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褒められたら大人でも嬉しい

2023-09-17 20:35:02 | 2023年度雑記
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2023-09-17
褒められたら大人でも嬉しい
去る9月某日、平日開催の文化祭があった。
僕は非常勤にかかわらず、或る展示会場の監督につけて頂いた。
大変有り難いことだった。

講堂で生徒がパフォーマンスを展開した。
生徒が傑出しているので、どれも秀逸だった。

自由研究などの展示があった。
生徒は全員、順番に会場を見学に来た。
驚くほど多くの保護者もわざわざ見学に来てくださった。
落ち着いている学校だからこそだ。

早い時間にAさんの保護者が言葉をかけてくださった。
Aさんはさきの3月退任式で僕に別れの言葉を読んでくれた生徒だ。
泣いて涙を手のひらでぬぐいながら、なんとか終わりまで読み続けてくれた。
Aさんの保護者は、
「うちの◯◯が先生のことが大好きで大好きで」
と言ってくれた。

しばらくして、3年前から何かと声をかけてくださったBさんの保護者が話しかけてくれた。
僕は、何もお手伝いできなくなり申し訳ありませんと言った。
「いえ。安先生がいてくださればお話ができます。それだけで助かります」
Bさんの保護者には足を向けられない。

展示終了前に、Cさんの保護者が声をかけてくださった。
「安先生。こんにちは」
「あの。どちらさまで」
「Cの母です」
「あ! お目にかかりたかったです」
「Cが毎日先生の話をしていました」
「Cさんはうちで話をする子だったんですか」
Cさんは、群を抜いた知的好奇心を持ち大変な努力家で優秀だった。
昨年度2年生のとき、毎時間のように授業後何かを訊いたり教えてくれたりした。
教員の中にはそれを点数稼ぎだと言う人もいた。
僕はそれでもいいじゃないかと思っていた。
大人も日々みな卑屈に点数稼ぎをして働いているのだ。
でも、Cさんはやっぱり点数稼ぎではなかった。
「安先生がいつも一般教養の話をしてくれるのを話していました」
「いえ。Cさんのような展望を持つ人は少ないです。
 しかも、とんでもない努力家でセンスが良くて余計ですが美貌の持ち主です」
「そんなに褒められたら、Cが舞い上がります」
「褒めてあげるべきです。日本人は、世界でも褒めて育てない国として有名です」
「そういう、ちょっと別のことを言ってくれるのが先生です。安先生が先生でいちばんです」

3人の生徒は、特別に目立たなかったり、特別に目立ったりする生徒だ。
それは、教員が快く思わないタイプの代表だ。
教員は、普通で真面目で、社交的で周りと同じような生徒が好みだ。
自分と同じ人種だからだ。
日本はそういう人種が、教員採用試験に合格するようにできている。
僕は正反対だが幸運で合格できた。

3人の生徒は、自分の「こころざし」や「努力」や「飛び抜けたセンス」を持っている。
だが、その能力が周りの生徒と違いすぎ、自分と周りの折り合いのつけ方がわからない。
まだ、たったの15歳だから当たり前だ。
普通で真面目な大人は、それを「変わり者」と言う。
僕も40年間「変わり者」と言われ続けた。
僕は、3人を2年間、人として高く認め続け、言葉で伝えた。
普通で真面目な大人と、3人の生徒のどちらが世界を変えるかは明らかだ。

3人とも、去年まで授業した生徒の保護者だった。
ひと部屋の監督だったお陰で、思わぬ出会いの幸運に恵まれた。
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