北海道新聞 04/21 05:00
今月24日に胆振管内白老町にオープン予定だったアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が、新型コロナウイルスの影響で5月29日に開業延期になった。17年前に亡くなった父が元気でいたら、きっと「ウポポイができるからみんなでおいで」と言っただろう。
今から23年前の10月、突然父は、白老へ移り住んだ。十勝から出たことのない母が毎日、行きたくないと言うかたわらで、父は着々と準備を進めていた。
父は十勝管内で教員として勤務していたが、大病をきっかけに早期退職し、四六時中、温泉に入れる家を白老に建てた。自然豊かで、「元気まち」と言われるお年寄りにもやさしい白老に大満足だった。
そして転勤して歩いた人生を振り返り、私と姉、弟の3人の子供たちに「ふるさとをつくってあげたかった」と言っていたのを思い出す。遊びに行くと、父は孫たちを楽しませようと流しそうめんをしたり、庭の畑でイチゴや野菜の収穫を体験させたりしてくれた。
数えきれないほどの峠を越え、道東道を通って十勝から通ったが、年々、車の運転もきつくなる。1年前に母も亡くなり、父のつくってくれた「ふるさと」は遠く感じるようになった。
今年、白老の家を手放すことを決めた。お父さんごめんね。生まれ育った十勝が私のふるさとだわ。新型コロナが落ち着いたら、ウポポイに行くよ。
谷村洋永(たにむら・ひろえ 66歳・無職)=帯広市
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/414084
今月24日に胆振管内白老町にオープン予定だったアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が、新型コロナウイルスの影響で5月29日に開業延期になった。17年前に亡くなった父が元気でいたら、きっと「ウポポイができるからみんなでおいで」と言っただろう。
今から23年前の10月、突然父は、白老へ移り住んだ。十勝から出たことのない母が毎日、行きたくないと言うかたわらで、父は着々と準備を進めていた。
父は十勝管内で教員として勤務していたが、大病をきっかけに早期退職し、四六時中、温泉に入れる家を白老に建てた。自然豊かで、「元気まち」と言われるお年寄りにもやさしい白老に大満足だった。
そして転勤して歩いた人生を振り返り、私と姉、弟の3人の子供たちに「ふるさとをつくってあげたかった」と言っていたのを思い出す。遊びに行くと、父は孫たちを楽しませようと流しそうめんをしたり、庭の畑でイチゴや野菜の収穫を体験させたりしてくれた。
数えきれないほどの峠を越え、道東道を通って十勝から通ったが、年々、車の運転もきつくなる。1年前に母も亡くなり、父のつくってくれた「ふるさと」は遠く感じるようになった。
今年、白老の家を手放すことを決めた。お父さんごめんね。生まれ育った十勝が私のふるさとだわ。新型コロナが落ち着いたら、ウポポイに行くよ。
谷村洋永(たにむら・ひろえ 66歳・無職)=帯広市
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/414084