友人の皆さんの新刊を3冊ご紹介いたします。
他にもあと2冊ご恵贈いただいているご本があるのでご一緒にと思っていたのですが、あれこれと忙しく、なかなか拝読できません。
そんなわけで、今回は3冊だけご紹介。
『ひっこしはバスにのって』(季巳明代・銀の鈴社)
お母さんとお引っ越しのためバスに乗っているシーンから,お話ははじまります。
「ミミ」は、山を切り崩しニュータウンになる、いままで暮らしていた町を離れ、遠い山奥の村へとお引っ越ししていくのです。なのはなばたけ。やまのみち。むらさきのすみれ。たんぽぽ。
それらを描写しながら「ミミ」の思いを描く、季巳さんのやわらかく、あたたかな文章に、くぼたまなぶさんの絵が丁寧に寄り添い、雰囲気のある世界を描き出しています。
バスに大きな荷物を持った女の人が乗り込んでくるあたりから、なぜ「ミミ」親子が山奥へ引っ越していくのか。スリリングな展開になっていきます。
こういう、どんでん返しの面白さを見事につかまえるところが、季巳明代さんの真骨頂です。
また、この絵本の原画展が、2月25日(土)~3月11日(日)まで「銀の鈴社」のギャラリーで行われます。
(鎌倉市雪ノ下3-8-33 TEL0467-61-1930)お近くの方は、ぜひ足をお運び下さい。
『青銅の洗面器』(小林雅子・こども四季の森)
詩人・小林雅子さんの第一詩集です。ここには41編の詩がおさめられています。
小林雅子さんの詩を、こんなまとめて読ませていただいたのは、はじめてです。
少女の清冽さ。そして第二章「ゆめ」に綴られる,長い時間の流れへの憧憬の思い。
それらが物語性を帯びて、瑞々しく鮮やかに描かれています。
一編だけご紹介を。
「空」
ずっと昔
こんな とびきり青い空の下
何かしようとしていた
何かを叫んでいた
私がいた 私がいた
もう一度だけ
呼びもどしてみたい
私がいた 私がいた
このご本は、今年の詩の文学賞で評判になること間違いなしです。
『雪ぼんぼりのかくれ道』(巣山ひろみ・国土社)
巣山ひろみさんのデビュー作です。
巣山さんは、「ゆきのまち幻想文学書」で入選を重ね、研鑽を積んで来られた方です。
この作品でも、そういった雪のなかの幻想的なシーンがとてもうつくしく描写されています。
また日本古来の神楽の「歌詞」などから、雪の匂い、土地の匂いを感じさせる、土着的ファンタジーを描いています。
舞台は雪深い「奥野郷」の温泉宿。
そこに、主人公の「果奈」のおばあちゃんの「ボケ」の問題、それをめぐる両親のけんか、など現代的な問題を絡ませています。
「かくれ道」に迷い込み、そこから「今」に戻ってくるには・・・。
さまざまな仕掛けが、日本的な叙情性にのせられ展開していきます。
皆さま、ぜひこの3冊、お読みになってください。