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新シャクシャイン像完成へ

2018-05-08 | アイヌ民族関連
日高報知新聞2018.05.07
【新ひだか】特定非営利活動(NPO)法人新ひだかアイヌ協会(大川勝会長、159人)の平成30年度定期総会が4月29日、町公民館で開かれ、事業計画を承認。任期満了に伴う役員改選で大川会長を再任した。大川会長は「9月23日には新しいシャクシャイン像のお披露目ができることが確実になっている」とあいさつした。
 26年4月に北海道アイヌ協会が社団法人から公益社団法人へ移行し、支部制度を廃止したことに伴い、新ひだかアイヌ協会は任意団体として組織変更。2年前に老朽化したシャクシャイン像の建て替えを行うため、社会的信頼性の高いNPO法人に移行している。
 総会には委任状を含めて83人が出席。大川会長は開会で「シャクシャイン像の建立については長らくお待たせしたが、新たなデザインも決まり、いよいよ寄付活動が始まった」とあいさつ。9月に真歌公園で開催のシャクシャイン法要祭で新たな像を披露することを報告した。 
 続いて大野克之町長、新党大地の鈴木宗男代表、希望の党の山岡達丸衆議、藤沢澄雄道議が来賓として祝辞。
 30年度は一層の地域におけるアイヌ民族の社会的地位の向上、文化の保存・伝承と発展に広く寄与し、アイヌ民族に対する正しい理解と認知を目指す方針。
 主な事業として、5月12日に武四郎まつり、6月3日にイチャルパ(先祖供養)とアイヌ文化交流会、8月上旬に北大アイヌ納骨堂におけるイチャルパ、9月23日にシャクシャイン法要祭、10~11月にサケの特別採捕事業、10月にチェプコイキ(伝統の川漁)の公開実施などを予定している。
 また、北大などが研究目的で保管している町内で発掘されたアイヌ民族の遺骨返還に向け、札幌市のコタンの会が北大や新ひだか町などを提訴していることについて、新ひだかアイヌ協会の考え方を説明。
 協会では「最終的な目標は地元への返還」としつつも、遺骨については直接返還ではなく、一旦、胆振管内白老町の慰霊施設に返還してもらい、北大などへ謝罪や埋葬費用の負担、研究内容の開示を求める考えを示した。
 大川会長は「慰霊施設に納めたから返さないというわけではなく、身内の者だと分かったらきちんと返すよう働きかける」と説明した。
会長以外の新役員は次の通り。
 ▽副会長 奥山幸男、佐々木数馬▽儀式担当理事 平村博▽理事 藤村英治、芦沢めぐみ、村辺司、内海信二、小笠原美保子、福島千吉、酒折一、大川巌▽監事 其浦千秋、霜沢勝博
http://www.hokkaido-nl.jp/article/5910

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消えたウライケチャシ 来月着手のイオル再生事業対象地

2018-05-08 | アイヌ民族関連
北海道新聞05/07 16:00
武四郎が記録「攻められ落城」
 6月にイオル再生事業が始まる釧路市の旧柏木小学校西側隣接地周辺は、かつてウライケチャシがあった場所だ。チャシ跡は同校開校(1955年)前に崩され、今はその姿を見ることができない。今回は消えたウライケチャシの記録をまとめた。(椎名宏智)
■恋文を交換
 ウライケチャシは原田康子さんの小説「雪の巣」に登場する。級友の恋文を代筆し、手渡しに行く女学生が主人公の短編で、恋文を交換する場所がウライケチャシという設定だ。
 「チャシは丘のつづきの楕圓型(だえんけい)の小山のひとつだつたが、自然の小山ではなく、先住土民が土を盛つて砦(とりで)にしていた跡なのであつた」(原文はルビなし)と小説は続く。56年発行の「近代文学 5月号」に収められており、釧路文学館などで読むことができる。
 しかし、作品の舞台となったウライケチャシは、もう見ることができない。柏木小20周年記念誌(74年発行)に寄せられた菊地常男教育長(当時)の一文を読むと、理由が分かる。「私の中学時代よく遊びに行った旧ウライケチヤシがくずされ、春採湖の西端を埋め立ててつくられた学校が柏木小学校であります」
■かつて戦場
 一方、ウライケチャシの歴史は重い。「ウライケ」というアイヌ語(互いに殺すという意味)が示すように、このチャシは戦場となった記録がある。
 江戸末期の蝦夷(えぞ)地探検家松浦武四郎が釧路を訪れた時の記録「東蝦夷日誌」には、「トミカラアイノが春採に城(ウライケチャシ)を築いたが、根室、厚岸、十勝の三方より攻められ落城した。その後、サルシナイに城(モシリヤチャシ)を築き、再び攻められたとき、今度は防いだ」(表記は現代語訳し簡単にした)と記されている。
 また釧路叢書(そうしょ)第15巻「春採湖」(74年、釧路市発行)は「ウライケチャシ跡からは拳大の自然礫(れき)が大量に出土した。投石用に違いない。戦闘で、この礫は大きな効果を発揮しただろう」などと書いている。
 イオル再生事業で、旧柏木小西側隣接地はオオウバユリやニリンソウの育成が予定されている。
イオル再生事業 アイヌ文化振興・研究推進機構(札幌)が行うアイヌ民族の伝統的生活空間「イオル」の再生事業。事業費は国と道が折半する。釧路市で行う事業予算は本年度912万円。イオル再生事業は、胆振管内白老町、日高管内平取町、札幌市などでも先行して進んでいる。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/187164

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「ゴールデンカムイ」4話。アシリパさんはまだまだ寂しがり屋のいたいけな子供だ

2018-05-08 | アイヌ民族関連
ニコニコニュース2018/05/07 09:45エキサイトレビュー
北海道を駆け回る「ゴールデンカムイ」4話。エンジンかかってきた。
アクション、グルメ(キナオハウとにしんそば)、アイヌの風習、自然、変顔、ドタバタ、バイオレンス。
ごちゃまぜが魅力のこの作品のノリを、ほぼ全部詰め込みつつ、テンポのよい展開でまとめている。
多すぎる題材は、キャラクターを表現するネタとして調理されているので、散漫な感じがない。
器用な回だ。
なお原作で人気のカワウソの頭を食べるシーンは、本編には入らなかったが、YouTubeの「ゴールデン道画劇場」でばっちり描かれている。
アイヌ集落の子供たち
序盤はアイヌ集落の生活が描かれている。3話同様に、うんちく満載だ。
アシリパ(リは小文字)と杉元は、エゾハナカジカを獲り、出汁を取った鍋を作る。捕獲から調理、食事の様子まで事細かに出てくるもんだから、深夜の飯テロもいいところ。
3話はアイヌの信仰がメイン。4話はアイヌの子供たちの様子にスポットを当てている。
中でもキサラリ(耳長おばけ。棒を窓の外からちらちら出して、この世のものとは思えない声で脅かす)の部分は、やりすぎなくらい尺をとって、丁寧に表現された。
杉元がアシリパにキサラリを渡されて、アイヌの子供たちを脅すように言われる。杉元は素直に引き受けて、演じようとする。
結果それはへっぽこなものになり、誰も驚かない。
「ひっこめ杉元、恥ずかしい。よこせ、手本を見せてやる」と言って演じたアシリパの声は、まさに「この世のものとは思えない声」で、子供たちは怯え上がってしまう。
何もかもが、微笑ましい。
アイヌの集落で、子供たちが大切にされているのが、とてもよく分かる。
アシリパは自然を生きる術を身に着けた、たくましいアイヌだ。
しかし集落では、他の子供たちと一緒に遊ぶ幼い少女なのが、このやりとりでよくわかる。
子供たちと棒を掲げ、楽しそうに笑っているアシリパの姿。
「大人びてはいるがアシリパは寂しがり屋のいたいけな子供なのだ」
「最近は随分と明るい。杉元さんと山にいるのが楽しいんだろう」
アシリパの叔父は言う。
本編では、強いアシリパしか出てこない。彼が来る前までは山に入って、レタラと孤独に暮らしていたのかもしれない。
だからこそ明るいキサラリの様子は、物語的には重要度は低いものの、このアニメには必須だ。
杉元のアイヌへの敬意も、3話4話では多く見られる。
キサラリをうまく演じようと四苦八苦。食事の際には風習にあわせて同じ仕草を取る。アシリパに怒られた時はストゥ(制裁棒)によるお仕置きを受ける。
「郷に入れば郷に従え」描写は、今後他のキャラにも適用されていくはずだ。
アイヌ語が通じないのに、フチの発言を聞いた杉元。ここは、彼なら気持ちを受け取れるはずだ、と視聴者が感じさせられる名シーン。杉元がファンに愛される所以だ。
みたらし団子の串
後半は死神こと鶴見中尉大活躍。
杉元を捕まえ、一緒にクーデターを起こすよう誘う彼。手段を選ばないとばかりに、兵士が杉元をぼこぼこにしている。
二階堂兄弟(猫目でハイライトがない坊主頭2人組)がリンチするシーンでの、口からゴボゴボ漏れる血の表現は必見。
特に目立つのは、尋問中にみたらし団子の串を杉元の頬に突き刺す場面だ。
鶴見中尉の冷酷さと、杉元の強靭な精神力がぶつかりあう。
鶴見中尉は直接殺すよりも、相手の耳を削ぐなど、痛覚に訴えてくるような行動が多い。
一方杉元は、耐える力がものすごく強い。不死身と呼ばれるだけあって、どこまで生き延びられるか、のようなチャレンジャーな場面が沢山出てくる。
この作品のバイオレンスは、キャラクターの性格に直結しているので、以降の展開でどのアクションに注力されていくか、しっかり見ておきたい。ヒグマとの戦闘やだんごの串を、ここまできっちり描けるスタッフなら、もっとやってくれると期待しています。(たまごまご)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3491187

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白老町の広報誌リニューアル 「カマド・ナナちゃん」正式デビュー

2018-05-08 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2018/5/7配信

 白老町の広報「元気」が、1日発行の5月号からリニューアルした。2020年4月に開設する民族共生象徴空間への機運を高めようと表紙にはアイヌ文様のアイウシを大きくデザイン。また、”広報公認キャラクター”として昨年から不定期で登場していた「カマド・ナナちゃん」も正式デビュー。”見る”から”読む”広報紙へとさまざまな工夫が凝らされている。
 毎月発行している広報紙は、民間委託先である町民活動サポートセンターの編集室が製作。行政からの一方通行の情報発信ではなく、町民と行政の双方向で情報交換できるよう、毎年度、編集方針を決めて特集を組んだり、催しなどの情報ページ「くらし百科」を枠組みで掲載するなど、読みやすい広報紙を目指している。
 こうした中、今年度は、開設まで2年を切った民族共生象徴空間への町民の関心を高めようと、表紙面にアイヌ文様を大きくデザイン。外枠の模様をアイヌ文様のアイウシで囲み、昨年からスタートさせた象徴空間整備の進捗状況の紹介と合わせて、アイヌ文化に対する町民理解を図っていく。
 また、昨年の7、9、11月と、今年3月に不定期で登場していた広報公認キャラクター「カマド・ナナちゃん」が正式デビュー。白老牛をベースに、特産品のキノコを手に持ち、体の薄いピンクは虎杖浜たらこを表現。しっぽには町の木ナナカマド、頭には町の花エゾヤマハギ、口は元気まちのシンボルマーク、袖にはアイヌ文様を施し、白老の魅力をギュッと詰め込んだキャラクターとなっている。
 キャラクターをデザインした、編集担当の杉本聖美さん(35)は「よく”ブタ?”と聞かれるけど、白老の特産などがギュッと詰まった女子力高めの女の子です」と説明。「町民目線を大事に、特集などでもナナちゃんが分かりやすく紹介したり、行政情報を分かりやすく知ってもらえるよう広報紙を通じて情報の案内役として登場させていきたいです」と今後の活躍に期待を寄せる。
 5月号では、これまで謎のキャラクターだったナナちゃんを紹介。「白老の魅力を1体で表現しているキャラクターなので、広報以外でも使ってもらえたら」と話している。
https://www.tomamin.co.jp/news/area2/13757/


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WHO総会登録きょう締め切り 台湾に招請状いまだ届かず | 政治

2018-05-08 | 先住民族関連
中央社フォーカス台湾 ·2018/05/07 12:52
(台北 7日 中央社)スイス・ジュネーブで21日から開かれる世界保健機関(WHO)年次総会への出席登録締め切り日となった7日、台湾には招請状が依然として届いていない。外交部や衛生福利部(衛生省)は、参加に向けて努力を続けていくとしている。
台湾は2009年から2016年まで8年連続でWHO総会にオブザーバー参加してきたが、昨年は中国大陸の圧力によって招請状が届かず、出席できなかった。今年は、外交関係を結ぶ国10カ国以上が台湾の出席に向けて働き掛けを行ったほか、米国や欧州連合(EU)などからも支持が表明されたものの、招請には悲観的な見方が広がっている。
外交部の李憲章報道官は6日夜、外交関係を持つ国や理念が近い国を通じてWHOに働き掛けをするなど引き続き努力をしていると説明。総会開会前日の20日には各国の政府高官を招いたレセプションを開き、期間中は各国や国際組織と二者会談をする計画を明らかにした。
陳時中・衛生福利部長(衛生相)は7日午前、現時点で招請状が届いていないことを明かした上で、最後の一刻まで努力するとした。招請されない場合も訪問団を組織してジュネーブを訪れ、全ての人が適切な医療サービスを負担可能な金額で受けられるようにする「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」(UHC)や防疫、高齢者の口腔ケア、台湾の先住民の健康の不平等などに関するフォーラムを開催すると説明した。
外交部によれば、2016年には登録締め切りの3日前に招請状が発送され、特殊な計らいによって登録手続きを完了させた前例があるため、出席登録は柔軟に調整できるという。
(侯姿瑩、張茗喧/編集:名切千絵)
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201805070001.aspx

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ニュージーランドから学ぶ“個性を伸ばす”教育--テクノロジは「あくまでも ...

2018-05-08 | 先住民族関連
CNET Japan 2018年05月07日 12時30分 藤井涼 (編集部)

 ニュージーランドと聞いて何を思い浮かべるだろうか。「広大な自然が広がっていて、羊が放し飼いにされている」――。そんな風景をイメージした人も多いだろう。確かに自然が豊かな国であることは間違いないが、実はニュージーランドは世界的に高い教育水準を誇る国でもある。ニュージーランド留学を支援する政府機関であるエデュケーション・ニュージーランド(ENZ)の協力のもと、3月に同国内のさまざまな教育機関を取材した。
 まず、ニュージーランドについて簡単に紹介すると、オーストラリアの東に位置する面積26万8000K㎡(日本は37万8000K㎡)ほどの島国で、約480万人が暮らしている。イギリスの植民地だったため欧州人の比率が高いが、移民政策によって人口の約4分の1が移民となっている。そのため、学校では十数カ国の生徒が同じクラスで学ぶことが当たり前で、人種による差別なども比較的少ないと言われている。先住民であるマオリの文化を尊重しており、公用語は英語とマオリ語、そして手話だ。ニュージーランド政府観光局によれば、2016年の日本人による年間渡航者数は約10万人。
 治安が良いことでも知られており、2017年の世界平和度指数ランキングではアイスランドに続き世界2位(日本は10位)。そのため、警察官は日頃、拳銃を持ち歩かないという。また、2016年の世界幸福度指数ランキングでは、ノルウェーやフィンランドを押さえて世界1位(日本は22位)に輝いた。働き方も特徴的で、国全体として残業を好まない文化があるため、18時になると飲食店を除きほとんどの店が閉まる。その後は、それぞれが家族や友人との時間を楽しむのだという。
 教育については、1980年代に教育委員会の制度が廃止され、私立だけでなく公立の学校においても校長に経営が委ねられているため、学校ごとに独自のカラーや教育理念がある。ただし、政府が厳しいモニタリング評価をしているため、国全体として高い教育水準を維持しているという。経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA)」において、ニュージーランドの生徒のスコアは、読解、数学、化学、いずれでも国際的な平均スコアを上回っている。また、公的教育への支出の割合が高い国でもあるという。
 なぜ、ニュージーランドの教育は世界的にも評価されているのか。同国内の学校をまわりながらその理由を探るとともに、日本でも徐々に導入が進んでいる教育機関におけるテクノロジ活用についても取材した。
女子生徒も積極的にテクノロジを活用
 ニュージーランドの首都ウェリントンで訪れた唯一の私立女子学校であるクイーン・マーガレット・カレッジでは、プレスクール(3~5歳、男女共学)と、1~13年生(5~18歳)の女子生徒が約700人通っている。ここで学年の数え方について補足すると、同国では1~8年生(5~12歳)までが小学校、9~13年生(13~18歳)までが中学・高校に通う。さらに進学する場合は、国立の総合大学や工科大学・ポリテクニック、私立の専門学校などに進む。
 2017年8月にクイーン・マーガレット・カレッジの校長に就任したジェーン=アン・ヤング氏によると、同校では教師の人材育成に力を入れており、(1)生徒がどうやって学んだのかを理解すること、(2)自分だけでなく後輩など他人もリードすること、(3)21世紀の社会に必要なスキルに対応する教育を提供すること、(4)教師が生徒に与えている影響をきちんと把握すること、という4つの柱を設けているという。また、これを教育理念として生徒たちにも伝えているとのこと。
 同校には現在4人の日本人が留学している。その目的は「ボランティアをするために海外の文化を知りたい」「日本の学校がつまらなくて違うことを経験したかった」「グローバルな獣医になりたくて英語を学びたかった」などさまざまだ。学校生活については「英語なのでついていくのは大変だけど、授業中の生徒の発言数がすごく多くて驚いた。教師も生徒の意見を尊重してくれるので、もし間違っていてもすぐに否定はしない」と同校ならではの魅力を挙げる。また、一部の必修科目を除き、半数以上の科目を生徒が自由に選べることも特徴だ。その内容は、ビジネス、エコ、マテリアルテクノロジ、ジオグラフィなど幅広い。自らのバックグラウンドを想像して、ポエムを読んだり演技をしたりするドラマというユニークな科目もあるという。
 教育におけるテクノロジの活用については、すべての教室にWi-Fiを完備。10歳以下の生徒にはタブレット端末を持たせ、10歳以上には1人1台ずつPC(ほとんどの生徒がMacを所有)を持たせている。また、テクノロジに関する科目として、7~9年生は「デザイン(テクノロジ)クラス」、10年生は「デジタルデザインクラス」が必修科目となっているという。
 まず7年生は、フェルト地を使った手縫いや縫製のほか、デジタル技術について学ぶ。続いて8年生は、複数のリサイクル素材に電子回路を付けた作品制作や、ミシン縫い・刺繍の方法、電子回路構築、はんだ付けなどについて学ぶ。9年生になると本格的なデジタル授業が始まり、デジタルデザインやウェブサイト制作、プログラミングなどについて学ぶ。そして、10年生は3Dプリンティングやデータ操作、より高度なプログラミングなどを学ぶという。
 ヤング氏は、女子生徒は共学よりも女子校の方がより成績が上がるとするPISAの調査結果を紹介し、「女子はテクノロジやサイエンスの分野において、男子に圧倒されてしまうところがある。(女子校の)クイーン・マーガレット・カレッジでは、女子も積極的にテクノロジを活用できる環境が整っている。また、日頃から『あなたたちが将来の女性のリーダーシップを担う』と伝えている」と話す。実際、過去にはプログラミングで頭角を現し、災害避難アプリを開発した女子生徒が国際コンテストで入賞し、ウェリントン災害対策室が関心を示したケースもあったようだ。
 ただし、ヤング氏はAIやIoT、プログラミングといった最新技術を使うこと自体を“テクノロジ活用”とは考えていない。「生徒は環境保護のことを考えて、リサイクル素材などを使ってドレスを作ることもあるが、私たちはこれも1つのテクノロジだと思っている。ITはあくまでもツールであって、何を実現したいのか、どんなアイデアを具現化したいのかという思いが大切だ」(ヤング氏)。
 また、生徒自身がそういったアイデアを見つけるためには、ただ教室の座学でノートを取るのではなく、自ら学びの機会を作ったり、デザインをしたり、質問をしたりすることに、より多くの時間を割くべきだと強調した。
酪農大国ならではのIoT教育
 ニュージーランドで最も大きな経済都市であるオークランドにあるマウント・アルバート・グラマー・スクールには、9~13年生の生徒が約2800人通っている。同校では、生徒の将来の方向性にあわせたカリキュラムを提供しており、生徒自身で責任を持って学ぶ、問題解決をする、忍耐力をつけるといった教育に重きを置いているという。
 日本とは評価の方法も異なる。日本では答えを暗記して間違えると点数が減る“減点方式”のテストが一般的だが、同校では答えの正否よりも、自分の考えを記述式で書かせ、その内容によって評価する“加点方式”のテストを採用しているという。日本人の留学生も約10人ほど通っているが、ある生徒は英語に苦労しながらも、「しっかり自分の意見を書かないといけないので、自分がいろいろな物事についてどう思っているのかを日本にいた頃より考えるようになった」と話す。
 同校の生徒は、近くにあるユニテック工科大学のキャンパスで、進学に向けたコンピュータサイエンスのクラスを受けることもできるという。また学内には、大きな農場も併設されている。日本では高齢化にともない離農者が後を絶たないが、それは酪農大国であるニュージーランドでも同じだという。そのため、テクノロジを一次産業に応用するための取り組みを進めているそうだ。たとえば、IoTによる蜂の巣の健康状態のモニタリングや、ロボットによる牛の搾乳など。2020年に新設する校舎にこれらのテクノロジを正式導入する予定で、すでに授業は始まっているという。
子どもの個性を伸ばす幼児教育「テファリキ」
 こうした個人の意見を尊重し、自由に学ばせるニュージーランドの教育の基礎を作っているのが同国の幼児教育だ。ニュージーランドでは1996年に、子どもの個性を伸ばすことを重視する教育カリキュラム「テファリキ」を打ち出した。
 テファリキは、(1)子ども自身に学ぶ力をつけさせるようサポートする「エンパワーメント」、(2)全人的な成長である「ホリスティックデベロップメント」、(3)家族やコミュニティの中で育つ「ファミリーアンドコミュニティ」、(4)さまざまな人や物事の関係性を学ぶ「リレーションシップ」という4つの原則に基づいており、すべての乳幼児教育施設 (幼稚園)がこの方針に則って運営しているという。
 今回の取材では、海や山に囲まれた自然豊かな街であるフィティアンガにある乳幼児教育施設のカウリ・ラーナーズを訪れた。中に入ると、子どもたちが部屋中を走り回ったり、おもちゃや粘土で物作りを楽しんだりしている。先生に目を向けると、自由に遊ぶ子どもを見守りながら必要に応じて近寄り、おもちゃの遊び方や道具の使い方などを教えていた。
 カウリ・ラーナーズのマネージャーであるマキシーン・マクロビー氏は、「この施設では、お互いをリスペクトし、思いやる気持ちを育めるよう、それぞれの子どもが一番伸びる形でサポートしている。たとえば、子どもが鼻水を垂らしていても勝手に拭いたりせず、先生から本人に拭いてもいいか断りを入れる。こうした大人と同じように個人を尊重した教育を続けることで、子どもたちは従来よりも交流を好むようになった」と話す。
 実は、このカウリ・ラーナーズの経営者は日本人。世界100カ国以上の大学が入学資格として認めている「国際バカロレア(IB機構)」初等教育プログラムの日本第1号に認定された、岐阜県のサニーサイドインターナショナルスクールを経営している渡辺寿之氏が、2015年12月にニュージーランドに設立した乳幼児教育施設だ。スタッフもすべて現地で採用しており、生徒もニュージーランドの子どもが中心だという。
 同国で乳幼児教育施設を立ち上げたきっかけは、当時小学生だった息子の不登校だったと渡辺氏は振り返る。他の進路を模索する中で、息子がニュージーランドでの短期留学に興味を持ち、試しに共に行ってみたところ、渡辺氏自身も同国の教育に魅力を感じるようになり、現地に乳幼児教育施設を設立することを決めたという。「もともとニュージーランドの生徒主体の教育や、考えさせる教育、失敗から学ぶ教育には興味があった。人の才能はマルチで、運動が得意な子もいればアートが好きな子もいる。時代が変わるなかで、我が子も含めて日本の一斉的な教育にはフィットしていないと思った」(渡辺氏)。
 教育そのものにとり入れているわけではないが、テクノロジも活用している。カウリ・ラーナーズを含むニュージーランドの多くの乳幼児教育施設では、子どもたちの成長記録を「Storypark(ストーリーパーク)」というサービスに残している。それぞれの担任の先生が子どもたちの日々の過ごし方を写真にコメントをつけて記録。そのページに両親や祖父母がいつでもアクセスできるようになっている。料金は生徒1人あたり月額9.90NZD(1NDZ=約77円)ほどだという。
自然の中で身につける“忍耐力”
 森の中にある乳幼児教育施設リバーリー・アーリー・ラーニング・センターも訪れた。同園では、“子どもを自然に帰す”ことをコンセプトにしており、座学よりも、大自然の中で遊び、体を動かして経験を積むことを大切にしているという。ただし、テクノロジを一切使わないわけではなく、自然の中でiPadの教材を使ったりすることもあるそうだ。
 同園のディレクターであるカースティ・ミレン氏は、自然の中で育った子どもは2つのスキルを身につけると話す。1つ目は「忍耐力」。たとえば、雨が降ってもすぐに部屋に入るのではなく、レインコートを着て泥だらけになって遊ぶ経験をすることで、その後の人生でもさまざまな環境に適用できるようになると考えている。そして、2つ目は「リスクテイカー」になれること。日本では先生が最初から問題の答えを教えてしまったり、保護者からのクレームを恐れて怪我や失敗をさせない園も少なくないが、ミレン氏は自然の中で想像力を膨らませて遊んだり物作りをしながら、時には失敗したり怪我をしたりすることで、より子どもの豊かな成長を促せるのではないかと語った。
 この2つの乳幼児教育施設には、サニーサイドインターナショナルスクールのスタッフである2人の女性が親子留学で訪れていた。2週間の短期間で子どもを現地の乳幼児教育施設に預け、自身も英語学校などに通うというものだ。参加者である母親は、「小学校受験に向けて、子どもが小さなうちから夜遅くまで塾に通わせる詰め込み型の教育には違和感があった。小さい時だからこそ、人間性やその後の軸となるものが必要。勉強よりもまずはコミュニケーション力などを養ってほしかった」と、親子留学に参加した理由を話す。
 また、2週間ほどの参加を通じた気づきとして、「短期間でも5歳の娘の成長は著しい。最初は服が汚れることも嫌がっていたけれど、いまでは平気で汚れることを楽しんでいるし、以前より自立するようになった。また、(リバーリー・アーリー・ラーニング・センターは)大人と同じものを生徒にも使わせる。マグカップもプラスチックではなく割れる陶器のマグカップ。小さいうちから本物を使う経験をすることで生きる力につながっていくと思う」と我が子の成長を喜んでいた。
 今回の取材では、幼稚園から高校までの幅広い教育機関を回ったが、いずれの学校においても共通していたのが、一人ひとりの生徒を尊重し、たとえ幼稚園児であっても子ども扱いしないことだ。個性を伸ばす教育であるテファリキの精神が、教科や日々の授業・試験内容などにも表れており、これが同国の高い教育水準にもつながっているのだろう。もちろん、日本とは国の成り立ちや人口の規模、また人種の数も異なるが、グローバル化が避けられない現代において、同国の教育から学ぶことは少なくないだろう。
取材協力:ニュージーランド大使館 エデュケーション・ニュージーランド(ENZ)、ニュージーランド航空
https://japan.cnet.com/article/35118488/

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