朝日新聞 2011年7月15日
ジャズ歌手の熊谷たみ子さん(59)は一昨年末、仲間20人とカラオケボックスにいました。リクエストされて「アメージング・グレース」を歌うと、場がしんと静まりかえりました。歌い終わると、一人に言われました。「この歌、アイヌ語で歌ったら?」。仲間とは、アイヌ民族の集まりの関係者でした。
熊谷さんが、アイヌ民族であることを公言し、アイヌ語で歌い始めたのは昨年からです。大腸がんが再発し、「余命1年」と宣告されたのがきっかけでした。
熊谷さんは北海道・本別町でアイヌ民族の両親の間に生まれました。町には偏見や差別が残っており、小学校に入ると男の子たちに石を投げられたそうです。中卒で、差別を逃れて集団就職で上京しました。整った目鼻立ちが東京・渋谷でスカウトの目に留まり、20歳の頃に歌手デビュー。歌謡曲のレコードを出しましたが売れず、ジャズ歌手に転向しました。結婚、出産後は結婚式やイベントで歌ってきました。
故郷のように露骨ではありませんが、東京でも差別は感じました。仕事相手に出自を知られるのが怖くて逃げたこともあります。同胞の集まりも避けました。ところが50代半ば、子育ても一段落した4、5年前に「誘われて、なぜか」アイヌ民族の集まりに参加しました。
アイヌはアイヌ語で「人間」を意味します。同化政策で言葉や文化を奪われたアイヌ民族を、政府が官房長官談話で「先住民族」と認めたのは2008年のことです。「アメージング~」は、迫害され故郷を追われた黒人が、ゴスペルソングとして歌い継いだ歌です。その経緯が自分たちの歴史と重なり、熊谷さんはこの歌に興味を覚えました。
アイヌ語版の「アメージング~」は、アイヌ民族の神「カムイ」の恵みに感謝を捧げ、こう歌います。「古い生き方を嫌ったこともあったけど、いまはアイヌの生き方を愛している」
熊谷さんのアイヌ語版だけでなく、古謝美佐子さん(57)は琉球語でこの歌を歌います。その訳は……。
(続きは7月16日付け朝刊の別刷り「be」をお読みください。)
http://www.asahi.com/shopping/tabibito/TKY201107140386.html
ジャズ歌手の熊谷たみ子さん(59)は一昨年末、仲間20人とカラオケボックスにいました。リクエストされて「アメージング・グレース」を歌うと、場がしんと静まりかえりました。歌い終わると、一人に言われました。「この歌、アイヌ語で歌ったら?」。仲間とは、アイヌ民族の集まりの関係者でした。
熊谷さんが、アイヌ民族であることを公言し、アイヌ語で歌い始めたのは昨年からです。大腸がんが再発し、「余命1年」と宣告されたのがきっかけでした。
熊谷さんは北海道・本別町でアイヌ民族の両親の間に生まれました。町には偏見や差別が残っており、小学校に入ると男の子たちに石を投げられたそうです。中卒で、差別を逃れて集団就職で上京しました。整った目鼻立ちが東京・渋谷でスカウトの目に留まり、20歳の頃に歌手デビュー。歌謡曲のレコードを出しましたが売れず、ジャズ歌手に転向しました。結婚、出産後は結婚式やイベントで歌ってきました。
故郷のように露骨ではありませんが、東京でも差別は感じました。仕事相手に出自を知られるのが怖くて逃げたこともあります。同胞の集まりも避けました。ところが50代半ば、子育ても一段落した4、5年前に「誘われて、なぜか」アイヌ民族の集まりに参加しました。
アイヌはアイヌ語で「人間」を意味します。同化政策で言葉や文化を奪われたアイヌ民族を、政府が官房長官談話で「先住民族」と認めたのは2008年のことです。「アメージング~」は、迫害され故郷を追われた黒人が、ゴスペルソングとして歌い継いだ歌です。その経緯が自分たちの歴史と重なり、熊谷さんはこの歌に興味を覚えました。
アイヌ語版の「アメージング~」は、アイヌ民族の神「カムイ」の恵みに感謝を捧げ、こう歌います。「古い生き方を嫌ったこともあったけど、いまはアイヌの生き方を愛している」
熊谷さんのアイヌ語版だけでなく、古謝美佐子さん(57)は琉球語でこの歌を歌います。その訳は……。
(続きは7月16日付け朝刊の別刷り「be」をお読みください。)
http://www.asahi.com/shopping/tabibito/TKY201107140386.html