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公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

迷走していた野党にかすかな光が見えてきた?

2015-08-14 22:16:10 | その他(国内)
8月10日、NHKが報道した内閣支持・不支持と政党支持率に関する世論調査は、当ブログにとって久しぶりに興味深い結果となった。安倍政権に関しては不支持が支持を上回っており、現時点で驚きはなく、むしろ興味深いのは政党支持率である(サムネイル画像=NHKのテレビ報道)。

「戦争法制」の影響で、与党の自民、公明が下げるのは当然としても、これまで、与党から離れた世論は「支持政党なし(特になし)」に向かい、野党支持率が上昇することはなかった。国会議員の選挙は「椅子取りゲーム」だから、与党の支持率がどんなに低くても、野党支持がそれ以下であれば「相対的に」与党はいつでも選挙に勝つことができる。実際、2014年総選挙は安倍政権の不支持が支持を上回る中で行われたが、それでも、ふがいない野党に助けられる形で自公は衆院の3分の2維持に成功した。自民党の支持率はこのところ30%台が続いているが、55年体制当時もこの程度だったこと、小選挙区制で少数野党が分立し、選挙協力もできない現状にあることを踏まえると、この程度で十分である。

当ブログはこの間、継続的に世論調査を見てきたが、最大野党の民主党はじめ、野党はすべてひと桁台の支持率が続いてきた。民主党は2012年に政権から転落して以降、支持率が2桁台に乗ったことは一度もなかった。それが今回、一気に3.2%も支持率を上昇させ、10.9%と、政権崩壊以降では初めて2桁台に乗ったのである。

この間、民主党に支持率を底上げさせるような重要な変化があったのか、なかったのか。実はあった。民主党が、安倍政権と闘う姿勢を明確にしたことである。かつての社会党のような「反対野党、抵抗野党」として、急激に「左カーブ」を切ったことが支持率上昇の理由である。

民主党が「原理主義者」の岡田氏を再び代表に就け、安倍政権の「解釈改憲による9条解体」「憲法、立憲主義破壊」に反対姿勢を強めるにつれ、民主党内で明らかな主役交代が起こった。細野豪志・政調会長や前原誠司氏のような「対案提示、政権交代指向」型のメンバーが表舞台から消え、代わって辻元清美、蓮舫、白真勲各氏のように、かつての社会党を思わせる「反対、抵抗、追及」型のメンバーが台頭してきたのである。

対案提示、政権交代指向型のメンバーを中心に党運営、国会審議をしていた頃の民主党の支持率が全く上向かなかったにもかかわらず、「反対、抵抗、追及」型の国会運営をするようになった途端に支持率が上昇したことは大変興味深いものがあると同時に、国民が民主党に何を期待しているかをも浮き彫りにした。平たく言えば、民主党に期待されているのは政権交代ではなく、自公政権を厳しく追及し、暴走にストップをかける役割である。つまり、55年体制下の社会党と同じ役割が期待されているのである。

55年体制下では、野党第1党(社会党)に期待が集まっているときはそのひとり勝ち、批判・不満が集まっているときはそのひとり負けとなり、代わって自民党と共産党が伸びる、ということが繰り返されてきた。(第○○回総選挙、という形で)具体的な例を挙げて論証する時間的余裕が現在、当ブログにはないが、55年体制下の日本で、総選挙の勝敗の鍵を与党ではなく野党第1党が握っていたことは常識だった。つまり、ここ数年来の衆参両院の選挙における「自民が不人気なのに連勝」「特段の理由が見当たらないのに共産党が連続躍進」といった現象は、野党第1党(民主党)の不人気によってもたらされていたのである。それが、ここに来て民主党支持率が2桁の大台を超えたことで、この流れが大きく変わる可能性が出てきた。

多くの「識者」が、55年体制は崩壊したと主張する中で、当ブログはそれに対し異議を唱えてきた。当ブログの過去記事でも、55年体制は再評価すべきと訴えてきたが、どうやらそれは世間でもかなり「異端」に属するようだ。少なくとも、55年体制を評価し、その復活を望んでいる識者は当ブログの知る限り、内田樹さんくらいのものであろう。

旧社会党が実質的に崩壊して以降、日本では有権者の大きな部分を占めるリベラル勢力の受け皿が全くない状態が続いてきた。旧社会党を支持していたような「自民でも共産でもない層」の中には、もうずいぶん長い間投票所に足を運んでいない人もいるのではないか(極端に言えば、子どもが生まれてから成人するまで一度も投票に行っていない、という人すらこの層の中にかなりいるのではないかというのが当ブログのおおよその推測である)。日本の政治の劣化は、この層の受け皿がないことと表裏一体の形で進行してきた。もしかすると、ここ最近の民主党の急激な「左カーブ」が、長く続いた日本政治の混迷に終止符を打つことになるかもしれない――当ブログが望んできた通りの、野党第1党が社会党から民主党へ装いを新たにした、事実上の55年体制復活という形で。

それは、事実上民主党を「万年野党」に固定化するとともに、政権交代の可能性を捨てること、新たな自民1党支配時代の幕が開くことを意味する。でもそれでいいと当ブログは思う。経産省を若くして退官した宇佐見典也氏が、朝日新聞のインタビューで「僕の経産省同期は40人いたのですが、残っているのは20~25人くらい。民主党政権の誕生前後にけっこう辞めました」と述べているように、日本の中央官僚は自民党政権でなければ仕事ができないタイプが多い。彼らは、自分が自民党以外の政権に仕える日が来るなどと露ほども思っていない。あまりに長すぎた自民1党支配は、結局、日本を政権交代が不可能な政治システムに追い込んでしまったのである。

共産党がみずからの意思で解散を選ぶまでソ連が存続し続けたように、自民党も、みずからの意思で解散を選ばない限り、与党として半永久的に君臨し続けるであろう。民主党は自民党にすり寄って対案路線を目指したところで、「それなら60年の政権与党経験がある自民党でいい」と言われるだけで、自民党に取って代わることは不可能だろう。求められているのはリベラル勢力を結集し、自民党政権が暴走しないよう、しっかりと監視、批判、追及する勢力である。どのみち政権には就かないのだから、「対案なき反対路線」で全く問題はない。

このように考えると、やはり民主党は旧社会党を目指すべきである。55年体制は戦後日本が生んだ最も優れた政治体制であり、その政治的基盤も崩壊していない以上、そこに戻る以外に日本政治の再生の道はない、とする当ブログの過去の結論を変更する必要はないように思う。

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