語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【人物】二転三転した釈明から分かる資質 ~猪瀬直樹~

2013年12月08日 | 社会
 (1)猪瀬直樹・東京都知事は、「イスラム諸国は互いにけんかばかりしている」という暴言を吐き、日本をテロ誘発の危険にさらした【注1】。
 その後、2020年夏季五輪が東京に決定したため、猪瀬の暴言に対する責任追及はウヤムヤになってしまった。
 このたび、猪瀬が公人としての資格を欠くことを示すスキャンダルが発覚した。医療法人「徳州会」から猪瀬が5,000万円を「借り入れ」ていた問題だ。

 (2)猪瀬は、
  ・11月21日(朝日新聞の取材に対して)
    「私はまったく関知しない」「知らないと言ったら知らない」などと全面的に関与を否定した。
  ・11月22日13時過ぎ(都庁前の記者団の取材に対して)
    記者:徳田虎雄氏から5,000万円の資金提供を受けていたという話について、資金提供を受けたのかどうかも含めて事実関係について聞きたい。
    猪瀬:昨年の11月くらいに、石原前知事が突然辞めるということなので、ということで、あいさつ回りにあちこち行きました。そのときに徳田さんの方にも行きました。
    記者:あいさつ回りという趣旨か、資金提供のお願いをしたという趣旨か。
    猪瀬:いろんなところに行きましたので、徳田さんのところでは資金提供を後日、という形になってまいりました。
    記者:知事からお願いしたのか。
    猪瀬:資金提供という形で応援してもらうことになったということです。

 (3)猪瀬は、ここで、5,000万円が選挙応援のためのカネであったことをハッキリ認めている。しかし、直後に前言を翻した。
  ・11月22日15時(記者会見)・・・・「あくまで個人としての借り入れ」「選挙とは関係ない」「全く手を付けずに返した」【注2】
 この瞬間、猪瀬は公人としての資格を失った。

 (4)少なくとも13時の段階までは、猪瀬は、東京都民、日本国民を念頭に置いて釈明していた。
 しかし、15時の会見からは、法律専門家の助言を踏まえ、東京地方検察庁特別捜査部だけを念頭において、いかにすれば刑事責任の追及を免れるか、ということだけを考えて発言している【注3】。
 そもそも、5,000万円の現金を受領していて、それが記憶にない、などということはあり得ない。
 当初、朝日紙の取材に対して、猪瀬は「知らない」と答えた。朝日新聞社会部が裏を取らずにかかる取材を行うことはない、という想像力が働かなかっただけでも、インテリジェンス能力が基準に達していない。

 (5)発言が二転三転する【注4】のも、猪瀬がパニックを起こしているからだ。カネの問題をめぐる自らのスキャンダルについて、危機管理すらできない。
 こうした小心者の猪瀬が、東京都の危機管理ができるはずはない。
 これ以上悪あがきをしても、都民の信頼を失うだけだ。
 即時辞任が傷口の拡大を防ぐ唯一の方策だ。

 【注1】「【社会】猪瀬直樹東京都知事の「イスラム侮辱」問題 ~国益と国民益を毀損~
 【注2】三井環・元大阪高検公安部長によれば、徳州会関係者が「あの借用証は会見前日に書いたもので、猪瀬から『個人の借り入れだと口裏合わせてくれ』『五輪までは知事をやりたいんだ』と何度も電話があり、徳田毅は怯えきっている」と情報提供した。【記事「さらば、猪瀬直樹 徳州会から5000万円の「お・も・て・な・し」」(「週刊現代」2013年12月14日号)】
 【注3】ノンフィクション・ライターらしく「ファクト(事実)とエビデンス(証拠)を重ねる」が猪瀬の口癖だった。今や、その面影はない。
 【注4】本文に記した以外に、猪瀬は、当初、「妻と自分の2人しか借金は知らない」と説明したが、後に「借用書は秘書が管理していた」と説明を一変させている。【前掲「週刊現代」誌】

□佐藤優「二転三転した釈明から分かる都知事の資質 ~佐藤優の人間観察 第48回~」(「週刊現代」2013年12月14日号)
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 【参考】
【買収】猪瀬都知事、「個人の借り入れ」で済む話か ~徳州会から5,000万円~
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