語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】10万人集会とウォール街占拠 ~メディアのあり方~

2012年08月16日 | 震災・原発事故
 政府のつまらぬ弥縫策には騙されない地点に、「霞が関占拠」の人々は立つ。
 ウォール街占拠の遠いこだまが、確実に届いている。

 世界金融の中心、ウォール街を若者が占拠しはじめたのは、2011年9月17日だ。東日本大震災と福島第一原発事故の半年後のことだ。日本でも、同時並行的に若者たちが音楽を演奏しながら街頭に繰り出した。
 Occupy Wall Street の合い言葉は、「“1%”の利益を追求するために“99%”が犠牲になっている」だ。集まってきた人々は、「われわれ99%」という自己意識を持っていた。
 「われわれ99%」というフレーズは、あっという間に世界に広がった。彼らが目指しているのは、「水平につながる直接民主主義」だ。

 その始まりからウォール街占拠をずっとフォローしてきたのは、お膝元の独立系メディア「デモクラシー・ナウ!」だ。
 新しい動きが生じたときのメディアのあり方を考える上で、「デモクラシー・ナウ!」の一連の報道は参考になる。

 昨年4月7日、福島第一原発事故から1ヵ月後、「デモクラシー・ナウ!」は、リスク分析の事例として、米国および世界中に起こりつつある金融危機を取り上げた。ゲストは、ジョゼフ・スティグリッツ(ノーベル経済学賞受賞者)だ。
 聞き手のエイミー・グッドマンは切り出した。「日本の原子炉のメルトダウンは、金融派生商品CDSのメルトダウンだ」
 スティグリッツいわく、「ほとんど起きないとされ、発生確率の低い事象について金融業界の人々が言うには、今回のは千年に一度の大暴落だ。・・・・原子力業界は、リスクはまったくない、心配ない、と言ったほうが有利だ。金融業界も同じだ」。

 「デモクラシー・ナウ!」は、ウォール街占拠を報道し続け、同時にそれを世界的な出来事と結びつけていった。
 スティグリッツが語る主題は、むろん米国の金融危機だが、そのために用いられる比喩は、ただの比喩にとどまらず、リアリティをもって迫ってくる。ジャーナリズムが国境を超える契機は、世界の同時性を前提としている。

 スティグリッツは続けた。「原子力発電は営利事業として決して成り立たない。政府の保護を前提としてのみ存在してきた。私たちの税金で支えられている。日本でも同じことをしてきた。その結果がこれだ。社会全体が、膨大なコストを被ることになる。米国でも起こり得る」

 9・11後の米国で、メディアが国家に総動員されていったときに、「デモクラシー・ナウ!」はブレることなく米国の戦争を批判し続けた。
 3・11後の日本のメディアに期待されるのは、目の前で起きている原発惨事をナショナルな視点から解放することだ。

 以上、神保太郎「メディア批評第57回」(「世界」2012年9月号)の「(1)情報は「拡大」から「拡散」の時代に」に拠る。

 【参考】
【原発】「さようなら原発」17万人集会の記録
【原発】情報は「拡大」から「拡散」の時代に ~金曜日の人々~
【原発】遅れてやってきたマスメディアの人々 ~NHKとテレビ朝日~

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【原発】遅れてやってきたマスメディアの人々 ~NHKとテレビ朝日~

2012年08月15日 | 震災・原発事故
(1)NHK
 7月16日、炎天下に「さようなら原発10万人集会」が17万人の人々を集めた。その場所は、代々木公園。NHKは目と鼻の先にある。
 この日、NHKの報道はお粗末だった。朝から、日中の猛暑を警告する字幕が画面を囲み、昼は熱中症関連ニュースが延々と続いた。あたかもデモに参加するな、と警告するがごとき熱の入れようだった(「抑制効果」狙い)。後半にヘリコプターの空影映像が入ったが、映っていたのは、一本の川筋だけ。女性がそこで溺れた、という(死亡事故ではなかった)。
 「10万人集会」は、NHKにとっては単なる騒音でしかなかったらしい。

 「10万人集会」主催者は、「脱原発1,000万人署名」を呼びかけている。
 6月時点で754万筆の署名が集まり、一部を藤村官房長官に提出した【注】。
 その翌週、野田首相は大飯原発再稼働を決めた。

 それを聞いた大江健三郎(呼びかけ人の一人)は中野重治『春さきの風』にある「わたしらは侮辱のなかに生きています」を引用して語りかけた。
 もう十数万にものぼる私らは侮辱のなかで生きてゆくほかないのか。
 あるいは、もっと悪く、次の原発の大爆発によって侮辱のなかで死ぬほかないのか・・・・。

 その夜のNHKニュースは、19時も21時も、1分30秒から40秒程度、簡単に流しただけだった。

 報道は、本来現場に立つ記者の取材に基づくものでなければならない。
 NHkは、前もって目の前の集会を大きく扱わないという方針を立て、それに唯唯諾諾と従う記者たちがいた。・・・・そう説明する以外、かかる無内容な放送を説明することはできない。

(2)民放
 他方、テレビ朝日は脱原発の立場から活発な報道を行った。昼間からなんども現場中継を入れ、結果的に集会の「拡大効果」の役割を果たした。
 しかし、他はおしなべて低調だった。

 7月16日のフジテレビ「FNNスーパーニュース」は、言語のクラッシュを見せつけた。
 「10万人集会」の映像と、スタジオの野田首相のワンショットが分割画面に映し出されている。
 安藤優子キャスター、野田首相に尋ねていわく、「毎週、金曜日にも反原発の集会が開かれている。こうした声にどう答えるのか」。
 野田首相、「この問題は国論を二分するテーマになっていると考えている。さまざまな声にしっかり耳を傾けて行きたい」。
 これは奇妙な答だ。国論は二分されていない。どのような統計をとっても、大半が原発に反対している。
 だが、安藤キャスターは「ゑ? 二分ではありませんよ」などとは突っ込まない。
 とはいえ、続いて、放射能汚染された地域からの声を背後に、安藤キャスターは詰め寄る。「もう形ある未来を提示すべき時が来ているのではないか。戻れないかもしれない、戻れるかもしれないというのが一番辛いんじゃないですか」
 野田首相、「住民の皆さまに情報をしっかり開示し、見通しをなるべく早く立てられるようにすることが責任だと思う」。
 質問をちっとも踏まえていない答だ。こんな日に、目の前で起きていることの意味さえ掴めないまま、一国の宰相がテレビ局で涼んでいてよいのか。

 夜のテレビ朝日「報道ステーション」は、「やらせ」続発の国の意見聴取会を取り上げながら、2030年の原発比率として政府が誘導しようとしている「15%」は、事実上の原発継続になる、と指摘した。「40年で廃炉の原則を適用すれば、原発を増設せずにそのまま達成できる。しかし、これは80%という高い稼働率を前提としたもので、より現実的な70%の稼働率の場合には、原発2基分を新設する必要がある。つまり、脱原発を推進するわけではない」うんぬん。
 原発稼働率を過去に遡れば、80%台を維持していたのは、1995年から2002年まで。2002年に原発検査記録の改竄問題で東電の全原発が停止し、稼働率は急速に低下し、その後は50%から70%台を推移した。福島第一原発事故後、今年5月7日に日本中の原発が定期検査などで停止した。
 しかし、わずか1ヵ月半で再稼働が強行された。そのあとに、いわがわしい意見聴取会が設定された。なにかが壊れているとしか言いようがない。

 【注】鎌田慧によれば、藤村官房長官に提出したのは780万筆。【「【原発】「さようなら原発」17万人集会の記録」】

 以上、神保太郎「メディア批評第57回」(「世界」2012年9月号)の「(1)情報は「拡大」から「拡散」の時代に」に拠る。

 【参考】
【原発】情報は「拡大」から「拡散」の時代に ~金曜日の人々~


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【原発】情報は「拡大」から「拡散」の時代に ~金曜日の人々~

2012年08月14日 | 震災・原発事故
 今年3月11日、国会議事堂を“人間の鎖”が取り囲んだ。
 4月から毎週、首相官邸前で大飯原発再稼働に反対する声を上げてきた(始めは300人程度の集まり)。
 6月15日(金)以降、つまり大飯原発3号機の再稼働が決定的になった時以降、参加者が1万人台に膨れ上がった。
 非常時に不可欠の備えをすべて先送りにしたまま、夏の電力不足と電気料金値上げを煽り、ついには「国民の生活を守るため」、「私の責任」などと無表情に断言した首相の鈍感さに人々の怒りが爆発したのだ。

 この数ヶ月、
  (a)未来のため脱原発を諦めない人々
  (b)その声の傍らを黙って通り過ぎる大手メディアの記者たち
という構図が際だった。その間、
  (c)ツイッターやFacebookは、ひたすら情報の「拡散」を続けていた。

 6月29日(金)、集会参加者は一気に10万人台に急増。7月16日に予定されていた「さようなら原発10万人集会」が人々の意識を後押ししていたのかもしれない。「新しい社会体への自己組織化」(A・ネグリ)という流れだ。

  車道にまではみ出した官邸前集会の参加者
  どこまでも続くデモの隊列

 これはヘリコプターをチャーターするマスメディアが関心を示さなければ見せてもらえない贅沢品だ。
 が、参加者自身がすばやい決断で、寄付を募って自前の空影を実現してしまった(プロジェクト名「正しい報道ヘリの会」)。

 マスメディアの一部もヘリを飛ばした結果、霞が関・永田町一帯を埋め尽くす群衆が可視化された。
 すると、次の金曜日(7月6日)には一転して警察が本格的な集会規制に乗り出した。当日、国会議事堂前で電車を降りようとした人々が、出口を1ヵ所に絞られ、地下道に溢れた。
 最後まで地上に出られなくて過剰警備に怒りの声をあげた人々は、理解した。マスメディアの登場がデモの「拡大」を促し、それが逆に警察の警備強化をも促す、という相乗・相殺の効果を。

 マスメディアは情報を「拡大」させるが、“金曜日の人々”はそれらを「拡散」させる。
 事実を「拡散」するのは、ツイッター、Facebookだ。地下道の様子は、居合わせた人のデジカメに治められ、YouTubeにアップされ、陽の目を見た。隠しても執拗に自らを可視化させる地下道の人々。

 昨秋から始まった経済産業省横での福島の女性たちの座り込みは、命を生み、守っていくという運動として持続し、テント撤去の危機をなんども乗り越えてきた。そこで培われた精神が、人々をつなぐムーブメントとなって各地に拡散し、現地おおい町に飛び火し、延べ10万人という激しい抗議行動に結びついた。
 ネット上で、「ウォール街占拠」と「霞が関占拠」が重なってくる。

 以上、神保太郎「メディア批評第57回」(「世界」2012年9月号)の「(1)情報は「拡大」から「拡散」の時代に」に拠る。

 【参考】
【原発】「さようなら原発」17万人集会の記録
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【原発】「さようなら原発」17万人集会の記録

2012年08月13日 | 震災・原発事故
 7月16日、東京の代々木公園で開催された「さようなら原発 10万人集会」(主催:「さようなら原発」1000万人署名市民の会)における登壇者スピーチのさわり。

●鎌田慧「主権ふみにじる原発・政権にノーを」
 全国のあらゆる人たちの力を振りしぼって集めた780万筆の署名を6月15日に首相官邸に持参し、藤村官房長官に提出した。しかし、その次の日、野田政権は大飯原発再稼働を決めた。こんな政府があるか。主権者の声を、民意を、汗と涙によって集めた署名を、踏みつぶして平然としている。このような内閣に、私たちはノーを突きつけたい。

●奈良美智「自然なこころのおもむきを信じて」
 僕が自然に描いた絵や、自然につくったものを、自然にこういう行動を起こした一般の人たち、ふつうのサラリーマンの方や家族の方、学生や小さい子、お年寄りの方。そんな方々が、僕がむかし描いた絵をどこかから探し出してきて、デモに使っていいか、と言ったので、「どうぞ使ってください」と。そういう形で僕は僕なりに参加してきたと思います。

●坂本龍一「福島のあとに沈黙しているのは野蛮だ」
 言ってみれば、「たかが電気」だ。たかが電気のために、なぜ命を危険にさらさねばならないのか。
 たかが電気のために、この美しい日本を、そして国の未来である子どもたちの命を危険にさらすようなことはするべきではない。お金より命だ。経済より生命だ。子どもを守ろう。日本の国土を守ろう。

●内橋克人「国民的合意なき原発よ、さようなら」
 「対案なければ反対なし」というのは、常に政府、官僚が、主権者である国民、市民を脅し、口を封じさせるための常套句だった。ここを見抜かねばならない。核心となる情報を隠しておいて、「お上の言うことに楯突くとはけしからん、対案を出せ」、こういう仕組みだ。私は承伏できない。人々の魂に根づく平衡感覚とか鋭敏な危険察知能両区。あるいは、およそ命あるものに必ず備わっている畏怖心。そういったものこそが、安心社会の礎であるはずだ。 

●大江健三郎「侮辱のなかで生きることをやめよう」
 原発大事故のなお続くなかで、大飯原発を再稼働させた政府に、さらに再稼働をひろげていこうとする政府に、私はいま自分らが侮辱されていると感じる。私らは侮辱のなかに生きている。いま、まさにその思いを抱いて私らはここに集まっている。私ら十数万人は、このまま侮辱のなかに生きてゆくのか? あるいはもっと悪く、このまま次の原発事故によって、侮辱のなかに殺されるのか? そういうことがあってはならない。そういう体制は打ち破らなければならない。私らは政府のもくろみを打ち倒さねばならない。それは確実に打ち倒しうるし、私らは原発体制の恐怖と侮辱のそとに出て、自由に生きていくことができるはずだ。

●落合恵子「いのちから、ほんとうの民主主義へ」
 野田政権に訊く。あなたたちが「国民」というとき、いったい誰を見ているのか。今日ここにいるのが「国民」であり、市民なのだ。

●澤地久枝「主権を、未来を、とりもどすために」
 日本の政治は、日本人からふるさとを奪った。福島の人たちはふるさとへ帰っていきたいけれど、帰っていけない。放射能に汚染されたふるさとへ帰るということは、文字どおり死を意味している。

●瀬戸内寂聴「言い分をめげずに口に出しつづける」
 いま私たちが毎日何不自由なく暮らしていけるのは、ぜんぶ過去の人たちが、さまざまな苦労をして、さまざまな反逆をして、人間の自由を守ってきたからこそなのだ。こうして集まっても政府の方針を変えることになるか、90年生きてきたから非常に懐疑的だが、それでも私たちは集まらなければならない。税金を払った日本の国民だからだ。政治に対して言い分があれば、口に出して言っていいのだ。体に表して行動していいのだ。

●広瀬隆「いまこそ電力会社と直接交渉を」
 大飯原発再稼働の真の理由は、電力不足ではなく、11基の原発が廃炉になれば関電の純資産のうち半分が吹き飛ぶからだ。経営破綻を避けるため、再稼働を強行したのだ。では、どう解決するか。その一つは、今日の集まりの呼び掛け人と関電とが同じテーブルについて取引することだ。具体的には電気料金値上げになるが、皆さんから怒りの声があがるかもしれないが、私たちは賭をしているときではない中小企業に影響が出る懸念があるが、影響が出ない仕組みを考えていく。国民と電力会社とが直接交渉すること。日本政府と腐りきった官僚は間に入れないこと。

●中山嶌演(明通寺住職)「危機のゆえんを問いなおす」
 現代の核文明、原発分明が要請している倫理は、たんに私たち一人一人の、個人対個人のモラルだけでなく、広範囲におよぶ配慮と責任、判断と実践が要請されているのではないか。 
 ビッグピンチに私たちは直面している。そのビッグピンチの中身やゆえんを、広く深く見極め、とらえ直すこと。これが根本的、全体的にこのビッグピンチを変えていく、ビッグチャンスに転化する出発点になると思っている。

●武藤類子(福島原発告訴団団長)「かしこく、つながりあう」
 明らかにされていく事実のなかで、さらにがっかりすることや、驚き、あきれることも、たくさんあった。数々の分断は、私たちをバラバラにしようとした。暗闇のなかで、翻弄され、傷つき、混乱しながら、それでもつながり続け、ひとりひとりが最善を尽くしてきたと思う。

 以上、編集部「「さようなら原発」17万人集会の記録」(「世界」2012年9月号)に拠る。
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【原発】福島刑務所受刑者に放射能漏れ賠償金、総額1億3,600万円

2012年08月12日 | 震災・原発事故
 福島刑務所の受刑者80人余が賠償請求を行い、一律8万円の賠償金が支払われた。東電は受刑者へ周知しなかったが、一部受刑者が所内で閲覧可能な新聞やテレビで賠償の情報を知り、東電から書類を郵送で取り寄せ、賠償を請求。現金8万円が支払われると、口コミで広がり、80人超の受刑者が次々と請求した。
 昨年3月11日の震災当時、女性用の支所も含めて計約1,700人が収監されていた。全受刑者が請求した場合、賠償額は約1億3,600万円に上る。
 なお、住民賠償は、政府が指定した警戒区域、計画的避難区域などを除く福島県内23市町村の全住民が対象。自主避難したかどうかを問わず、8万円が支払われる。

 (1)<賠償を受ける権利は全受刑者にある。東電と刑務所は、受刑者に賠償請求の方法を伝えるべきではないか>【海渡雄一・弁護士/NPO法人監獄人権センター副代表】
 (2)<介護や仕事、学校の都合で避難せずやむを得ずとどまった住民と、移動の自由のない受刑者を同列に扱い、同額の賠償をすることに違和感を覚える>【奥村丈二・中央大法科大学院教授(刑事法)/元最高検検事】

 以上、記事「東電、受刑者にも一律8万円賠償 福島刑務所の80人超…全員なら1億3600万円に」【(msn産経ニュース 2012.7.4 01:30 )】に拠る。
   *

 ネットでは、前記記事の(2)に同調する意見が多い。なかには、何も考えずに適用していいのか、と憤る人もいた。
 では、この刑務所の受刑者に対する賠償は、現実にはどうなっているか。

 建前上は一律支給なのだが、刑務所内から手続きしてもなかなかスムースにはいかない。受刑者の賠償請求を刑務所当局があまり好ましく思っていたためなのか、単に事務作業が増えることを忌避したのか、刑務所側の意向は定かではない。しかし、申請しようとして、「そういうことをすると仮釈もらえないぞ」と言われた受刑者もいた。
 ある元受刑者は、出所後に東電に電話し、手続き後2週間くらいしてから補償金8万円が出た。

 以上、福島刑務所元受刑者「出所した元受刑者が語った「3・11後の福島刑務所」」(「創」2012年9・10月号)に拠る。
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【官僚】省庁別天下りの実態

2012年08月11日 | 社会
 データは、2008年4月1日現在(民主党「天下りに関する予備調査」)。一部、当該省庁以外からの天下りも含まれる。
 【凡例】①天下り総数(うち取締役相当役員数)、②調査団体数、③役員の半数以上が天下りで占められる主な団体。

●財務省
 ①792人(587人)
 ②369
 ③財団法人公会計研究協会(100%)、財団法人日本システム開発研究所(53.8%)、財団法人日本税務協会(50%)、財団法人日本税務協会(50%)、国民生活金融公庫(現・(株)日本政策金融公庫=50%)。

●経済産業省
 ①2,124人(1,207人)
 ②464
 ③財団法人麻布研修センター(50%)、独立行政法人経済産業研究所(75%)、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(55.6%)、日本アルコール産業株式会社(50%)、独立行政法人原子力安全基盤機構(66.7%)。

●内閣府
 ①359人(265人)
 ②68
 ③財団法人全国安全会議(83.3%)、財団法人世界政経調査会(78.6%)、財団法人公務研修協議会(76.9%)、財団法人日本人事行政研究所(75%)、財団法人日本人事試験研究センター(70.6%)、社団法人日本人事管理協会(64.3%)、財団法人菊葉文化協会(61.5%)、社団法人日本交通福祉協会(54.5%)、社団法人政府資料等普及調査会(52.6%)、社団法人国民出版協会(50%)、社団法人経済企画協会(50%)、沖縄振興開発金融公庫(50%)。

●総務省
 ①1,317人(536人)
 ②202
 ③財団法人能率増進研究開発センター(70%)、財団法人統計情報研究開発センター(66.7%)、財団法人自治研修協会(50%)、危険物保安技術協会(50%)、財団法人通信協会(61.9%)、財団法人日本郵便退職者連名(100%)、財団法人北海道郵便局長協会(54.5%)、財団法人当会地方郵便局長協会(50%)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(50%)、財団法人通信文化振興会(80%)、

●国土交通省
 ①6,929人(2,527人)
 ②844
 ③財団法人運輸振興協会(94.7%)、財団法人経済調査会(50%)、財団法人建設業適正取引推進機構(64.7%)、財団法人国土計画協会(73.7%)、財団法人都市文化振興財団(75%)、財団法人自転車駐車場整備センター(52.9%)、財団法人下水道業務管理センター(55.6%)、財団法人海外建設防災協会(60%)、財団法人道路開発振興センター(50%)、財団法人交通事故総合分析センター(57.1%)、財団法人自動車検査登録情報協会(53.3%)、財団法人交通遺児育成基金(50%)、財団法人自動車事故被害者援護財団(63.6%)、財団法人航空振興財団(50%)、財団法人航空保安協会(64.3%)、財団法人航空保安研究センター(58.3%)、財団法人航空保安施設信頼性センター(56.3%)、財団法人航空機安全運輸支援センター(70.6%)、社団法人関東建設弘済会(50%)、社団法人北陸建設弘済会(71.4%)、社団法人中部建設協会(50%)、社団法人近畿建設協会(50%)、社団法人中国建設弘済会(76.9%)、社団法人宮城県自動車会議所(53.3%)、社団法人四国運輸協会(50%)、財団法人九州運輸協会(50%)、独立行政法人会場災害防止センター(60%)、独立行政法人都市再生機構(50%)、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(50%)、軽自動車検査協会(54.5%)、株式会社関西エアポートエージェンシー(60%)、関西国際空港施設エンジニア株式会社(91.7%)、中部国際空港情報通信株式会社(50%)、財団法人建築保全センター(50%)。

●外務省
 ①348人(293人)
 ②92
 ③社団法人霞関会(100%)、財団法人鹿島平和研究所(75%)、財団法人アジア福祉教育財団(50%)、社団法人海外農業開発協会(50%)、財団法人安達峰一郎記念館(50%)。

●法務省
 ①1,224人(357人)
 ②144
 ③財団法人司法協会(83.3%)、更生保護法人更新会(81.8%)、更生保護法人興楽会(81.8%)、社団法人家庭児童問題情報センター(70.6%)、更生保護法人両全会(58.3%)、更生保護法人神戸学而薗(55.6%)、更生保護法人宮城東華会(50%)。

●厚生労働省
 ①3,643人(1,453人)
 ②667
 ③社団法人予防衛生協会(55.6%)、財団法人佐川がん研究助成振興財団(50%)、社団法人全国地区衛星組織連合会(50%)、財団法人食品薬品安全センター(57.1%)、財団法人日本児童福祉協会(50%)、財団法人徳風会(66.7%)、財団法人大東亜戦争全戦没者慰霊団体協議会(50%)、財団法人中国残留孤児援護基金(50%)、財団法人長寿社会開発センター(52.6%)、財団法人全国社会保険共済会(50%)、社団法人大阪労働基準連合会(100%)、社団法人社会保険広島厚生会(100%)、独立行政法人国立健康・栄養研究所(50%)、社会福祉法人こどもの国協会(55.6%)、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会(53.8%)。

●防衛省・自衛隊
 ①2,834人(263人)
 ②210
 ③弘済企業株式会社(100%)、社団法人隊友会(97.6%)、社団法人安全保障懇話会(94.4%)、財団法人防衛弘済会(86.7%)、財団法人防衛弘済会(86.7%)、財団法人防衛技術協会(72.7%)、社団法人全国自衛隊父兄会(59.5%)、財団法人防衛医学振興会(50%)、財団法人防衛調達基盤整備協会(50%)。

●農林水産省
 ①2,009人(1,118人)
 ②364
 ③財団法人農政調査委員会(50%)、社団法人農林放送事業団(60%)、財団法人山崎香辛料振興財団(50%)、財団法人ン本農業研究所(53.8%)、財団法人農業技術協会(72.7%)、財団法人競馬保安協会(50%)、財団法人農政調査会(50%)、独立行政法人農業者年金基金(60%)、株式会社日本政策金融公庫(旧・農林漁業金融公庫、50%)、農水産業弓道組合貯金保険機構(66.7%)、財団法人日本水土総合研究所(53.8%)、財団法人森とむらの会(50%)、社団法人海外林業コンサルタンツ協会(63.6%)、財団法人木原営林大和事業財団(50%)。

●文部科学省
 ①2,980人(1,521人)
 ②936
 ③財団法人佐藤栄作記念国連大学協賛財団(70%)、財団法人科学博物館後援会(50%)、財団法人加藤山崎教育基金(50%)、独立行政法人教員研修センター(75%)、財団法人放送大学教育振興会(50%)、国立大学法人政策研究大学院大学(50%)、財団法人恵仁会(87.5%)、学校法人日本社会福祉事業大学(50%)、学校法人別府大学(50%)、社団法人全日本銃剣道連名(75%)、社団法人青少年交友協会(53.3%)、財団法人日本ペア碁協会(55.6%)、財団法人前田育徳会(60%)、独立行政法人国立文化財機構(50%)。

●環境省
 ①256人(212人)
 ②62
 ③独立法人環境保全機構(66.7%)、財団法人環境情報普及センター(52.9%)、社団法人日本環境衛生施設工業会(50%)、財団法人日本環境協会(54.5%)、財団法人国民公園協会(55%)。

 以上、高橋洋一『国民が知らない霞が関の不都合な真実 ~全省庁暴露読本~』(双葉社、2012)に拠る。

 【参考】
【官僚】その行動原理 ~天下りの構造~
【消費税】増税推進する財務官僚の高給・天下り・脱税 ~大武健一郎~
【消費税】財務官僚の華麗なる天下り ~生涯で8~10億円の稼ぎ~


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【官僚】その行動原理 ~天下りの構造~

2012年08月10日 | 社会
(1)官僚の定義
 (a)明確な定義はない。
 (b)狭義には、国家公務員採用試験Ⅰ種合格者で、霞が関用語でいうキャリア(官僚)だ。省庁の課長以上の国家公務員は、「高級官僚」と呼ばれる。
 (c)広義には、国家公務員(特別職及び一般職)100万人。ちなみに、地方公務員は300万人だ。

(2)出世争い
 (a)キャリア15,000人の圧倒的多数は東大卒。キャリアは、出世コースのゴール、事務次官をめざして競争する。同期入省のほぼ全員が本省課長クラスまで横並びで出世するが、その後出世レースは激しさを増し、出世できない者から脱落していく。事務次官になれなかったキャリアは、退職時の地位に応じた地位・待遇のポストに再就職する。これが「天下り」だ。
 (b)Ⅱ種およびⅢ種合格者はノンキャリアと呼ばれる。キャリアおよびノンキャリアは、俗称で、この「制度」も霞が関の慣例にすぎない。ノンキャリアの出世は課長補佐までだが、キャリア制度批判を受けて、人事院は1999年に指針を作成。各省庁にノンキャリアからの幹部への抜擢を促した。その結果、2005年にはノンキャリアから150人以上が課長級以上に昇進した。
 (c)また、国家公務員制度改革基本法(2008年成立)により、2012年度から国家公務員採用試験Ⅰ種は「総合職」、Ⅱ種およびⅢ種は一般職に再編された。

(3)官僚の仕事 
 (a)官僚の主な仕事は、予算案と法律案の作成だ。
 (b)政治家のサポートも欠かせない仕事だ。国会期間中は、大臣の「答弁書」作りに追われる。「質問主意書」への回答作りも官僚の仕事だ。

(4)官僚の行動原理
 (a)建前はともかく、いかに予算を分捕り、OBを含めた自分の省庁の利益を確保するかが唯一の行動原理だ。
 (b)予算をつけることに成功したら、OBが天下った外郭団体に発注する。最近は随意契約に対する批判が強いので競争入札にするが、入札参加には「同種の事業を○年行っていること」などの条件をつけ、OBのいる団体が無事入札できるようにする。・・・・現役はOBを支え、OBはいずれ現役に「天下りポスト」を譲る、という「省益=自分の利益」という構図だ。この「霞が関」の掟にそむき、所属官庁の利益を損ねてでも「国益のために」働くと、守旧派に「改革派官僚」のレッテルを貼られて、霞が関から追放される。
 (c)現役官僚は、できるだけ多くの予算を勝ち取り、OBのいる外郭団体に利益をもたらせば、退職後の面倒を見てもらえる(霞が関ムラの論理)。先輩の仕事を受け継ぎ、後輩に「ソツなく」引き継げば、減点されることはない。しかし、「省益第一」の先輩の仕事を否定し、国益のために働けば「外れたことをした」と見なされて、その時点で出世街道から外れる。
 (d)東大法学部卒のエリートなのに、出世レースに敗れて事務次官になれなければ、40代後半から50代で退職だ。失業後、再就職先が見つかるか。その不安と「天下りの旨み」のどちらをとるか。答は明らかだ。霞が関に自浄作用を求めるべくもない。

(5)天下り
 (a)天下りは、神道では、神が天界から地上に下ることを意味した。今では、退職した高級官僚が出身官庁の所管する外郭団体や関連する独立行政法人などに再就職することの意味で使っている。
 (b)天下りした官僚OBは、数年ごとに団体等を渡り歩き、そのつど高額の退職金を手にする【注】。
 (c)天下りが霞が関で慣例化した理由は、キャリア官僚による「早期退職慣行」があるからだ。天下りは、省庁の人事システムに組み込まれており、関連法人のポストは所管する官庁の縄張りだ。
 (d)天下り先のOBが恥をかかぬよう、省庁から関連法人等には事業が回される。「必要だから」ではなく、「付き合いがあるから」。
 (e)阿部内閣の渡辺喜美・行政改革・規制改革担当大臣は、国家公務員法を改正し、公務員による天下りあっせんを禁止。各省庁のあっせんを禁じる代わりに「官民人材交流センター」を設置し、再就職先のあっせんを一元的に行うことにした。
 (f)しかし、これではやりにくい、と官僚側は新たな手を策謀した。官内閣は「退職者管理基本方針」を閣議決定。「現役出向」を拡大させた。民主党の「定年まで勤務できる環境整備」も実現。利益を確保し、相手の顔も立てる。官僚が省益確保のために知恵を絞ったのだ。
 (g)年功序列を撤廃し、能力主義を導入するとともに、各省庁の人事を一元管理する改革をしなければ、天下り問題は解決しない。

 【注】ある農水省OB(元水産庁長官)は、6団体を渡り歩き、少なくとも3億2,000万円の所得を得た。あるいは、「【消費税】増税推進する財務官僚の高給・天下り・脱税 ~大武健一郎~」「【消費税】財務官僚の華麗なる天下り ~生涯で8~10億円の稼ぎ~」参照。

 以上、高橋洋一『国民が知らない霞が関の不都合な真実 ~全省庁暴露読本~』(双葉社、2012)に拠る。
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【官僚】国民が知らない霞が関の不都合な真実 ~経産省~

2012年08月09日 | 社会


 戦後日本の高度成長を牽引し、日本の産業発展に経産省が大きく貢献した・・・・面もあるが、実際にはその逆のケースが多々ある。
  ●経産省の打ち出す産業政策が、むしろ日本経済の発展の妨げになっている。
  ●経産省主導で行った大プロジェクトが失敗に終わった。
 ・・・・といった事実が数多く見られる。

 日本の産業の保護・育成のために導入された規制だが、新規参入したい企業にとって大きな障害になる。規制という名の下に縛りを設けることで、可能性のある新しい産業の芽を潰す場合もあるからだ。本来ならば、将来有望な企業を育成することこそ、重要な政策であるはずなのに、まったく逆の政策だ。日本の産業界全体にとっては大きなマイナスだ。
 規制は、業界の利益を独占している大企業などにはありがたい政策だ。新たな競合企業を法律で追い払ってくれるのだから。
 近年、「規制緩和」が叫ばれているが、掛け声ばかりで一向に進まない。既得権益を守りたい企業と経産官僚との「官民癒着」の構造が底にある。

 「特定の企業を保護し、成長を促す」政策は、経産省が推進する日本型産業政策の典型だ。国が予算を編成し、官僚主導の下に政府が立ち上げる一大プロジェクトだ。
 しかし、日本経済にとっては大きな無駄だ。
 <例>(a)「サンシャイン計画」、(b)「ムーンライト計画」【注】。 
 (a)は、1974年に始まったエネルギーの安定供給確保を目的とした新エネルギー技術開発プロジェクト。
 (b)は、1978年に始まった省エネ技術開発を目的としたプロジェクト。
 いずれも産官学によって進められた大型プロジェクトだけに予算規模は大きく、(a)は4,400億円、(b)は1,400億円も巨費が投じられた。しかし、結果はたいした成果を得られずに失敗。
 それでも計画は打ち切られず、(c)「ニューサンシャイン計画」が1993年に始まり、2020年までに総額1兆5,500億円もの巨額の予算が見込まれていたが、これも計画倒れで失敗。
 ところが、計画は完全に打ち切られたわけではない。予算規模は縮小したが、関連する独立行政法人や特殊法人に関連予算がつぎ込まれている。
 何たる壮大な無駄。
 かかる無意味な産業政策が、経産省主導の下で行われている。

 【注】「【エネルギー政策】失敗続き、税金ムダ遣いの経産省 ~サンシャイン計画~
    「【原発】事故直後に東京から逃げ出した経産官僚たち ~官僚の利権~

 以上、高橋洋一『国民が知らない霞が関の不都合な真実 ~全省庁暴露読本~』(双葉社、2012)に拠る。
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【官僚】国民が知らない霞が関の不都合な真実 ~経産省~

2012年08月09日 | 社会


 戦後日本の高度成長を牽引し、日本の産業発展に経産省が大きく貢献した・・・・面もあるが、実際にはその逆のケースが多々ある。
  ●経産省の打ち出す産業政策が、むしろ日本経済の発展の妨げになっている。
  ●経産省主導で行った大プロジェクトが失敗に終わった。
 ・・・・といった事実が数多く見られる。

 日本の産業の保護・育成のために導入された規制だが、新規参入したい企業にとって大きな障害になる。規制という名の下に縛りを設けることで、可能性のある新しい産業の芽を潰す場合もあるからだ。本来ならば、将来有望な企業を育成することこそ、重要な政策であるはずなのに、まったく逆の政策だ。日本の産業界全体にとっては大きなマイナスだ。
 規制は、業界の利益を独占している大企業などにはありがたい政策だ。新たな競合企業を法律で追い払ってくれるのだから。
 近年、「規制緩和」が叫ばれているが、掛け声ばかりで一向に進まない。既得権益を守りたい企業と経産官僚との「官民癒着」の構造が底にある。

 「特定の企業を保護し、成長を促す」政策は、経産省が推進する日本型産業政策の典型だ。国が予算を編成し、官僚主導の下に政府が立ち上げる一大プロジェクトだ。
 しかし、日本経済にとっては大きな無駄だ。
 <例>(a)「サンシャイン計画」、(b)「ムーンライト計画」【注】。 
 (a)は、1974年に始まったエネルギーの安定供給確保を目的とした新エネルギー技術開発プロジェクト。
 (b)は、1978年に始まった省エネ技術開発を目的としたプロジェクト。
 いずれも産官学によって進められた大型プロジェクトだけに予算規模は大きく、(a)は4,400億円、(b)は1,400億円も巨費が投じられた。しかし、結果はたいした成果を得られずに失敗。
 それでも計画は打ち切られず、(c)「ニューサンシャイン計画」が1993年に始まり、2020年までに総額1兆5,500億円もの巨額の予算が見込まれていたが、これも計画倒れで失敗。
 ところが、計画は完全に打ち切られたわけではない。予算規模は縮小したが、関連する独立行政法人や特殊法人に関連予算がつぎ込まれている。
 何たる壮大な無駄。
 かかる無意味な産業政策が、経産省主導の下で行われている。

 【注】「【エネルギー政策】失敗続き、税金ムダ遣いの経産省 ~サンシャイン計画~
    「【原発】事故直後に東京から逃げ出した経産官僚たち ~官僚の利権~

 以上、高橋洋一『国民が知らない霞が関の不都合な真実 ~全省庁暴露読本~』(双葉社、2012)に拠る。
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【原発】活断層の“八百長”調査再び

2012年08月08日 | 震災・原発事故
 1、2号機と3、4号機との間を南北に走る破砕帯「F-6」は、活断層の疑いがある。
 しかも、6月27日に行った現地視察では、新事実が判明した。施設の耐震設計上、最も重要度が高い「Sクラス」に位置づけられ、事故発生時に3、4号機の原子炉を冷やすための水を運ぶ非常用取水路が「F-6」断層を横断しているのだ。地盤そのものがずれると、いくら耐震構造を強化しても、建築物は破壊されてしまう。「F-6」断層が動けば、これを横切る直径数mの取水管が壊れ、3、4号機の原子炉が冷却できず、原発事故がより深刻化する懸念がある。

 1985年、3、4号機の設置許可申請に際し、関電は「F-6」断層のトレンチ(掘削)調査を行い、構内の南側断面図を示して「活断層ではない」と判断。原子力安全・保安院も2010年の耐震安全性調査(バックチェック)で関電の評価結果を「妥当」とした。
 ところが、ここに陥穽があった。
 実は、1985年の調査では、南側だけでなく北側断面図も存在したが、関電は今回の再稼働をめぐる保安院の安全確認調査に南側の断面図のみを示し、北側断面図を提出していなかった。
 今年5月末、市民団体が発掘した1985年当時の資料で北側断面図を見て、心底から驚愕した。破砕帯を境にして地層の壁面が50cmほど隆起し、その起伏に剃って砂利層など新しい地層が堆積していたのだ。一見して「地層のずれ」が読み取れる図だった。
 さらに、岩盤がずれて擦れる際に生じる「断層粘土」が破砕帯との隙間に存在する様子も描かれていた。柔らかい断層粘土は、地層が比較的最近動いた証となる。北側断面図が示すのは、典型的な活断層の兆候だった。
 関電が提示した南側断面図には、「地層のずれ」や「断層粘土」は一切見られない。同じ「F-6」のはずが、南北でなぜ大きく違うのか。
 この疑問は、もう一度掘削調査をして地層断面を確認すれば判明する。

 なお、大飯原発の危険は他にもある。熊川断層、FO-A断層、FO-B断層の直接的に連動する可能性だ。これら3つの断層をつなぐ新たな活断層が存在する可能性は否定できない。

 以上、渡辺満久(東洋大学教授)「私は原発再稼働に絶対反対ではないが、活断層専門家として「大飯原発の重大事態」を報告する」(「SAPIO」2012年8月1・8日号)に拠る。

    *

 都内に本社のある(株)ダイヤコンサルタントは、主な株主が三菱マテリアルや三菱東京UFJ銀行で、大飯原発の原子炉を製造した三菱グループ企業だ。
 同社は、大飯原発3、4号機の設置に当たり、トレンチ(掘削)調査を担当した。1982年と1983年に「敷地調査」を三度実施。1983年には「海底地質調査」も実施している。これらの調査後の1985年、関電は3、4号機の「設置変更許可申請」を提出した。

 3号機は1991年12月に、4号機は1993年2月に運転を開始。いったん停止後、今年7月に再稼働した。その前から敷地内の破砕帯「F-6」が活断層ではないか、と専門家から指摘されていた。
 関電は、この指摘を受けた形で7月13日、3、4号機増設時におけるダイヤコンサルタントによる「破砕帯の密度や強度を測定する別の調査」の写真公開に踏み切った。だが、写真の多くはトレンチの壁面がブルーシートで覆われている。
 これでは何も分からない。【渡辺満久・東洋大学教授】 

 世論に押された原子力安全・保安院は、7月18日、関電に対して「F-6」が活断層か否かを判断する「念のための」調査を指示した。
 そして、またもやダイヤコンサルタントが調査実施社に指名された。
、同社による最初の調査が問題にされて大飯原発の安全性が疑われているのに、再調査を同社にやらせるのだ。

 福島みずほ・参議院議員(社民党)や河野太郎・衆議院議員(自民党)ら9政党・会派の衆参両院議員14人が7月30日、首相と経産相に対し、「大飯原発の破砕帯(断層)再調査に関して、第三者による早急な調査を求める要望書」を提出した。
 <身内企業や原発を建設する会社の関連企業が調査を行っていたことは、調査の公平性・信憑性に重大な問題があります。それにもかかわらず、今回もまた同一の会社に調査を実施させるなど許されることではありません>【「要望書」】 

 しかし、保安院は、議員側の「要望書」を突っぱねる構えだ。
 相も変わらぬ原子力ムラの官・業のもたれ合いが続いている。

 以上、成澤宗男(編集部)「活断層の“八百長”調査再び」(「週刊金曜日」2012年8月3日号)に拠る。
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【消費税】「富裕税をかけると富裕層は海外に逃げる」はウソ

2012年08月07日 | 社会
(1)富裕層への資産集中
 (a)「格差社会」日本の格差は10年以上前から、拡大し続けている。しかも、日本の格差は、豊かな層と貧しい層に二分されているのではなく、ごく一部の富裕層だけが突出して資産を持ち、国民全体が徐々に貧困化している。
 (b)給与所得者の年収階層を見ると、各階層の平均年収は下がっているにも拘わらず、年収5,000万円超の最高層だけは①人数も②所得税の支払額も10年前の3倍強に激増している。2010年現在、①は13,000人、②の総額は2兆3,000億円だ。
 (c)企業の配当もこの10年間で2.3倍に増加している。 → 大株主などの収入も激増。
 (d)①2011年現在、日本の個人金融資産は1,483兆円だ。総務省の家計調査によれば、②同年現在、2人以上の世帯(3,450万)の平均貯蓄額は1,664万円で、総額570兆円くらいだ。③1人暮らし世帯(1,680万)の貯蓄額は発表されていないが、2人以上世帯に準じる800万円の貯蓄があると(多めに)仮定すると、140兆円。②+③=710兆円で、①との差は800兆円に近い。この差額を富裕層が握っていると推定される。

(2)富裕税
 (a)国民全体の収入が低下していて(会社員の平均年収もこの10年間下がりっぱなし)、国民の生活はどんどん苦しくなり、消費も下がる中、税金は富裕層に課すべきなのは明らかだ。
 (b)当然、金持ちは抵抗する。そして、消費増税をプッシュする。経団連を始めとする財界がそうだ。
 (c)(b)の抵抗を排して、仮に1%の富裕税を導入したら、数十兆円の税収が見込める(課税対象者を「資産1億円以上」などに絞ったり、自宅の不動産は課税対象外にするなどの配慮をしても)。現在の国税40兆円前後に匹敵する税収となる。

(3)富裕税反対の詭弁
 (a)富裕税導入に反対する理由として挙げられるのは2つ。①富裕税が導入されれば金持ちが海外に逃げる【注】。②富裕税は徴収しにくい(金持ちの資産把握が難しい)。
 (b)富裕税が導入されても、金持ちが海外に逃げ出す可能性は非常に低い。なぜなら、現在の税法では、単に資産を海外に移したり、住民票を海外に移すだけでは資産課税を回避できない。国籍を変えなければならない。わずか1%程度の資産課税を逃れるために国籍まで変える人が続出するとは考えられない。しかも、資産を海外に移し、海外で管理するとなれば、その手間賃だけで年間1%はゆうに超える。また日本の金持ちのほとんどは、日本にいるからこそ多額の収入を得ている。金持ちは日本から離れたくても離れられないのだ。
 (c)資産把握困難というのも、単なる言い逃れだ。富裕税の徴収は、基本的に相続税の徴収とほぼ同じだ。両者の違いは、富裕税が毎年課税させるのに対し、相続税は資産家が亡くなったときにだけ課税される点くらいだ。相続税の対象者は、国民全体の4%程度で、富裕税もその程度になるだろう。徴収する側は、国民の4%の資産だけきっちり把握しておけばよい。徴収するに楽な税金だとさえ言える。

 【注】記事「3党合意、弱点あらわ 衆院特別委、少数野党が批判」【朝日新聞デジタル記事2012年6月23日03時00分】から一部引用する。
 <税をめぐる議論で批判が集中したのは、3党が消費増税という庶民への増税で合意したのに、裕福な人の所得税と相続税の増税を先送りした点だ。
 <共産党の佐々木氏は「3党協議の結果、残ったのは消費税だけ。所得の再配分機能を高める内容はなくなった。許せない」と語気を強めた。新党きづなの小林正枝氏も「貧困と格差が続くなか、どうしてこの時期に消費増税をするのか。所得税や資産課税、他の方法もあった」と追及した。
 <もともとの消費増税法案には、2015年1月から所得税と相続税の増税も盛り込まれていた。
 <所得税は、課税所得(年収のうち税金がかかる部分)が5千万円を超える人への税率(最高税率)を40%から45%に引き上げる。相続税は基礎控除(遺産額のうち相続税がかからない部分)のうち、定額の控除を5千万円から3千万円に、遺産を相続する人(法定相続人)1人あたりの控除額を1千万円から600万円に下げ、対象を増やそうとしていた。
 <だが、修正協議で自民党が「富裕層の海外移住につながる」などと主張し、削除が決まった。そのうえで、両税の増税は年末に話し合う来年度税制改正まで結論を先送りした。各党からの批判に対し、安住淳財務相は「年度改正でしっかりやっていく。旗を降ろしたわけでも、改革をしないわけでもまったくない」と反論したが、年末に再び盛り込まれる確証はない。>

 以上、武田知弘「1%でも数十兆円の税収」(「週刊金曜日」2012年7月20日号)に拠る。

 【参考】
【税】実質税負担率はトヨタ社長より庶民のほうが高い ~金持ち優遇~
【経済】金持ちに1%の富裕税を課せ ~消費税の2倍の税収~
【経済】年々減る給与、年々増える会社の貯金 ~企業の内部留保金300兆円~
【経済】税制が作った“富裕老人”400万人
【経済】消費税は失業者を増やす
【経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~
【経済】「億万長者激増=景気低迷原因」説 ~日本に5万人の億万長者~
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【震災】復興予算19兆円を食いつぶす官僚 ~誰が復興を殺すのか~

2012年08月06日 | 震災・原発事故
 復興予算は被災地に回っていない。土地のかさあげすらできない。気仙沼では港周辺の地盤を高くしたが、そこに以前あった商店を建てるには復興予算を使えない。被災者向け復興住宅の整備予算1,116億円のうち、わずか4億円しか使われていない。
 誰が復興を殺すのか【注】。
 余った復興予算のうち「不用額」とされた1兆円は、今年度新設された「東日本復興特別会計」に繰り入れられ、(3)のように各省庁に分配されている。

(1)復興予算
 (a)2011年度(3次補正まで) 15兆円
 (b)2012年度(当面5年分) 4兆円
 (c)総額((a)+(b)) 19兆円

(2)財源
 (a)所得税引き上げ・・・・2013年1月から25年間
 (b)住民税引き上げ・・・・2014年6月から10年間
 (c)子ども手当の廃止(減額)
 (d)高速道路無料化実験の廃止 
 (e)国家公務員人件費削減
 (f)etc.

(3)復興予算の実際の使途
 (a)(内閣府)霞が関の合同庁舎4号館の大規模改修費 12億円 ← 復興特会「全国防災対策費」
 (b)(財務省/国税庁)東京の荒川税務署など3施設(被災地以外)の改修費 5億円 ← 復興特会「全国防災対策費」
 (c)(外務省)独立行政法人国際交流基金【注:天下り先】の運営費 1.2億円
 (d)(外務省)ODA国際会議の費用 0.7億円
 (e)(国土交通省)石巻市の港湾合同庁舎の改修費 4億円 ← 復興特会「全国防災対策費」
 (f)(国土交通省)北海道の道路整備事業費【注:普通の道路】 78億円
 (g)(国土交通省)沖縄の道路整備事業費【注:普通の道路】 22億円
 (h)(農林水産省/水産庁)シーシェパードからの攻撃に対する護衛費 5億円
 (i)(農林水産省/水産庁)調査捕鯨費  18億円
 (j)(文部科学省)全国の国立大学【注:天下り先】の改修費389億円、災害復旧費 46億円
 (k)(文部科学省)独立行政法人日本原子力研究開発機構【注:天下り先】による除染・廃炉の研究費 65億円
 (l)(文部科学省)独立行政法人日本原子力研究開発機構【注:天下り先】による国際熱核実験炉計画(イーター計画)の研究開発・設備費 42億円
 (m)etc.

 【注】「【震災】誰が復興を殺すのか ~霞が関の便乗予算と重複予算~

 以上、記事「19兆円復興予算をネコババした泥棒シロアリ役人の悪行」(「週刊ポスト」2012年8月10日号)に拠る。
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【原発】大飯原発再稼働に伴う問題 ~脱原発の進め方~

2012年08月05日 | 震災・原発事故
(1)大飯原発再稼働
 (a)再稼働には、最低限次の2つの条件が満たされなければならない。これらのいずれも満たされていないから、再稼働すべきではなかった。
   ①福島原発事故を受けて、原因と対策について明らかにすること。 
   ②事故の責任を明らかにすること。
 (b)「暫定的に安全基準を満たしている」(野田佳彦・首相)とは、「安全性は十分ではない」といいうことと同じだ。
 (c)安全を犠牲ににしてまで再稼働させなければならないというなら、よほどの理由が必要だ。その理由は「国民生活だ」というが、要するにこれは停電リスク(計画停電)だろう。しかし、それならば「夏だけ動かす」という話になるはずだ。ところが、「稼働は暫定ではなく、ずっとだ」と言っているから、もはや論理的に破綻している。矛盾したことをやるから、国は信用を失っていく。
 (d)政府の再稼働決定の背景には、電気料金値上げに対する産業界の反発がある。電気料金が上がるのは、代替エネルギー(火力など)にかかるコストだけではなく、実は止まった原発に維持費がかかるからだ。原発依存度の低い中部電力や中国電力は値上げの必要がない。要するに、これは経営判断の結果であり、経営の責任だ。これを問わぬまま電気料金だけ上げれば、経営の失敗のツケを電気代と安全リスクで国民に支払わせることになる。

(2)長期的にも原発は不要か
 (a)技術的には、少なくとも今の原発ではダメ。今の原発は損害保険がかけられないほどリスクが大きい。
 (b)今回の事故では、事故が起きたらどこに避難するか、という指示すら間違えてしまった。福井エリアで事故が起きたら、近畿の水瓶(琵琶湖)がどうなるか。植田教授=大阪府市エネルギー戦略会議座長は、この点を関西電力に訊いたが、関電は「事故を起こさないようにする」というズレた答を返してきた。苛酷事故への危機管理体制は整っていない。

(3)関電管内の企業の要求
 (a)本来は国が、産業界を巻きこんで、省エネや節電のコンセンサスを得ていく必要があった。さらに、全電力会社が協力すれば、今夏は乗り切れる。
 (b)夏の需給ギャップ問題は、60年に1度猛暑(2010年夏)を想定し、関電の15%不足の見積もりが根拠になっているが、これはそもそも保守的な数値だ。
 (c)企業の自家発電も、生産統計からするとポテンシャルは大きい。この統計には輸出分も含まれているが、電力会社との契約が進めば確実な解消策になる。
 (d)60年に1度の猛暑に働き続けることでどれほど付加価値が生み出せるか、という発想も必要だ。危機はチャンスと捉えるべきで、節電を危機対処策に終わらせず、ライフスタイル・消費スタイルの変化、さらに新しい価値の創出の仕方を提案する方向に持っていかねばならない。

(4)「エネルギー・環境に関する選択肢」
 (a)数字合わせに意味はない。選択すべきは、政策や電力エネルギーシステムの改革の方向性だ。
 (b)原発依存度ゼロを選択するが、これには膨大な廃炉コストがかかり、電力会社の経営が悪化する。電気料金値上げなどと関連するので、政府の説明が必要だ。
 (c)50基中13基もある福井は、現行制度のままだと交付金がゼロになり、地域経済が深刻化しかねない。将来世代に安全のツケ(放射性廃棄物など)を先送りするのは問題だが、ゼロにする過程で地元再生や国民負担の問題が生じる。いずれにせよ、政府がはっきり説明すべきだ。

 以上、植田和弘(京都大学経済学部長)vs.橘川武郎(一橋大学大学院教授)「脱原発を進めるべきか ~激論⑤~」(「週刊ダイヤモンド」2012年7月21日号)のうち、植田教授の議論に拠る。
 なお、「激論①~⑤」は両論併記の疑似討論。
 橘川教授の議論から一点引く。いわく、「脱原発宣言した国は化石燃料、特にLNG(液化天然ガス)の価格交渉能力が弱まる。3・11以降、日本は米国の9倍の価格で購入、焦って高値掴みしている状況で、これが構造化していく恐れがある。買い方にも問題があって、例えば韓国は1国1社のまとめ買いで安く購入しているが、日本は電力会社があえて高く購入し、競争相手のガス会社も高く買わざるを得ない状況をつくるなど、まとめ買いも困難な状況だ」云々。
 橘川は、高値掴みは3・11以降に初めて生じた状況であるかのように述べているが、これは3・11の前から指摘されていたことだ。総括原価方式のため、化石燃料を高く買えば高く買うほど電力会社の儲けが増えるのだ。だから、あえて殿様商売をやっている(東電についてもまだ過去形ではない)。事は化石燃料に限らない。小は事務室の備品まで。だから、地域の経済界は電力会社にひれ伏していたのだ。
 原発擁護の議論には、この手の落とし穴が多すぎる。
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【原発】作業員の不足と待遇格差 ~政府の無為無策~

2012年08月04日 | 震災・原発事故
 東電の作業員アンケート(回答2,415通)が公表された。廃炉に向けた作業の問題点が浮かび上がってくる。

 (1)最大のものは、作業員不足だ【注1】。すでに現場作業に就けなくなっている作業員が出ていることを示す声がある。
  ●被曝量が増えたために、向こう5年間、管理区域内の作業に従事できずにいる。【元請け協力企業】
  ●被曝線量管理を見直してほしい。それでないと、もう働けなくなり、現場は作業が進まなくなる。【一次下請け以下の協力企業】

 (2)高線量下での作業に就く手当に格差がある【注2】。
 昨年8月4日、日弁連シンポジウムで、東電が支払った日当100,000円が末端の作業員が受け取る際には8,000円になっていたことを伝えた。アンケートは、この報告を裏づける。
  ●我々が4号原子炉のオペフロ上で作業を行っても、危険手当が日額1,500円。ゼネコンが低線量ガレキを片づけると、手当が日額8,000円貰える。【一次下請け以下の協力企業】  

 (3)福島第一原発で作業にあたる下請け会社が、作業員の線量計を遮蔽して被曝線量を低くさせていた。被曝隠しの理由は、年間の線量限度を超えると原発で働けなくなるため【注3】。
 廃炉に向けた作業は、今後何十年も続く。作業には必ず被曝が伴うにもかかわらず、線量限度に達して働けなくなった場合や健康被害が出た際の補償は今のところ何もない。これでは、被曝隠しが今後も続くおそれがある。

 (4)国は、この状況を改善する具体策を示していない。
 作業員不足や待遇格差などの問題を改善しようとする具体策がない。

 【注1】「【震災】原発>事故現場がいま懸念する3つのこと
 【注2】「【震災】原発>搾取される作業員~イラクより1.75倍危険な原発~
     「【震災】原発>搾取される作業員(2)~原子炉プールの潜水作業~
 【注3】記事「「線量累積、仕事できなくなる」偽装指示の録音記録1」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「「やってはいけない、百も承知」偽装指示の録音記録2」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「「原発しかねえ人間ゾロゾロいる」偽装指示の録音記録3」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「「生き方間違い、言われたぐねえ」偽装指示の録音記録4」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「「普通の原発じゃないでしょ」偽装指示の録音記録5」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「「無理にやれとは言ってないよ」偽装指示の録音記録6」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「「見つからないように」「高線量のところ、お金が高い」」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「線量計に鉛板、東電下請けが指示 原発作業で被曝偽装」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「政府は実態徹底調査を」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「元請け任せ、東電の管理不備」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日03時00分】
    記事「作業員に鉛カバー作らせる 被曝隠しの下請け 福島第一」【朝日新聞デジタル記事2012年7月21日15時48分】
    記事「鉛板、原発構内に投棄 被曝隠し、使用後に役員指示」【朝日新聞デジタル記事2012年7月22日03時00分】
    記事「鉛カバー5人が装着 被曝隠し、役員が口裏合わせ指示」【朝日新聞デジタル記事2012年7月23日03時00分】
    記事「被曝隠し、不自然な説明 ビルド社役員「1度だけ」」【朝日新聞デジタル記事2012年7月23日03時00分】
    記事「鉛カバー「累積線量への影響小さい」 元請け会社」【朝日新聞デジタル記事2012年7月23日16時41分】

 以上、木野龍逸(ジャーナリスト)「東京電力の作業員アンケートで浮き彫り 作業員不足と待遇格差」(「週刊金曜日」2012年7月27日号)に拠る。
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【震災】【原発】【官僚】【消費税】【政治】古賀茂明ノート(加筆)

2012年08月03日 | 震災・原発事故
【政治】自民党の大罪を継承、拡大する民主党 ~来るべき「失われた30年」~
【原発】天下り容認の規制庁人事 ~民自公修正談合~
【原発】大津市いじめ問題と原発事故の共通点 ~保身と隠蔽の文化~
【消費税】「増税は社会保障のため」は真っ赤な嘘 ~財務省の完勝~
【原発】秘かに進行する全原発再稼働計画
【政治】自民党の「4つの大罪」、それを引き継いだ民主党 ~「失われた20年」~
【原発】原子力ムラの弱点 ~再稼働~
【原発】原発官僚というレミングの群 ~再稼働の論理の破綻(4)~
【政治】必要なのは消費増税ではなく「成長のための改革」
【震災】原発>経産省と電力会社の関係 ~古賀茂明~
【震災】原発>東電の甘い経理を見のがしてきた経産省 ~古賀茂明小論~
【震災】原発>古賀茂明の、放射性物質漏洩の罰則はない
【震災】原発>古賀茂明の、「脱原発」すべき理由 ~人・組織~
【震災】原発報道>古賀茂明の、新聞やテレビより週刊誌のほうがマシ
【震災】原発>政治家を操る官僚 ~「脱原発」を阻止する官僚の狡知~
【震災】原発>野田政権の原発政策 ~古賀茂明/原英史の所見~
【震災】原発>経産省が裏であやつる「原子力安全庁」準備室
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【震災】増税で復興できるか? ~『官僚の責任』~
【震災】原発>「利益」がなくても「利権」は生まれる~『官僚の責任』~
【震災】原発>官僚とメディアとの取引 ~官報複合体~
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【震災】原発>なぜ民主党はまともな仕事ができないか?
【震災】原発>電力会社のCMは禁止すべし
【震災】原発>汚染水浄化処理は最短でも5年
【震災】原発>海江田辞意が示す日本中枢の崩壊
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