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トランプ政権下で試される北極圏の回復力と若者の挑戦

2025-02-11 | 先住民族関連

 

鐙麻樹 北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事 2/10(月) 11:01

トランプ大統領の政策により、北極圏への国際的な注目が再燃している。

グリーンランドやアラスカには、植民地主義の名残と気候変動が絡み合い、現地のコミュニティはすでに深刻な影響を受けている。これらの課題にどのように対応していくかが、北極ユースカンファレンスで討議された。

筆者撮影

ここで鍵となるのは、「困難を乗り越え、しなやかに立ち上がる力」、すなわちレジリエンスだ。最北の地では、自給自足の継続や連帯が、まさに生存手段として機能している。

ヘイトの対象となるトナカイ飼育コミュニティ

北極圏の先住民にとって、トナカイ飼育は伝統的な生業の一つである。しかし、再生可能エネルギー開発をその根拠に、従来の飼育環境が脅かされている。さらに、トナカイ飼育に従事する先住民は、ヘイトスピーチや差別の標的となる。

トナカイ飼育国際センターのプロジェクト・マネージャー、Marina Tonkopeeva氏は、「世界各地のトナカイ飼育コミュニティのレジリエンスを高める必要がある」と強調した。

北極圏のことは、西洋科学だけでは解決できない

トナカイには独自のルーツがあり、その移動集団がダメになるということは、システム全体がダメになるということです。地域社会のレジリエンスを高めるには、若者と協力することが本当に重要。

北極圏で起こっていることを見ればわかるように、西洋の科学は通用しません。北極圏では、先住民の知識に従う必要があります。

『博士号』と『土地や水辺で育った経験』は比較にならない。比べること自体が無意味なのです。

知識体系のレジリエンスと、先住民を理解せずに開発する人々

開発に関しても、先住民の知識とは何かを知らず、先住民の生計を理解しない人々によって決定されている。だからこそ、先住民の知識を保護し、それを政策に反映させ、伝える必要がある。そうMarina Tonkopeevaさんは語った。

先住民の知識は科学である、共感だけでは変わらない

北極圏は先住民の土地であり、私たちは決して北極圏を離れることはありません。だか

ら、喪失や破滅を考えるのはやめてほしい。それはひどいことだし、最悪だし、怖いし、心が痛むし、悲しいことだ。でも、共感しても世界は変わらないのです。

パレスチナで起きていることを見てください。共感したり、訴えたりしても、世界を変えることはできません。だから、私の変革の理論はむしろ、すべての世代が自分らしく、先住民であることを奨励し、力を与えることに根ざしています。

北極圏に住み続けられるよう、自分のやりたいこと、好きなことをやり、未来を築いていきましょう。

アラスカで育ち、米国国防総省助教授であるHaliehana Stepetin博士

先住民には大勢の前で話すことを断る人が多い?

北極圏の課題解決に向け、多くの人々がリーダーシップを発揮することが求められるが、実際には公の場で発言することにためらいを感じる人が多い。

アラスカ在住の先住民アレウト族のアレウト国際協会ユース代表、Brandon McIntireさんは、幼少期から家族が部族評議会などに参加する姿を間近で見たため、本人は発言にためらいがないとする。

一方で、能力や経験があっても「大勢を前にして話すのは気が進まない」と断る人が多い現状を指摘した。

若いリーダーを育てるためには何が必要か、カンファレンス後の取材に答えてくれたBrandon McIntireさん 筆者撮影

「全ての先住民を代表」しているかのように受け取られる重圧

先住民の若者として、公の場で発言するのは難しいと思います。なぜなら、「全てのユピック民族を代表して発言している」かのように感じられるからです。

「自分の文化や家族の信念や慣習を誤って伝えたりしたくない」という思いから、大きなプレッシャーを感じます。

だからこそ、Brandon McIntireさんは、ロールモデルとなるリーダーの育成のためには、若者だけでなく、意思決定者や政策立案者も参加する北極ユースカンファレンスのような場がもっと必要だと考える。

メンター制度をもっと気軽に広めるだけでも、レジリエンスは養われる

さらに、公の場で発言する人を増やすためには「メンター制度」が効果的だと強調した。といっても、そのような制度を立ち上げる必要はなく、自分が先輩として仕事場を見せるだけでもいいのだ、と話す。

ただ、あなたの仕事場に連れていくだけでも、立派なメンター制度なのだと、Brandon McIntireさんは話した。

例えば、父親からレストラン経営の方法を学び、彼が引退したらあなたがそれを引き継ぐ。あるいは、会計士であるあなたが、高校生に職場を見せ、何をしているのかを説明する。週に一度話すだけでも、若者が仕事に慣れ親しむきっかけになる。大切なのは、彼らを巻き込み、実際の現場を見せることなのです。

執筆後記

北欧諸国は「若者がものごとの決定プロセスに参加する」ことを積極的に推進しているが、「北極圏×先住民コミュニティ」という舞台になると、ユースに対する期待や希望、そして重圧はさらに大きいと取材をしていて感じる。

さらに、気候危機とトランプ大統領の言動がさらに危機感とあせり募らせているようだ。米国から広まる植民主義的な土地所有の動きに対して、最北の地のコミュニティは、従来以上のレジリエンス強化を余儀なくされている。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3174e5868ca50931123be02bb9747616d860f9d8

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