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〔週刊 本の発見〕『誰も書かなかった統一教会』

2024-09-05 21:47:23 | 書評・本の紹介
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」の書評コーナー「週刊 本の発見」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

まさに空前絶後、ジャーナリスト有田芳生の集大成
『誰も書かなかった統一教会』(有田芳生・著、集英社新書、本体960円、2024年5月)評者:黒鉄好

 半世紀を超える人生を生きた評者だが、これほどまでに身震いする本を読んだのはいつ以来だろうか。私が世を去るとき「あなたの人生で最も驚愕した本を5冊挙げよ」といわれたら多分ランクインすると思う。それほど衝撃的で、空前絶後。人生を賭けて統一教会を追ってきたジャーナリスト有田芳生の、まさに集大成と言っていい。

 第1章「安倍首相が狙われた理由」、第2章「政治への接近」、第3章「政治への侵食」を通読すれば、統一教会と自民党がただならぬ関係であることがわかる。岸信介の時代に自民党に食い込み、殺害された安倍晋三元首相の父・安倍晋太郎元外相をさながら「組織内候補」のように位置付け、自民党総裁に押し上げようとした統一教会の過去が容赦なく暴かれる。岸信介―安倍晋太郎―安倍晋三の三世代は、組織拡大を狙う統一教会にとってまさに「生命線」だったのだ。

 第4章「統一教会の北朝鮮人脈」では、統一教会と一心同体の関係にある政治部門「国際勝共連合」の名にふさわしからぬ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への政治工作の実態が明らかになる。国営以外の経済部門を一切認めないはずの北朝鮮の「我々式社会主義」に風穴を開けるように展開してきた統一教会と北朝鮮との合弁事業の赤裸々な実態に迫っている。南北朝鮮の政治的緊張関係の激化・緩和の度合いを測るバロメーターとして機能してきたのが、軍事休戦ラインに近接する「金剛山」の観光開発事業だが、そこにまで統一教会が関わっていたことを知れば、大半の読者が息を呑むに違いない。

 しかし、驚くにはまだ早い。続く第5章~第7章こそ本書の「本丸」だからである。米国議会下院に設置された「フレイザー委員会」は、統一教会が単なる宗教団体ではなく「文鮮明機関」だとする報告書を公表した。CIA(米中央情報局)のような「秘密工作機関」「謀略組織」だとするフレイザー報告こそが統一教会の実態を正しく表現している。

 統一教会が最も暴かれたくなかった「不都合な真実」は、1987年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局襲撃事件(いわゆる「赤報隊事件」)との関わりである。統一教会がすでに1960年代から1万5千丁もの銃器を調達し、極秘に射撃訓練まで行っていたという驚愕すべき事実を、公安当局の資料を基に明らかにする。1980年代に朝日新聞、朝日ジャーナルが行った徹底的な反統一教会キャンペーンに統一教会が憎悪を募らせていたことも示される。

 赤報隊事件の実行犯が統一教会だと明言する表現は本書のどこにも登場しない。しかし、丹念な取材に基づく事実を積み上げていくことによって読者の想像力を極限までかき立て、字面に書かれていることの何倍も多く表現する有田のジャーナリストとしての真骨頂はここでも遺憾なく発揮されている。

 統一教会は「単なる宗教団体」ではない。秘密工作・武装闘争を含むあらゆる手段を通じて世界を征服し、韓鶴子総裁を「世界連邦王国」の女王に押し立てるための謀略組織である――有田の筆力によってかき立てられた私の「想像力」が示した結論だ。それを擁護し、利用し、野放しにする自民党こそ「世界最悪の危険団体」である。自民党を下野させ、一刻も早く解体しなければ、世界人類はこのカルト団体によって滅ぼされるだろう。

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