北海道新聞11/12 05:00

ミネアポリス美術館で開かれた、日本の織物に関する特別展。特にアイヌ民族の文化に焦点を当てました(広田孝明撮影)
アメリカ中西部ミネソタ州のミネアポリス美術館で、アイヌ民族の衣装などをしょうかいする特別展が開かれました。北海道と同様に先住民族が多く住むミネソタ州。展示されたアイヌ民族の伝統的な衣装や道具は、訪れた人たちから高く評価されました。
「いくつかのアイヌ民族の衣装は、デザインや色使いがとても勇壮で現代的。とてもおどろかされました」。ミネソタ州に住む大学職員クリストファー・ケリーさん(46)は、感動した様子でこう語りました。
ミネアポリス美術館の特別展「自然による装い―日本の織物」は6月から9月まで開かれ、江戸時代中ごろから戦後間もないころまでの、日本各地の織物や衣装などを展示しました。
特に焦点を当てたのがアイヌ民族です。木の皮から作った糸で織る「アットゥシ」の衣装や、儀式で酒をささげるのに使う「イクパスイ」、マキリ(小刀)など、約30点が並びました。大半は北海道のもので、一部にロシア・サハリン州のアイヌ民族のものもふくまれます。多くは、美術館が2019年にアメリカ人の収集家から購入しました。
学芸員のアンドレアス・マークスさんは、特別展を通して「世界の織物の多様性」を示したかったそうです。「来場者の反応もとても良いものでした」。来場者数は目標の1万8千人を大きくこえて約2万3千人。企画が気に入って5回も訪れた人もいました。
7月にはミネソタ州のセントオラフ大学の研究者、クリスティーナ・スパイカーさんの講演がありました。展示について解説したほか、アイヌ民族が最初にアメリカにわたったのは、1904年(明治37年)に中西部のミズーリ州で開かれた万国博覧会で伝統的な生活を見せるためだったこともしょうかいしました。
スパイカーさんによると、北海道にはアイヌ語に由来する地名が数多くありますが、先住民族の多いミネソタ州にもそのようにして名付けられた地名がたくさんあるということです。
衣装や道具に表れた感性にも共通点があるようです。特別展を見た地元のベッツィ・ロビンソンさんは「アイヌ民族の生活様式や芸術的感性は、アメリカの先住民族ととてもよく似ていました」と指摘します。
自分も織物をするロビンソンさんが心を動かされたのは「実用品が芸術に進化していく様子」でした。身近で得られる素材を使った実用品である一方、技術が洗練され、衣装自体が「創造性を表現するキャンバスになった」と言うのです。
「アイヌ民族とアメリカの先住民族の文化には、資源が限られた世界で生きていくための重要なメッセージがこめられています。私たちは貴重な教訓を学ぶべきです」。ロビンソンさんが感じたように、先住民族の生活はサステナブル(持続可能)な社会のかぎになると注目されています。(ワシントン駐在 広田孝明)
※「アットゥシ」の「シ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/757798/


ミネアポリス美術館で開かれた、日本の織物に関する特別展。特にアイヌ民族の文化に焦点を当てました(広田孝明撮影)
アメリカ中西部ミネソタ州のミネアポリス美術館で、アイヌ民族の衣装などをしょうかいする特別展が開かれました。北海道と同様に先住民族が多く住むミネソタ州。展示されたアイヌ民族の伝統的な衣装や道具は、訪れた人たちから高く評価されました。
「いくつかのアイヌ民族の衣装は、デザインや色使いがとても勇壮で現代的。とてもおどろかされました」。ミネソタ州に住む大学職員クリストファー・ケリーさん(46)は、感動した様子でこう語りました。
ミネアポリス美術館の特別展「自然による装い―日本の織物」は6月から9月まで開かれ、江戸時代中ごろから戦後間もないころまでの、日本各地の織物や衣装などを展示しました。
特に焦点を当てたのがアイヌ民族です。木の皮から作った糸で織る「アットゥシ」の衣装や、儀式で酒をささげるのに使う「イクパスイ」、マキリ(小刀)など、約30点が並びました。大半は北海道のもので、一部にロシア・サハリン州のアイヌ民族のものもふくまれます。多くは、美術館が2019年にアメリカ人の収集家から購入しました。
学芸員のアンドレアス・マークスさんは、特別展を通して「世界の織物の多様性」を示したかったそうです。「来場者の反応もとても良いものでした」。来場者数は目標の1万8千人を大きくこえて約2万3千人。企画が気に入って5回も訪れた人もいました。
7月にはミネソタ州のセントオラフ大学の研究者、クリスティーナ・スパイカーさんの講演がありました。展示について解説したほか、アイヌ民族が最初にアメリカにわたったのは、1904年(明治37年)に中西部のミズーリ州で開かれた万国博覧会で伝統的な生活を見せるためだったこともしょうかいしました。
スパイカーさんによると、北海道にはアイヌ語に由来する地名が数多くありますが、先住民族の多いミネソタ州にもそのようにして名付けられた地名がたくさんあるということです。
衣装や道具に表れた感性にも共通点があるようです。特別展を見た地元のベッツィ・ロビンソンさんは「アイヌ民族の生活様式や芸術的感性は、アメリカの先住民族ととてもよく似ていました」と指摘します。
自分も織物をするロビンソンさんが心を動かされたのは「実用品が芸術に進化していく様子」でした。身近で得られる素材を使った実用品である一方、技術が洗練され、衣装自体が「創造性を表現するキャンバスになった」と言うのです。
「アイヌ民族とアメリカの先住民族の文化には、資源が限られた世界で生きていくための重要なメッセージがこめられています。私たちは貴重な教訓を学ぶべきです」。ロビンソンさんが感じたように、先住民族の生活はサステナブル(持続可能)な社会のかぎになると注目されています。(ワシントン駐在 広田孝明)
※「アットゥシ」の「シ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/757798/