(1)原発再稼働第1号は伊方原発だ。・・・・そうマスコミは観測気球を上げる。
伊方原発はしかし、福島第一原発事故後に初めて再稼働した大飯原発とは、ハッキリ違う一点がある。
大飯原発では、原発敷地内における活断層の有無が争われた。
伊方原発は、その前面海域6kmに日本最大級の活断層(中央構造線)が走っていることに争いはない。四国電力さえ認めている。
しかも、伊方原発沖の活断層は、6,200年前、4,000年前、2,000年前に動いている。ほぼ2,000年周期で活動する断層だ。前回から2,000年を経た今、大震災発生は現実味を帯びている。【岡村眞・高知大学特任教授】
(2)動く活断層の距離が長ければ長いほど、解放されるエネルギーはより大きくなる。よって、地震の規模も大きくなる。
3・11の「東北地方太平洋沖地震」の場合、およそ南北400km、幅200kmの断層が平均15~20m、最大で30m近くずれた。【独立行政法人「産業技術総合研究所」】
四国電力は、活断層の長さ54kmを基本資源モデルとしている。かつ、不確かさ考慮モデルとして69kmと130kmを想定し、いずれの場合でも伊方原発は地震に耐えられる、と説明している。しかし、原子力規制委員会は、東北地方太平洋沖地震より長い480kmを基本モデルとするよう求めている。見解に大きな違いがある。とにかく、四国電力を始めとする電力会社は、地震の影響をいかに小さく見積もるかに全力をつくし、さまざまなレトリックを駆使している。【長沢啓行・大阪府立大学名誉教授】
(3)四国電力は、
(a)かつて「中央構造線は、あくまで地質的な境界線で、活断層ではない」と主張していた。
(b)1996年に岡村教授らの調査結果が報道されると、「活断層は認識している」とウソついた。
(c)1997年8月、突然、活断層として計算しても耐震設計に余裕がある、と発表した。
四国電力は要するに、敷地内前面海域(中央構造線の一部)が1万年前以降に活動したA級活断層であることを認識していないまま、設計・建設している。
①1号機(原子炉設置許可 1972年)
②2号機(原子炉設置許可 1977年)
③3号機(原子炉設置許可 1986年)
(4)政府「地震調査研究推進本部」(本部長:文部科学大臣)の「地震調査研究推進本部」の地震調査委員会は、2011年2月18日、中央構造線について、次のように発表した。
(a)過去の活動時期の遅疑などから、全体が6つの区間に分けられる。
(b)断層帯全体が同時に活動する可能性は否定できない。同時活動の場合、マグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生する(推定)。
(c)本断層の西端はさらに西に延び、別府湾から大分市内に分布する別府-万年山断層帯に連続している可能性がある。
(5)原子力規制委員会の指導と四国電力の反応は次のようなものだ。
(a)7月8日、四国電力、3号機の再稼働を申請。
(b)7月23日(第2回審査会合)、規制委は、「伊方原発の基準値震動として54kmを設定している、複数のもっと長い部分での連動を考慮したものを基本ケースとされたい」。
(c)8月28日(第14回審査会合)、四国電力は、「基本ケースの長さ特定は困難。解析中だが、今回には間に合わない」。
(d)10月30日(第39回審査会合)、四国電力は、驚くべき検証結果を提出。「紀伊半島から続く中央構造線と大分県側にある別府-万年山断層帯の計480kmが連動して動く事例と、敷地前面海域の活断層54kmが動く事例を比較した結果、地震動に大きな変化はなかった」
「破壊伝播速度」(断層面の破壊されていく速さ)を遅く想定すれば、地震波が重なり合わないため、地震動も大きくならない。地震動を小さくする手口の一つだ。【長沢名誉教授】
規制委もさすがに疑問を提示した。「破壊伝播速度」の産出に使用したのが1976年の知見だったからだ。もっと速い事例が観測されている、という規制委の指摘に、「設計に持ち込むのは難しい」と四国電力は回答した。規制委は重ねて、最新の知見による検討を求め、四国電力は「持ち帰って検討する」と回答した。
(e)10月31日(記者会見)、四国電力は、「年内再稼働は難しい」。
再稼働できる、と思うほうがどうかしている。
(6)規制委は「化学的」にしっかりした審査をしているか?
活断層の長さについては、短く見積もられないようにしているようだ。ただ、地震規模の計算において、電力会社は北米での地震データを中心に使い、過小評価している。過去20年間の日本の地震データで計算すると、原発の耐震設計を超える事例が出てくる可能性がある。規制委が、そのゴマカシを指摘しないのはおかしい。【長沢名誉教授】
現代地震学は、結果はよく解析できるようになったが、起きる前は活断層がどの長さで動くかを含めて何も分からない。しかも、四国電力は、地震動評価にあたり条件設定を組み合わすときに「最悪」設定から少なくとも1つ抜いて行っている。そもそも、断層の動く長さが54kmと480kmとでは、地震の規模がまったく違う。【岡村特任教授】
規制委には、旧・原子力安全・保安院の職員が多い。7月30日(第4回審査会合)では、古作泰雄・原子力規制庁安全審査官が、「すみません、私が説明するのもヘンなんですけど・・・・」と、四国電力に助け船を出す場面があった。馴れ合い体質は、一夕一朝では変わらない。
(7)伊方原発で苛酷事故が起きた場合、汚染は中国・四国にとどまらず、汚染物質が大阪など関西大都市圏を直撃する可能性がある。
伊方原発は、
(a)マグニチュード8.0以上の「巨大な地sん」を起こす可能性がある中央構造線の近くにあり、
(b)「耐震補強をしたわけではなく、机上の計算の結果」(2012年1月13日付け四国電力回答)でさえ、耐震性が上がり続けている。
再稼働は、異常としか言いようがない。
□伊田浩之(編集部)「巨大地震が迫る伊方原発と再稼働」(「週刊金曜日」2013年11月29日号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~」
伊方原発はしかし、福島第一原発事故後に初めて再稼働した大飯原発とは、ハッキリ違う一点がある。
大飯原発では、原発敷地内における活断層の有無が争われた。
伊方原発は、その前面海域6kmに日本最大級の活断層(中央構造線)が走っていることに争いはない。四国電力さえ認めている。
しかも、伊方原発沖の活断層は、6,200年前、4,000年前、2,000年前に動いている。ほぼ2,000年周期で活動する断層だ。前回から2,000年を経た今、大震災発生は現実味を帯びている。【岡村眞・高知大学特任教授】
(2)動く活断層の距離が長ければ長いほど、解放されるエネルギーはより大きくなる。よって、地震の規模も大きくなる。
3・11の「東北地方太平洋沖地震」の場合、およそ南北400km、幅200kmの断層が平均15~20m、最大で30m近くずれた。【独立行政法人「産業技術総合研究所」】
四国電力は、活断層の長さ54kmを基本資源モデルとしている。かつ、不確かさ考慮モデルとして69kmと130kmを想定し、いずれの場合でも伊方原発は地震に耐えられる、と説明している。しかし、原子力規制委員会は、東北地方太平洋沖地震より長い480kmを基本モデルとするよう求めている。見解に大きな違いがある。とにかく、四国電力を始めとする電力会社は、地震の影響をいかに小さく見積もるかに全力をつくし、さまざまなレトリックを駆使している。【長沢啓行・大阪府立大学名誉教授】
(3)四国電力は、
(a)かつて「中央構造線は、あくまで地質的な境界線で、活断層ではない」と主張していた。
(b)1996年に岡村教授らの調査結果が報道されると、「活断層は認識している」とウソついた。
(c)1997年8月、突然、活断層として計算しても耐震設計に余裕がある、と発表した。
四国電力は要するに、敷地内前面海域(中央構造線の一部)が1万年前以降に活動したA級活断層であることを認識していないまま、設計・建設している。
①1号機(原子炉設置許可 1972年)
②2号機(原子炉設置許可 1977年)
③3号機(原子炉設置許可 1986年)
(4)政府「地震調査研究推進本部」(本部長:文部科学大臣)の「地震調査研究推進本部」の地震調査委員会は、2011年2月18日、中央構造線について、次のように発表した。
(a)過去の活動時期の遅疑などから、全体が6つの区間に分けられる。
(b)断層帯全体が同時に活動する可能性は否定できない。同時活動の場合、マグニチュード8.0程度もしくはそれ以上の地震が発生する(推定)。
(c)本断層の西端はさらに西に延び、別府湾から大分市内に分布する別府-万年山断層帯に連続している可能性がある。
(5)原子力規制委員会の指導と四国電力の反応は次のようなものだ。
(a)7月8日、四国電力、3号機の再稼働を申請。
(b)7月23日(第2回審査会合)、規制委は、「伊方原発の基準値震動として54kmを設定している、複数のもっと長い部分での連動を考慮したものを基本ケースとされたい」。
(c)8月28日(第14回審査会合)、四国電力は、「基本ケースの長さ特定は困難。解析中だが、今回には間に合わない」。
(d)10月30日(第39回審査会合)、四国電力は、驚くべき検証結果を提出。「紀伊半島から続く中央構造線と大分県側にある別府-万年山断層帯の計480kmが連動して動く事例と、敷地前面海域の活断層54kmが動く事例を比較した結果、地震動に大きな変化はなかった」
「破壊伝播速度」(断層面の破壊されていく速さ)を遅く想定すれば、地震波が重なり合わないため、地震動も大きくならない。地震動を小さくする手口の一つだ。【長沢名誉教授】
規制委もさすがに疑問を提示した。「破壊伝播速度」の産出に使用したのが1976年の知見だったからだ。もっと速い事例が観測されている、という規制委の指摘に、「設計に持ち込むのは難しい」と四国電力は回答した。規制委は重ねて、最新の知見による検討を求め、四国電力は「持ち帰って検討する」と回答した。
(e)10月31日(記者会見)、四国電力は、「年内再稼働は難しい」。
再稼働できる、と思うほうがどうかしている。
(6)規制委は「化学的」にしっかりした審査をしているか?
活断層の長さについては、短く見積もられないようにしているようだ。ただ、地震規模の計算において、電力会社は北米での地震データを中心に使い、過小評価している。過去20年間の日本の地震データで計算すると、原発の耐震設計を超える事例が出てくる可能性がある。規制委が、そのゴマカシを指摘しないのはおかしい。【長沢名誉教授】
現代地震学は、結果はよく解析できるようになったが、起きる前は活断層がどの長さで動くかを含めて何も分からない。しかも、四国電力は、地震動評価にあたり条件設定を組み合わすときに「最悪」設定から少なくとも1つ抜いて行っている。そもそも、断層の動く長さが54kmと480kmとでは、地震の規模がまったく違う。【岡村特任教授】
規制委には、旧・原子力安全・保安院の職員が多い。7月30日(第4回審査会合)では、古作泰雄・原子力規制庁安全審査官が、「すみません、私が説明するのもヘンなんですけど・・・・」と、四国電力に助け船を出す場面があった。馴れ合い体質は、一夕一朝では変わらない。
(7)伊方原発で苛酷事故が起きた場合、汚染は中国・四国にとどまらず、汚染物質が大阪など関西大都市圏を直撃する可能性がある。
伊方原発は、
(a)マグニチュード8.0以上の「巨大な地sん」を起こす可能性がある中央構造線の近くにあり、
(b)「耐震補強をしたわけではなく、机上の計算の結果」(2012年1月13日付け四国電力回答)でさえ、耐震性が上がり続けている。
再稼働は、異常としか言いようがない。
□伊田浩之(編集部)「巨大地震が迫る伊方原発と再稼働」(「週刊金曜日」2013年11月29日号)
↓クリック、プリーズ。↓



【参考】
「【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~」