テレ朝news1/20(月)18:00
日本時間21日未明、アメリカのトランプ次期大統領の就任式が行われる。トランプ氏は就任式を前に開いた支持者集会で「アメリカを再び偉大な国にする」と訴えた。
■トランプ氏が称賛…マッキンリー元大統領とは
第25代 ウィリアム・マッキンリー米大統領
まず、トランプ氏がお手本にしたのではとも言われる元大統領について見ていく。
その人物が第25代アメリカ大統領のウィリアム・マッキンリー大統領だ。在職は1897年から1901年。大不況から回復に向かうアメリカを率いた共和党の大統領で、かつては500ドル札の肖像画にも採用されていた。
また、アラスカ州にある北アメリカの最高峰「デナリ山」は、マッキンリー政権が誕生する前年の1896年、期待を込めて「マッキンリー山」と名付けられた。
ただ、2015年に当時のオバマ大統領が、先住民が使っていた名称に戻そうということで、現在は「デナリ山」に戻っている。
これに関してトランプ氏は先月22日、「マッキンリー山の名前を取り戻す。彼はそれに値する」と言っている。
なぜトランプ氏はマッキンリー元大統領にシンパシーを感じているのか?主張が似ているようだ。
「領土的野心」で帝国主義列強の地位を確立
1890年代、アメリカは西部開拓がほぼ終わっていたことから、マッキンリー元大統領は膨張政策を海外へと拡大していった。
中南米に影響力を持っていたスペインに宣戦布告し、1898年に「米西戦争」を起こした。アメリカは勝利し、当時スペインの植民地だったフィリピン、グアム、プエルトリコを領有した。キューバは併合こそしなかったものの、アメリカが事実上支配する「保護国」となるなど、この地域で影響力を強めていった。
これに続く形でハワイの併合も1898年に行われた。当初ハワイ先住民やアメリカ議会は反対していたが、米西戦争で真珠湾の軍事的価値が高まったことから併合となった。マッキンリー元大統領は帝国主義列強におけるアメリカの地位を確立させた人物といわれている。
トランプ氏の最近の主張をみてみると、「グリーンランドの買収」、「パナマ運河の管理権要求」、「カナダを51番目の州にする」などと言っていて、マッキンリー元大統領と同じように、領土拡大の意欲を見せているようにもみえる。
「保護貿易のナポレオン」の異名
また、マッキンリー元大統領は、「保護貿易のナポレオン」という異名を持っていたという。
CNNによると、1890年下院議員だった時代、輸入品に平均30%〜40%の関税をかける“マッキンリー関税法”を成立させた。
これにより関税収入が急増し、アメリカ政府の主要財源になった。こういった保護貿易政策を強力に推し進めた様子を強権的な指導者ナポレオンに見立て「保護貿易のナポレオン」とも呼ばれるようになったという。
これについてもトランプ氏は「マッキンリー氏は莫大(ばくだい)な資金を我が国にもたらした」「この時ほど(アメリカが)豊かだった時代はない」と称賛した。
その一方で、輸入品だけでなくあらゆる物価が上昇したことで、低所得層に打撃を与えた。結局、1901年に格差拡大に不満を持った無政府主義者によって、2期目の途中で暗殺された。
■“トランプ関税”狙いは中国産業の衰退か
米中の“トップ”が会談
高い関税政策を打ち出すトランプ氏だが、その背景には自国産業を守るだけではなく、中国の産業を衰退させる狙いがあるのだろうか。その米中関係が、早くも動き始めているという。
1月17日、トランプ氏と中国の習近平国家主席が電話会談を行った。去年11月のアメリカ大統領選後、両者の直接対話が公になるのは初めてだという。
トランプ氏は電話会談の内容についてSNSに投稿。アメリカと中国の貿易問題などを議論したと明かした。また、ウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ氏の側近の話として「トランプ氏は就任後100日以内の訪中に意欲を示している」と伝えた。
中国 関税リスク回避の動き
アメリカとの貿易を巡り、中国はこれまで関税リスクを軽減させる動きをとってきた。
トランプ政権1期目では、アメリカは中国に対して多くの品目で10%を超える追加関税をかけるなど貿易摩擦が激化していた。これに対応する形で中国は製造拠点をメキシコなどに建設し、メキシコからアメリカに輸出することで関税を抑える対策をとっていた。
ただ、こうしたことについて、政治専門メディアのポリティコによると、トランプ氏は去年10月に中国メーカーがメキシコからアメリカに自動車を輸出しようとしていると指摘し、「必要であれば100%、200%、1000%の関税だって課す。中国メーカーにアメリカで自動車を販売させない」と第三国を経由して関税を回避する動きに厳しく対応する姿勢を示した。
かつて日米でも同様の問題が
実は、この構図はかつて日米間にもあった構図だ。
1970年代、アメリカがインフレ、景気停滞となるなかで、GDPで世界2位の日本は対アメリカ輸出を拡大していった。
1980年代にはアメリカの対日貿易赤字が拡大したことでアメリカ国内での対日感情は悪化。日本製品を破壊する「ジャパン・バッシング」などの問題が起きた。
日本車メーカーなどは貿易摩擦を回避する目的でアメリカやヨーロッパに工場を建設していった。ただ、これらは、日本において国内生産の低下や雇用の減少を招き、「産業の空洞化」の要因にもなった。
国際ジャーナリストの春名幹男さんは「中国に高関税をかけるトランプ氏の狙いは『アメリカの産業を守る』だけでなく『中国の産業を衰退させる』ことにもある」と指摘している。
■トランプ新政権に北朝鮮は?
復権なら北朝鮮の核保有「容認」検討?
トランプ氏が大統領になることでアメリカの対北朝鮮政策はどうなっていくのかを注目していく。
米政治専門メディアのポリティコはおととし12月、トランプ氏が大統領選で返り咲きを果たした場合、北朝鮮の核兵器保有を事実上容認することを検討していて、核開発の凍結と引き換えに経済制裁を緩和する計画だと報じた。
その後、トランプ氏はSNSで報道内容を否定し、その上で「金正恩氏とは仲良くしている」とも投稿したという。
次期米国防長官候補「北朝鮮は核保有国」
そして、ここへきてヘグセス次期アメリカ国防長官候補の「北朝鮮は核保有国」という考えが物議を醸している。
1月14日にトランプ氏が指名した閣僚候補に対する公聴会が始まった。ヘグセス氏は議会に事前に提出した書面の中で、「核保有国としての地位」「核弾頭を運搬可能なミサイルの長射程化」が地域の安定にとって脅威になっていると北朝鮮を「核保有国」と表現した。
アメリカ政府は1期目のトランプ政権も含めて「朝鮮半島の非核化」を目指していて、北朝鮮を「核保有国」とは認めていない。
国防長官候補のこうした考えに関して韓国メディアの中央日報は「トランプ政権の対北朝鮮核政策の転換を予告する前兆ではないか憂慮される」と報じている。
米国防長官候補 ピート・ヘグセス氏とは?
では、このヘグセス氏とはどんな人物なのか?
ピート・ヘグセス氏(44)。陸軍でイラクやアフガニスタンへ従軍した後、保守系メディア「FOXニュース」で8年にわたって番組の司会者を務めた。
ただ、政府や軍で要職を務めた経験はなく“アマチュア国防長官”とも揶揄(やゆ)されているという。
また、北朝鮮をめぐる問題以外にも、公聴会でASEAN加盟国の数を答えられないということがあった。過去に女性への性的暴行容疑で捜査されているとの報道もあり、閣僚としての資質を疑問視する声が出ているという。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年1月20日放送分より)
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/tvasahinews/world/tvasahinews-900016718