学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

『河北新報のいちばん長い日』を読む

2020-03-26 20:29:46 | 読書感想
新型肺炎の感染者数が東京都でじわりと上昇してきています。こうしたニュースに接すると、心のなかが心配や不安で騒がしくなります。けれど、心を強く持ち、うがい、手洗いなどの予防策を続けて、常に頭脳は冷静で居たいものです。

先日、『河北新報の一番長い日 震災下の地元紙』(文春文庫、2014年)を読みました。河北新報は宮城県を中心に発行する地域ブロック紙。震災の影響で新聞社の生命線であるサーバーが使えなくなり、自社制作を断念せざる得ない状況になったとき、河北新報社社長の一力雅彦氏はきわめて落ち着いた言葉で社員たちを鼓舞しました。地域の人々に長年にわたって支えてもらっていた恩を返すのは今しかない、いかなる状況になっても新聞は発行し続ける、それが読者への恩返しだ。一力の言葉のもと、社員たちはまるで1つの家族のように、食料、ガソリン、用紙の不足や、限られた条件のなかでの最大限の取材に取り組み、新聞を発行していきます。被災者へ情報を届けるという使命感に支えられて。

実家が宮城県である私にとって、河北新報は子供のころから馴染みのある新聞で、今でも帰省したときには必ず買い求めます。個人的な思い入れもあり、私には涙なくして読むことができませんでした。使命感というものが人間を大きく動かす。何度も災害現場に足を運び、被災者たちの心に寄り添いながら貴重な情報を送り続けた記者たちの姿には本当に頭が下がります。