事故から15年を迎えた今年、JR西日本の労働者のうち事故後に入社した人が初めて過半数となった。同社労働組合が事故15年に当たり、社内327職場を対象に実施したアンケート調査でも、会社による事故風化防止対策が「十分できている」との回答は80職場(全体の24%)にとどまる。現場労働者を納得させることもできない会社が一般市民・利用客を納得させることはできない。

7.ローカル線問題に関しても、JR四国が路線維持を目指して努力を続け、JR北海道も「自社単独で維持困難」10路線13線区公表後も地元との協議を続ける中、両社に比べて圧倒的に経営体力のあるJR西日本が、2019年に三江線廃止に踏み切ったことは、地域公共交通を担う事業者としての責任を放棄するものと言わざるを得ない。

8.一方、新型コロナウィルスの感染拡大を防止するため人の移動が控えられた結果、経営規模を問わず公共交通を担う企業に大きな打撃となりつつある。海外の航空会社にはすでに経営破たんの例も出ている。JR北海道や航空会社は労働者の一時帰休に追い込まれた。通学、通院などの生活輸送を持たない航空会社に対して救済を求める声が一部で上がり始めているが、地方で人々の生活の足を担う鉄道やバス事業者こそ真っ先に救済すべきである。

9.新型コロナウィルスが先行してまん延した東アジアでは、すでに制圧に成功しつつある国や地域も見られる。日本だけいつまでも感染拡大を止められないのは、中曽根政権以来本格化し、30年以上途切れることなく続けられてきた新自由主義政策により、医療、教育、福祉などの公共サービスが徹底的に破壊されたからである。当研究会は内外すべての新自由主義者に対し、過去の自分たちの罪を悔い改め、誤った考えを捨てるようこの機会に強く警告する。

10.自民党と安倍政権は、新自由主義的「財政再建」路線に固執し、市民への支援はおろか、みずからの支持基盤であるはずの中小自営業者さえ「補償なき自粛」によって切り捨てている。100年に一度の危機は市民社会の連帯、そして健康や生活など「人間」に予算を振り向ける「大きく優しい政府」によってしか打開できない。その意味を理解せず、ピント外れの政策を場当たり的に打ち出すだけの自民党はすでに歴史的使命を終えた。日本の市民は今こそ新たな情勢認識の下、分断を超えて連帯し、新自由主義を悔い改めない自民党と安倍政権を歴史のゴミ箱に投げ捨てなければならない。

11.当研究会は、公共交通や医療、教育、福祉などすべての公共サービスの切り捨て、民営化に反対し、その公有化とともに人員と予算を大幅に増やすよう求める。1人でも多くの市民を危機から救い、新自由主義を完全かつ最終的に葬り去るため、今まで以上の決意をもって最後まで闘い抜く。

 2020年5月6日
 安全問題研究会

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【管理人よりお知らせ】ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る6/8集会で当研究会が報告を行います

2019-06-07 23:28:12 | 鉄道・公共交通/安全問題
管理人よりお知らせです。

直前で申し訳ありませんが、明日6月8日、兵庫県尼崎市で行われる表記の集会で、安全問題研究会がJR北海道問題に関する報告を行います。

今年の集会では、メインとして企業に直接、刑事罰を科することのできる「組織罰」制度の導入をめざす立場から、津久井進弁護士が報告を行います。また、例年通りJR福知山線脱線事故遺族や公共交通企業で働く現場労働者からの発言も予定されています。詳しくはチラシをご覧ください(サムネイル表示になっている場合は、クリックで拡大します)。

なお、当研究会の報告内容は、集会終了後、ホームページに掲載予定です。

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新幹線「のぞみ」台車亀裂事故で国の事故報告書が公表 「正常性バイアス」は重要な指摘だが原因はそれだけか?

2019-04-25 23:59:17 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が月刊誌「地域と労働運動」2019年5月号に発表した原稿をそのまま掲載しています。なお、管理人の判断により「原稿アーカイブ」ではなく「鉄道・公共交通/交通政策」カテゴリで掲載しました。)

 2017年12月、博多発東京行き山陽~東海道新幹線上り「のぞみ34号」の台車に亀裂が発生、名古屋駅で運転を打ち切った事故に関する運輸安全委員会の事故調査報告書が3月末に公表された。JR西日本社員に極力、列車運行を継続したいという心理が働き重大事態との認識ができなくなる「正常性バイアス」が事故の原因と結論づけている。「正常性バイアス」は、福島第1原発事故でも東京電力が事前対策を怠った原因のひとつに挙げる声があり、重要な指摘に違いないが、公共交通の安全問題を長年見つめてきた当研究会の目には違う光景も浮かぶ。

 ●事故の経緯について

 1年以上前の事故でご記憶の向きも少ないと思うので、ここで事故の経過をもう一度まとめておこう。

 2017年12月11日、年末年始の繁忙期を間近に控えた時期に事故は起きた。博多駅を東京に向け発車(13時33分)したのぞみ34号の乗務員が異変に気付いたのは発車間もない小倉駅(13時50分)でのこと。7~8号車付近で異臭を感じたが、列車指令に報告するのみでそのまま運行を続けた。さらに異変が起きたのは福山駅発車(14時59分)後だ。13号車の車内でもやが発生、視界が悪くなる現象があった。

 岡山駅到着(15時16分)とともにJR西日本の車両保守担当社員3名が乗車する。異音が気になった保守担当社員は列車指令に対し「床下を点検したい」と報告。列車指令から「走行に支障があるか」と問われたのに対し、「そこまではいかないと思う」と応答。「新大阪駅で床下点検をやろうか」と提案したが、列車指令が別の指令員からの問い合わせに対応していたため、この重要な提案に応答できなかったとされる。モーターに異常があるかもしれないと考えたのか、乗務員は岡山~新神戸間でモーター開放(異常を疑ったモーターを電気回路から切り離し、走行に使用しないようにすること)の処置を行ったが異音に変化はなかった。

 列車はそのまま新大阪でも点検を行わず、「異音あり」との引き継ぎのみで乗務員の交代(JR西日本→東海)を行い、発車。車両保守担当社員が名古屋駅到着時に異音を感じて床下点検を実施したところ、台車枠に亀裂を発見。そのまま運転を打ち切った。

 以上が事故調査報告書に基づく事実経過である。当時の報道によれば、亀裂は台車枠側面17cmのうち14cmに達し、破断まであと3cmという間一髪の状態だった。東海道新幹線上り列車で名古屋の次の停車駅は1時間20分後の新横浜。名古屋で運転を中止しなければ、この間のどこかで破断に至っていた可能性は高い。東京~新大阪間の開業から54年目にして初めて起きた重大インシデントとして、運輸安全委員会がこの間、調査を続けてきた。

 ●乗務員、指令員の判断は妥当か

 小倉駅到着までに異音、異臭を感じたにもかかわらず列車運行を中止しなかった判断については疑問が残る。「焦げるような臭い」を感じたと関係者は証言しており、通常は発生しない異常な摩擦が発生していたとなれば火花が散る、火災が発生するなどが考えられるからだ。JR各社は安全確保と同時に列車の安定運行の責任も負っており、列車を止めにくい事情はわかるが、博多発の上り列車の場合、九州から本州に入れば一気に乗客が増え、ますます運行中止が難しくなる。新関門トンネルを越えた新下関駅には車両を引き揚げ留置できる線路もあることから、新下関まで様子を見て、乗客が少ないうちに運行を中止する判断もあり得た。

 異音、異臭の報告を受けた列車指令が車両保守担当社員の乗車を手配し、岡山駅から乗車させたことについては、運行継続を前提としている限り絶対に必要な措置である。乗車した社員が床下点検を行うべきだと判断したのも、彼らの役割を考えれば当然のことだ。列車はすでに岡山を発車しており、この次に大規模な車両基地があるのは新大阪だから、異常が発見された場合の対応も含め、新大阪が適当と考えた社員の判断はこの時点ではやむを得ない。乗務員が異臭、異音の報告を受けてなぜモーター開放の措置を執ったかは不明だが、通常、異音は動く部分で発生するから、回転部分であるモーターを真っ先に疑ったとしても、この時点では不自然とは言えない。

 列車指令からの問いかけに「走行に支障があるとまではいかない」と応答した車両保守担当社員の判断、そして列車指令が新大阪駅で床下点検をやりたいとの提案を聞き漏らしたことは事故発生原因にかかわる重大問題で、運輸安全委がここにこだわったのは納得できる。

 ここまでで重大なミスと言わざるを得ないのは、列車指令から指示がないまま、新大阪駅でJR西日本、東海のどちらも車両点検をしないまま列車を発車させたことだ。ここでの点検で異常を発見した場合、直ちに乗客を降ろし、鳥飼車両基地(新大阪~京都間)に車両を移動させればダイヤへの影響も最小限で済んだだけに悔やまれる。

 一方で、JR西日本、東海両社が、新大阪発車後も車両保守担当社員を降ろさず、乗車させたまま列車の監視を続けさせたことは好判断と言えよう。結果的に名古屋駅で再び異音を聞き、車両点検で亀裂を発見したのは彼らだった。会社間の境界だからといって彼らを新大阪駅で降ろしていたら、「のぞみ34号」は異音にも亀裂にも気付かれないまま走り続け、破局に至っていた可能性が高かった。この判断をした根拠はわからないが、現場を知る者にとってそれだけ不安な状況だったに違いない。駅に到着するときに都合よく異音が発生してくれるとは限らないから、今回は幸運なケースだったとは思うが、列車がスピードを上げるときや落とすときは、モーターや車輪の回転数が急激に変わるため、安定走行の時よりは異音が発生しやすい状況が生まれることは、指摘しておいてよいだろう。

 2017年12月11日、月曜日。危機を迎えながら走っていた「のぞみ34号」は、判断ミスと好判断のせめぎ合いの中で、かろうじて間一髪、破局を免れた。報告書からは、そんな危うい当日の状況が見えてくる。

 ●「正常性バイアスが原因」と断定

 「JR西日本の関係者が異音、異臭等を認めながら、列車の走行に支障があると判断するに至らなかったこと」について、報告書は(1)司令員の「列車の走行に支障があるか」との問いかけに対して、車両保守担当社員から「そこまではいかないと思う」との返答を得ていたことなど、指令員は、異常の重大性を理解するための明確な情報が得られていない状況にあったこと、(2)車両保守担当社員と指令員との認識の隔たりがあったこと、(3)車両保守担当社員が専門家であることから、本当に危険なときはそう言うはずだと思っていた指令員と、「床下点検の実施の判断は指令員の権限」と考えていた車両保守担当社員が、列車運行継続の判断について相互依存していたこと――を指摘。「大したことにはならないだろうとの心理」(正常性バイアス)、「列車の走行には支障がないだろう(支障ないとありがたい)」という自分の思いを支持する情報に対し意識が向く心理(確証バイアス)が作用した可能性が考えられる、とした。その上で報告書は、「何が起きているのか分からない事態は重大な事故に結びつく可能性があるとの意識を持って状況を判断し、行動することが重要」として、「適切な判断を行うための組織的取り組み」を鉄道事業者に対して求める内容となっている。

 車両の運行体制や点検、整備などの技術的側面に触れることはあっても、列車を動かす側の心理にまで踏み込んで運輸安全委がこうした指摘を行ったことは注目に値する。福知山線脱線事故でもJR西日本による厳しい社員締め付け教育(日勤教育)の問題性に触れる場面はあったが、それはあくまで副次的な位置づけに過ぎなかった。

 今回の報告書では、「再発防止策のポイント」に2ページが割かれ、台車亀裂防止の技術面と、現場が列車を止められない心理面が1ページずつ、ほぼ同等の文量となっている。事故の形態によりケースバイケースの部分はあるものの、運輸安全委が「巨大技術を扱う人間の問題」を以前より重視するようになっているのであれば、好ましい方向への変化といえよう。福島原発事故でもしばしば問題にされるが、技術面もさることながら「安全対策を行うべきであるのにしない」「列車を止めるべきであるのに止めない」という人間の行動こそが今、まさにクローズアップされているからである。「前進はできても退却ができない旧日本軍」以来連綿と続く日本人の「失敗の典型例」がここでも繰り返されていることは間違いない。

 ●その他の問題をめぐって

 この事故をめぐっては、他にも指摘しておかなければならないことがいくつかある。台車枠が亀裂に至った原因としては、メーカーである川崎重工業が台車枠製造の際、設計よりも薄く削ってしまったため強度不足に陥ったことがすでに分かっている。川崎重工業は謝罪会見を行い、社長みずから報酬の50%カットなどの処分も行った。川崎重工業に不信を抱き、同社からの部品納入を減らしているJR東海と対照的に、JR西日本は事故後も川崎重工業との取引を変わらず続ける。福知山線脱線事故から12年後の事故から見えてきたのは、相変わらず列車を止められないばかりでなく、事故から学ぶこともないJR西日本の姿勢である。

 「JR西は、(福知山線脱線事故以降の同社は)安全だと言い続けてきたが、それがゼロに戻った。苦しんできた12年間は何だったのか」。福知山線脱線事故で夫の浩志さん(当時47歳)を失った遺族の原口佳代さんはそう語る。長女早織さん(当時23歳)を事故で失った大森重美さんも「きちんと連絡が取り合えないなんて、あきれるしかない」と、変わらないJR西日本の体質に疑問の声をあげる。大森さんは現在、企業にも刑罰を科せるような法制定を求める団体「組織罰を実現する会」代表として活動を続けている。事故は福知山線脱線事故遺族からも大いに疑問を投げかけられている。

 「ハードウェアにより異常を検知するシステムを構築して、乗務員や指令に異常の発生やその程度を知らせる仕組みを検討することが望ましい」。報告書「再発防止策のポイント」が今回、行った重要な指摘だ。昨年4月、福知山線脱線事故の再発防止を目指す市民で作る「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る尼崎集会」で講師に招かれた筆者は講演で次のように指摘した。「鉄道と航空機は異なるシステムなので、すべて航空機と同様にすることはできないと思う。だが今回の事故で、新大阪駅での床下点検を求める車両保守担当社員の声を、列車指令が他の指令員(事故発生当時は「上司」とされていた)との対応に気を取られて聞き落としたことは重大問題だ。航空の場合、緊急事態を宣言した航空機がある場合、管制室にある全管制官のモニター画面に一斉に便名と“EMG”(緊急事態)が表示され、同時に警告音も鳴って知らせるシステムがもう30年以上前から運用されている。管制官の上司も警報を聞き、部下の管制官と同じモニター画面を覗き込めば、わざわざ聞かなくても緊急事態発生とその便名が把握できるシステムだ。上司に『何があったのか』と聞かれて指令員が答えているうちに、列車からの重大な連絡を聞き漏らすようでは本末転倒であり、鉄道の列車指令室にも航空管制室と同じようなシステムがあれば、それだけでも随分違うのではないだろうか」。今回、ここまで具体的でないとしても、それに近いシステムの整備を検討するよう運輸安全委が報告書で提言したことで、安全問題研究会の認識の正しさが裏付けられたものと思っている。

 今年もまもなく4月25日がやってくる。本号が読者諸氏のお手元に届く頃、メディアでは福知山線脱線事故から14年目の特集が行われているに違いない。事故の風化とともに「かつて来た道」を再び歩みつつあるJR西日本に対し、当研究会は、14年前の初心に帰るよう、改めて強く警告しなければならない。

(黒鉄好・2019年4月21日)

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