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メリットなく納得できない田子倉駅廃止

2013-01-16 22:09:50 | 鉄道・公共交通/交通政策
JR只見線の田子倉駅が廃止の危機を迎えている。噂はだいぶ前からあったが、いよいよJR東日本が只見町長らに伝え、正式に動き始めた(参考:福島民報)。ネット上では、周辺人口がほぼゼロであることなどから「廃止やむなし」とする声が強いが、当ブログの見解は異なる。

そもそも、駅とは単に旅客が乗降するためだけの場所ではない。地域の拠点であり、顔であると同時に、鉄道側にとっては安全・安定輸送のための基地の役割も果たすものである。北陸新幹線(長野新幹線)東京~長野間が1997年に開業したとき、安中榛名駅は「全列車通過ではないか」「乗客はタヌキだけ」などと言われたが、それでもJRがここに駅を作った理由は、事故やトラブルが発生した際に、駅間距離があまりに離れていると回復作業に支障を来しかねないからである(実際、新幹線でも隣接する駅同士が100km以上離れている区間は日本には1カ所も存在せず、すべて「隣の駅は100km以内」にある。旧国鉄の規程には当ブログの見る限り明文化されていないようだが、事故や災害の際に「復旧や救助活動のための拠点を置きやすいよう、駅間は100km以上離れないようにしている」との話を聞いた記憶がある)。駅とは緊急事態に係員が参集したり、資材を集めたりすることのできる拠点なのだ。

1990年代前半だったと記憶するが、JR北海道が「利用者減」を理由に4つの駅を廃止したときの出来事だ。4駅のうち最も乗降客の少ない駅は1日の利用者数が乗車0.5人、降車0.3人との記録があった。2日間で1人乗り、3日間に1人降りる計算になる。さすがに駅としての機能を果たしていないと判断したJR北海道は、地元に「廃止の打診」をしようとしたが、打診すべき「地元」が存在しない、という信じられない過疎の駅だった。JR北海道は問題ないとして4駅を廃止した。

ところが、その後問題が起きた。駅が廃止されたため、地元のお年寄りが列車で通院できなくなったのだ。このお年寄りは「週に1、2回列車に乗っていた」らしく、「乗車0.5人、降車0.3人」はこのお年寄りだった可能性もある。地元自治体はJR北海道に駅廃止の撤回を求めたがJRは応じず、結局、役場がこのお年寄りを病院まで送迎することで決着している(当ブログがこのような事例を知っているのは、当時、「鉄道ジャーナル」誌の「種村直樹のレイルウェイ・レビュー」で取り上げられたからである)。

1日当たり利用客数が小数点以下の駅ですら、廃止すればこのような問題が起きる。ここで取り上げたJR北海道は、いわば民営化(公共交通の「利益事業化」)のコストが地元自治体に押しつけられた例である。

これから日本は世界史上類例を見ない超高齢化社会に入る。いままでと同じやり方を取っていては鉄道は衰退への坂道を下ってゆくだけである。1人のお年寄りを大切にできない公共交通がおおぜいの「お客様」を大切にできるとは思えない。

田子倉駅は、記事にもあるように無人駅で、冬季は営業を休止し全列車が通過しているから、人件費はかからず、廃止したからといって何かのコストが浮くわけでもない。あまりに乗降客が少ないなら磐越西線・猪苗代湖畔駅のようにシーズンだけ営業するというのもひとつのやり方であろうし、一部の第三セクター鉄道で行われているように、乗降客がいないのを運転士が目視で確認できるときは通過するという方法もある。JRと地元、双方が知恵を出し、存続の道を探るべきだろう。

それに、田子倉駅が廃止された場合、只見駅から大白川駅まで20.8kmもの区間、駅がなくなることになる。全国有数の豪雪地帯であり、冬の間ずっと除雪に追われている只見線で、そんなに長い区間、駅がなくて本当に大丈夫といえるのか。

いずれにせよ、駅は鉄道と地元社会とを結ぶ拠点であり、廃止が軽々しく決められてよいわけがない。乗客が1日1人でもよいではないか。当ブログはJR東日本に廃止の撤回を求める。

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