学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』を読む

2020-03-10 20:00:00 | 読書感想
今日は朝から雨降りの1日でした。ただでさえ暗い報せが続くのに、余計に気が滅入る…とは申せ、天気は何も悪くなし。庭の植物たちにとってはうれしいことでしょう。そういえば、近所では梅も咲き始めました。近くを通るとほのかな香りがして心持が良くなります。季節は少しずつ進んでいるようですね。

このところ、ノンフィクションの本を読んでいます。先日読んだのは斉藤光政著『戦後最大の偽書事件「東日流外三郡誌」』(集英社文庫)です。この事件は、戦後、青森県のある民家から膨大な数の古文書が発見されたことに始まります。そこにはこれまで知られてこなかった青森を中心とする古代文明の存在が記されていました。それは村史の資料編にも記載されたことで、公的な免罪符を得ることになります。ところが、それらの古文書にはある謎があって、次第に一大事件に発展し…。

事実は小説より奇なり、という言葉がありますが、本書がまさにそう。東奥日報の記者である斉藤光政さんが追いかける「東日流外三郡誌」の謎。様々な関係者への取材で、次第にその謎が明らかになっていきます。それは、もはやミステリー小説のよう。汗をかいた人の文章はやはり面白い。「東日流外三郡誌」に関わった多くの人たちは当初からおかしい、おかしいと思いながらも、なぜかみんな引きずられてしまう。この感覚、何かに似ていますね…。私は夕方から読み始め、夜ご飯もそこそこに、一気に読み終えてしまいました。おすすめの1冊です。