戦争法(安保法)は、広範な市民の反対の声を無視する形で、9月19日未明、自公両党により国会を通過させられた。だが当ブログはあきらめてなどいない。憲法が、戦争法により重大な挑戦を受けているというのは誤った見方であり、実際は、日本国憲法を具体化しようと闘う市民によって、戦争法こそが挑戦を受けているのだ。日本の良識ある市民は、戦争法を「小さく生んで、大きく育てる」自公与党と官僚のたくらみを必ず打ち砕くだろう。
このような中で、昨日、今後の日本政治を占う上できわめて重要な動きがあった。日本共産党が、機関紙「しんぶん赤旗」紙上で「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府の実現」を国民に呼びかけたのだ。
すでに周知のことだが、自民党は、2014年の総選挙での絶対得票率(全有権者に占める自民党票の割合)ではわずか17%を占めるにすぎない。戦争法案に対する賛否以前の問題として、全有権者の6分の1からしか支持されていない政党が3分の2を超える議席を獲得し、国会周辺での反対デモなどの声をすべて無視して暴走の限りを尽くすのが民主主義なのか。小選挙区制という歪められた制度の下で、野党がいつまでもバラバラに戦い続けたことが、この憂慮すべき事態を生み出した根本原因ではないのか。
今回、共産党が行った提案は、こうした事態を分析した上で、野党各党が政策面で大きく異なっている現状も踏まえた、きわめて現実的かつ切実なものとなっている。過去3年間の各級選挙で連勝を続け、反原発闘争でも戦争法反対闘争でも共産党系団体は大きな役割を果たしてきた。共産党的に表現すれば「幅広い国民各層との共同を実現」してきたといえる。当選の見込みがなく、闘う姿勢を内外に示すためのエピソード的な意味しか持たなかった小選挙区での独自候補擁立を取りやめてでも、自民党を倒すため「よりまし」な他党との協力を積極的に進めようとする提案を、共産党みずから行うこととなった背景に、集会・デモなどで街頭に出た多くの市民とともに闘いを担った同党執行部・党員それぞれの自信があることは間違いない。
あらゆる差別、貧困、失業、戦争、原発に反対することを基本方針とする当ブログにとって、この動きを紹介しないわけにはいかないと考えるので、以下、全文を紹介する。この「提案」に関する
志位和夫委員長の記者会見についても「赤旗」サイトに掲載されており、ぜひ一読をお勧めする(こちらは当ブログには転載しないので、リンク先をご覧いただきたい)。
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日本共産党公式サイトより
「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」の実現をよびかけます
日本共産党中央委員会幹部会委員長 志位和夫
日本共産党の第4回中央委員会総会で確認し、志位和夫委員長が19日の記者会見で発表した提案「『戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府』の実現をよびかけます」の全文は次のとおりです。
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安倍自公政権は、19日、安保法制――戦争法の採決を強行しました。
私たちは、空前の規模で広がった国民の運動と、6割を超す「今国会での成立に反対」という国民の世論に背いて、憲法違反の戦争法を強行した安倍自公政権に対して、満身の怒りを込めて抗議します。
同時に、たたかいを通じて希望も見えてきました。戦争法案の廃案を求めて、国民一人ひとりが、主権者として自覚的・自発的に声をあげ、立ち上がるという、戦後かつてない新しい国民運動が広がっていること、そのなかでとりわけ若者たちが素晴らしい役割を発揮していることは、日本の未来にとっての大きな希望です。
国民の声、国民の運動にこたえて、野党が結束して、法案成立阻止のためにたたかったことも、大きな意義をもつものと考えます。
このたたかいは、政府・与党の強行採決によって止まるものでは決してありません。政権党のこの横暴は、平和と民主主義を希求する国民のたたかいの新たな発展を促さざるをえないでしょう。
私たちは、国民のみなさんにつぎの呼びかけをおこないます。
1、戦争法(安保法制)廃止、安倍政権打倒のたたかいをさらに発展させよう
戦争法(安保法制)は、政府・与党の「数の暴力」で成立させられたからといって、それを許したままにしておくことは絶対にできないものです。
何よりも、戦争法は、日本国憲法に真っ向から背く違憲立法です。戦争法に盛り込まれた「戦闘地域」での兵站(へいたん)、戦乱が続く地域での治安活動、米軍防護の武器使用、そして集団的自衛権行使――そのどれもが、憲法9条を蹂躙(じゅうりん)して、自衛隊の海外での武力行使に道を開くものとなっています。日本の平和と国民の命を危険にさらすこのような法律を、一刻たりとも放置するわけにはいきません。
戦争法に対して、圧倒的多数の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、元最高裁判所長官を含むかつてない広範な人々から憲法違反という批判が集中しています。このような重大な違憲立法の存続を許すならば、立憲主義、民主主義、法の支配というわが国の存立の土台が根底から覆されることになりかねません。
安倍首相は、“国会多数での議決が民主主義だ”と繰り返していますが、昨年の総選挙で17%の有権者の支持で議席の多数を得たことを理由に、6割を超える国民の多数意思を踏みにじり、違憲立法を強行することは、国民主権という日本国憲法が立脚する民主主義の根幹を破壊するものです。
私たちは、心から呼びかけます。憲法違反の戦争法を廃止し、日本の政治に立憲主義と民主主義をとりもどす、新たなたたかいをおこそうではありませんか。安倍政権打倒のたたかいをさらに発展させようではありませんか。
2、戦争法廃止で一致する政党・団体・個人が共同して国民連合政府をつくろう
憲法違反の戦争法を廃止するためには、衆議院と参議院の選挙で、廃止に賛成する政治勢力が多数を占め、国会で廃止の議決を行うことが不可欠です。同時に、昨年7月1日の安倍政権による集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を撤回することが必要です。この二つの仕事を確実にやりとげるためには、安倍自公政権を退陣に追い込み、これらの課題を実行する政府をつくることがどうしても必要です。
私たちは、心から呼びかけます。“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”――この一点で一致するすべての政党・団体・個人が共同して、「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」を樹立しようではありませんか。この旗印を高く掲げて、安倍政権を追い詰め、すみやかな衆議院の解散・総選挙を勝ち取ろうではありませんか。
この連合政府の任務は、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を撤回し、戦争法を廃止し、日本の政治に立憲主義と民主主義をとりもどすことにあります。
この連合政府は、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での合意を基礎にした政府であり、その性格は暫定的なものとなります。私たちは、戦争法廃止という任務を実現した時点で、その先の日本の進路については、解散・総選挙をおこない、国民の審判をふまえて選択すべきだと考えます。
野党間には、日米安保条約への態度をはじめ、国政の諸問題での政策的な違いが存在します。そうした違いがあっても、それは互いに留保・凍結して、憲法違反の戦争法を廃止し、立憲主義の秩序を回復するという緊急・重大な任務で大同団結しようというのが、私たちの提案です。この緊急・重大な任務での大同団結がはかられるならば、当面するその他の国政上の問題についても、相違点は横に置き、一致点で合意形成をはかるという原則にたった対応が可能になると考えます。
この連合政府の任務は限られたものですが、この政府のもとで、日本国憲法の精神にそくした新しい政治への一歩が踏み出されるならば、それは、主権者である国民が、文字通り国民自身の力で、国政を動かすという一大壮挙となり、日本の政治の新しい局面を開くことになることは疑いありません。
3、「戦争法廃止の国民連合政府」で一致する野党が、国政選挙で選挙協力を行おう
来るべき国政選挙――衆議院選挙と参議院選挙で、戦争法廃止を掲げる勢力が多数を占め、連合政府を実現するためには、野党間の選挙協力が不可欠です。
私たちは、これまで、国政選挙で野党間の選挙協力を行うためには、選挙協力の意思とともに、国政上の基本問題での一致が必要となるという態度をとってきました。同時に、昨年の総選挙の沖縄1~4区の小選挙区選挙で行った、「米軍新基地建設反対」を掲げての選挙協力のように、“国民的な大義”が明瞭な場合には、政策的違いがあってもそれを横に置いて、柔軟に対応するということを実行してきました。
いま私たちが直面している、戦争法を廃止し、日本の政治に立憲主義と民主主義をとりもどすという課題は、文字通りの“国民的な大義”をもった課題です。
日本共産党は、「戦争法廃止の国民連合政府」をつくるという“国民的な大義”で一致するすべての野党が、来るべき国政選挙で選挙協力を行うことを心から呼びかけるとともに、その実現のために誠実に力をつくす決意です。
この間の戦争法案に反対する新しい国民運動の歴史的高揚は、戦後70年を経て、日本国憲法の理念、民主主義の理念が、日本国民の中に深く定着し、豊かに成熟しつつあることを示しています。国民一人ひとりが、主権者としての力を行使して、希望ある日本の未来を開こうではありませんか。
すべての政党・団体・個人が、思想・信条の違い、政治的立場の違いを乗り越えて力をあわせ、安倍自公政権を退場させ、立憲主義・民主主義・平和主義を貫く新しい政治をつくろうではありませんか。