学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

2回目の木版画教室

2007-10-09 21:50:29 | 仕事
今日は、2回目の木版画教室がありました。下絵を完成させて、版木に転写させるのが目標です。私は、初めて木版画にチャレンジする4年生(小規模の学校なので、4、5、6年生が集まって体育館で行っています)を中心に見て周りました。やはり、といいますか、顔がやたらと大きくて、体とのバランスがあっていない生徒がちらほらおり…。また、物を持つ手がなかなかうまくかけず、悩んでいる生徒もいました。

そんな生徒たちの姿を見ると、小学校時代の自分自身のことが思い出されます。今でこそ、美術の指導をしていますが、小学校の時分は絵を描く事が苦手でしょうがありませんでした。今は昔の話。

絵が描ける生徒は、自分でどんどん進んでいくので、あまりかまわず、苦手な生徒を指導していきました。(もちろん、担任の先生もおりますので、講師と私も含めて5人で指導です)胴体は、頭の2つ分を目安にするといいよ、とか、顔がうまくかけない生徒には、目は顔の真ん中より少し上にあるよね、など、指導方法が果たして正しいのかわかりませんが、私なりにわかりやすくを心がけて指導の仕方を行いました。

結果、なかなか面白い下絵が出来上がりました。生徒もうれしかったと思いますが、私もかなりうれしい!(笑)明日は、いよいよ彫りの授業。「刃物は魔物の仲間ですよ!だから扱いには気をつけて」と講師の先生は冗談交じりにおっしゃっていましたが、彫刻刀はご用心ですね!

エドヴァルド・ムンク

2007-10-08 22:10:35 | 展覧会感想
エドヴァルド・ムンクは、ノルウェーの画家です。ムンクといえば、今にも画面から絶叫が聞こえてきそうな《叫び》や、子供から大人へ変わる人間の不安定な心を表現したとされる《思春期》が代表作です。高階秀爾氏は、ムンクの絵画を「かぎりない沈黙のなかで、ひそかに運命の糸が紡がれているという、人間を越えた神秘の世界へのつながりが色濃く見られる」(近代絵画史 下 中公新書)と評しています。これまで、ムンクを評する言葉として「不安」、「絶望」、「嫉妬」などが挙げられますが、高階氏は「神秘」の言葉を当てはめており、大変に興味深いことです。

国立西洋美術館で「ムンク展」を見学しました。この展覧会は、ムンクの「装飾性」をキーワードに企画が練られています。私は、ムンクの露骨なほどの内面表現が、果たして、一見ミスマッチとも思われる「装飾性」とどのように関わるのかに関心がありました。

第1章は「生命のフレーズ」として、自身のアトリエや展覧会において、どのように絵画を展示したのかを紹介しています。ムンクは、絵画の展示に試行錯誤をしたらしく、何度も架け替えを行い、模索を続けたとのこと。「生命のフレーズ」の後は、依頼を受けた個人の邸宅や劇場、大学講堂などの装飾を紹介しています。

ところが、展示を見ていくうちに、私はしだいにムンクの装飾性は理解しにくいと感じるようになりました。これは展覧会の解説が悪いという旨の意味ではなく、そもそも日本人である私に西欧の装飾性は理解できるのかと考えたのです。西欧では、邸宅に絵画を展示する場合、これでもかと壁面の余白を埋めるかの如く、羅列していきます。一方、日本は、たとえば床の間を想像していただければわかりますが、掛け軸を1点掛けて、余白の美を楽しみます。床の間の壁一面に掛け軸は飾りませんね。つまり、装飾の感覚に関しては、西欧と日本では、全くの間逆なのです。私は、意識をしすぎるのかもしれませんが、ムンク(に限らず西欧)の装飾性を、日本人であるが故に、はっきりとつかみ切れないことに、少し歯がゆい思いを抱きました。

さて、本展覧会の代表作《不安》は、無表情で骸骨に衣装を着せただけのような人物たちが正面に向かって立ち、彼らの背後には、どろどろとつかみどころのないゆがんだ空間が存在しています。私が見る限り、この《不安》が描かれた1890年代が、ムンクのピークではなかったでしょうか。なぜなら、のちの劇場や講堂の装飾には、《不安》のような、ときには激しすぎるほどの力が伝わってこないためです。「装飾」のテーマに限定されていたとはいえ、どうしても力を失ってしまったような印象があります。色に関して。心の暗い内面を色で表現する場合、黒、紺、紫を想像しますが、ムンクはそれに加えて赤と黄の組み合わせを好んで用いているようです。その組み合わせが、一種の明かりとなって、暗い内面を照らすような効果が見られます。それが先述した、高階氏が「神秘」の言葉を使った理由の1つなのかもしれません。

この展覧会は、装飾性の問題、不安の心理、死の意味など、様々な問題が凝縮された企画だと思います。高度な宿題を得られる方もいらっしゃるかもしれません。そんなややこしい問題を抜きにしても、ムンクの代表作がこれだけ見られるのも大変に貴重な機会ですので、見学をお勧めします。


気になる展覧会

2007-10-07 21:40:25 | 展覧会感想
ようやく休みが取れました。
久しぶりの休みなので、東京の美術館へ出かける予定です。
気になる展覧会は次のとおり。

①「文豪・夏目漱石-そのこころとまなざし」展
  江戸東京博物館。文学好きの私にとっては、夢のような展覧会です。

②「ムンク展」
  国立西洋美術館。

③「フェルメール《牛乳を注ぐ女》とオランダ風俗画展」
  国立新美術館。フェルメールは見たいのですが、とても混みそうな予感。

まだ決めかねていますが、明日は展覧会の感想を書ければと思っています。

子供の心をつかむには!

2007-10-05 20:33:02 | 仕事
当館では、教育普及の一環として、小学校を対象とした木版画教室を開催しています。これは美術館学芸員と木版画家が、直接小学校を訪れ、作品鑑賞の方法や木版画の指導を行うというものです。

先日、担当者の私が小学生4、5、6年生の前で作品鑑賞の方法について、実際に作品を持って行き、子供たちに本物を見てもらいながら、お話をしました。練習していったとはいえ、生徒の前で話をするのはやはり緊張します。私は、校外学習で来館する生徒への解説は慣れているので、さほど緊張はしまいと思っていましたが、予想に反して、なかなかどうして…。話をしても、あまり生徒の反応はなく、この状況を打開すべく(自分のためにも)、冗談を交えて話をしましたが、それでも反応はなく…。(私の冗談がただ単に面白くなかっただけかもしれません:苦笑)実際に版木にさわって比べてもらったり、パネルを使ってわかりやすく話をしたつもりでしたが、作品鑑賞の方法をうまく伝えられたのか、まったく手ごたえがないまま終わりました。

でも、休み時間に入った後、生徒たちが私や作品の前に集まってきて、「先生の話、面白かった!」と生徒に言われて、とてもうれしくなりました!!反応がなかったというのは、真剣に聞いてくれていたということだったようで…。ちゃんと通じていたようで、ほっと安堵です。

次回から、木版画家による実技指導。私は補助にまわります。みんなに、楽しんで木版画を作ってもらえるよう頑張ります。

若桑みどり氏 追悼

2007-10-04 21:46:52 | その他
今朝、新聞を読んでいると、イタリア美術史の研究で名高い若桑みどり氏が逝去されたとの記事を目にしました。私は9月17日のブログで若桑氏の著書「女性画家列伝」についてふれたばかりでしたので、大変残念でなりません。

若桑氏と私は、全く面識がありません。9月のブログを書くときに、若桑氏の著書を参考にさせていただいただけです。けれど、このニュースを知ったとたん、何かごく親しい先輩を失ってしまったような悲しい心持がします。著者と読者の関係は、それほどまでに感情に響いてくるのでしょうか。

「女性画家列伝」は岩波新書から出版されましたが、書店ではみかけないので、もしかすると今は絶版になっているのかもしれません。(私は古書店で購入しました)皆様、機会がありましたら、ぜひ図書館で一読して見て下さい。

若桑氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

無題

2007-10-03 21:58:53 | その他
何かを書かねばならない、と思っても、なかなか筆が進まない日があります。まさに今日がそんな日です。文章を書くということは、文をゼロから組み立てるのですから、それはある程度の労力を要します。ですから、小説家の労力というものは並大抵のものではないことがわかります。

ショーン・コネリー主演の「小説家を見つけたら」のDVDを見ました。物語の内容は割愛するとして、この映画のなかで、文章は何をもって書くべきなのかをショーン・コネリーが青年にアドバイスする場面があります。それによれば、文章はハートで書く、のだそうです。ありきたりのような気もしますが、自分の心に感じたことをストレートに用紙にぶつけて、初校において徐々に文章を整理するというやり方のようです。実際の小説家はどうなのでしょう?

ただ言えることは、サマセット・モームも村上春樹氏も述べていることですが、小説家にだって文章を書きたくないときはあるけれど、そんなときも机に向かって少しずつでいいから前進させることが大切だそうです。毎日の積み重ねが大事なのですね。小説家に限らず、人生で何事かを成し遂げるためには、それが一番の近道なのかもしれません。

結局、最後までまとまらない文章になりました。少々、睡魔に襲われているので、ご了承ください。それではまた明日にお会いしましょう。

パソコン復活!

2007-10-02 16:46:33 | その他
なんと!!予定よりも早くパソコンが直りました!!これでブログが更新できます!ご迷惑をおかけしました。ちなみに、パソコンは予定よりも早く直りましたが、修理代はばっちり5万円取られました(泣)5万円あれば、どこか旅行へいけましたね、残念!!

ちなみに、今日の午前中は木版画の指導に行き、午後からは休暇です。結果報告は明日にでも。

明日から再びブログを更新します。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

近況報告

2007-10-01 19:09:39 | Weblog
さて、一週間ぶりの更新です。
みなさん、お変わりありませんでしょうか。

私のほうでは、一応パソコンの修理見積りが参りまして、なんと5万円かかるとのこと…。修理にしては高いし、かといって買い換えるほど高くはないし、なんとも言えない値段ですね。修理が終わるまで2週間ほどかかるそうです。しばらくは一週間ごとの更新になりそうですので、どうぞご了承ください。

さて、今日は美術館は休館ですので、本来であれば休みのはずなのですが、展示替えのために出勤しておりました。展示替え点数は30点ほどでしたので、3時ぐらいで終了し、あとは明日の仕事の段取りを組んでいました。明日は一年ぶりの木版画教室です。小学校へ行き、生徒たちにまずは作品鑑賞の方法を楽しく?説明してくる予定です。絵をどういう風に見たら楽しめるか、そして自分が絵を描くときには何を意識すると良いのか、わかりやすくを心がけて頑張ってきます。

いよいよ10月になりました。衣替えで、私もスーツの上を羽織っての出勤です。これからだんだんと寒くなりますね。季節の変わり目ですから、みなさまお風邪などひかれませんよう、お過ごし下さいね。

それでは次回10月8日にお会いしましょう。