20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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新刊2作ご紹介

2012年07月07日 | Weblog
 新刊を6冊ほどご恵贈いただいておりますが、ばたばたしているためご紹介がたいへん遅れてしまい申し訳ございません。
 本日は、そのうち2作のご紹介を。

            

『ヴァンパイヤの恋人 誓いのキスは誰のもの?』(越水利江子・ポプラカラフル文庫)
 ご存知、越水利江子さんのロマンティック・ホラーのシリーズの第1巻です。
 この物語には、女の子たちがわくわくするような小道具や、色彩豊かなうつくしい描写がたくさん出てきます。
 少女マンガに登場するようなすてきな男の子たちとうつくしい主人公。ヴァンパイヤのぞっとするようなうつくしさと冷たさ。
 それらを耽美的とも思えるうつくしい筆致で描いているのですから、人気がでないはずがありません。

 ストーリーは、母親と二人暮らしだった主人公の「ルナ」が、母親の死と共に、ある島のある学園に連れていかれるところからはじまります。
 母親からもらったラピスラズリの石のはめこまれたペンダントを身につけて。
 
 越水利江子さんは、この作品の中でさまざまな素養を垣間見せてくれています。
 絵画的素養、石へのこだわり、好きな絵本へのこだわり、そしてうつくしい男たちとの恋物語・・・。
 長年きっと胸のなかに溜めてきた、そういった素養がこの作品で一気に花開いているのを感じることができます。
 島の王家である父親との関係(1巻ではまだ姿を見せておりませんが)そして、ヴァンパイヤとの関係。
 母親を亡くした、このうつくしき王家の姫は、これからどんな人生を歩いていくのでしょう。
 わくわくと興味を惹かれながら、ストーリーは2巻へと続きます。

            


『まぼろしの薬売り』(楠章子・あかね書房)
 薬のぎっしりつまった、重たい柳行李を背負った師匠の「時雨」と弟子の「小雨」は、医者にもかかれず病に苦しんでいる村々の人びとを助けるため、ふたりで旅を続けています。
「時雨」は、親姉弟を亡くし、絶望の淵を彷徨っているとき、仙人に出会います。そこでいろいろな生きる術を教えてもらうのです。
 薬屋として生きているのも、その時教わった薬草の研究がはじまりです。
 また「小雨」も、はやり病で村の人びとが次々と亡くなる中、生き残った少年です。
 ひょんなことからその少年を助けたことで、ふたりはこうして薬屋としての旅に出ているのです。
 ふたりともこころの奥底に深い傷を背負い、だからこそ病に倒れている人びとに対し、誠実に向き合えるのでした。

 そのふたりの出会った村のいろいろな物語がここには収録されています。
「椿屋敷の娘」「なみだ病の生き残り」「バカ吉の薬」「土もこの目玉」
 ひとつひとつの物語の奥には、深い人生が横たわっています。生きること。死ぬこと。
 それらと真正面から向き合っています。
 そんな物語を包んでいるエッセンスは、やさしさ。
 楠さんの人間を見つめるやさしいまなざしが、どのお話からもじわっと沁みてきます。
 やさしい、女のような「時雨」と、元気のいい「小雨」の関係にもご注目ください。

 皆さま、ぜひお読みになってください。

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