フォーラムニュース Vol.51 2023 6/25 発行:「フォーラム・子どもたちの未来のために」実行委員会
http://www.f-kodomotachinomirai.com/
6月4日講演&トークイベント開催!
~ウクライナ戦争下で〈非戦〉について考える~
去る6月4日(日)午後2時から神保 町出版クラブにてコロナ禍以後初めての フォーラムリアルイベント「ウクライナ 戦争下で〈非戦〉について考える」が開 催されました。第一部の講師は戦場ジャ ーナリストの志葉玲氏(写真)。現地で
の直接取材の体験をもとに、具体的な映像を交えて戦争の悲惨さとその収束の 難しさについて語られました。第 2 部は金敬黙早稲田大学教授の司会による大 学生 5 名と志葉氏を交えてのトーク。「非戦」というテーマにとどまらず「メ ディアのあり方」からコミュニケーションの問題まで幅広く熱心なトークが展 開されました。イベントに参加されたお 2 人の方から感想をお寄せ頂きました のでご紹介いたします。
会場全景(上)とトークする学生の皆さん(下・左端は金教授)
文責:大竹永介
写真:澤田精一
●講演とトークを聴いて
森埜こみち
志葉玲さんのお話は、とてもわかりやすく、すとんと胸に落ちました。 じつはずっと気になっていたことがありました。日本に避難したウクライナ
人女性が NHK で制作を担い、「平和を取り戻すために、この戦いに勝利しなけ ればならない」と番組内にことばを入れようとしたら、日本人のディレクター に止められてしまったのです。ことばが強すぎる。平和を取り戻す、で収める ようにと。彼女は訴えました。「わたしだって平和を望んでいる。1日も早い 平和を。そのためには勝たなければならない」。でも、理解は得られず、番組 はそんな彼女の姿を伝えることで、なにかを伝えようしていました。彼女の思 いが、志葉さんのお話を聞いてわかったように思います。「ロシアに妥協する わけにいかない。すれば、同じことがまた起こる」。この感覚なんだな。この 感覚をどのレベルで感じているか、なんだな。
停戦=平和、ではない。さらにいえば、不戦=平和、ではない。平和を手に 入れるためには戦わなくてはいけない。戦争を放棄した日本でも戦えることは ある。人道支援の継続もそのひとつ。ロシアからガスを買わないこともそのひ とつ。アメリカと中国の融和のために外交力をつかうこともそのひとつ。まだ まだあるはず。平和はただでは手に入らない。そうやって戦い、志葉さんのお っしゃるとおり、国連憲章が歯止めとしてがっちりかかる世界を一日も早くつ くらねばならない。そう思いました。
学生さんたちの意見や感想もお聞きできてよかった。わたしが学生の頃よ り、ずっとしっかりものごとを見ていて、頼もしかった。メディアの中立性も 話題になりましたが、自由にものがいえない国の報道 を、量だけ等しく流しても、中立性を保持したとはい えないと思いました。どんな国でもバイアスはかかっ ているけれど、プロパガンダの報道はある程度絞った ほうがいいように思います。
(もりのこみち:作家。新刊に「どすこい!」国土 社刊)
●世界の片隅で〈非戦〉について考える
米田久美江
ウクライナ戦争下で凄まじい環境破壊が起こっている惨状に、一刻も早く停 戦をと考えがちだが、停戦では性暴力や略奪が止むわけではなく命も人権も安
全ではないという投げかけがあった。なるほど、いかに、ロシアを国際法に従 わせ、ウクライナから撤退させるか「非戦」とすることが重要なのだ。
基調講演を受け、第2部では「非戦と不戦、反戦、停戦」「避難民と難 民」、それぞれの言葉の概念を明確にしないと、議論がかみ合っていかないと いう、対話の前提の大切さから始まり、言葉のリテラシーを高める必要性に言 及された。
閉会後の懇親会では、登壇者の方々と直接お話しする機会があり、志葉氏か ら「イラクで拘禁された時には、その前に『夜と霧』(ヴィクトール・E.フラ ンクル みすず書房)を読んでいたので、強制収容所に入れられるとどういう精 神状況に陥るかわかっていた。だから、すぐに、開き直って状況を受け入れ対 処できた。」というような意味のことをお聞きした。読書がストレス耐性を高 くするとはよく言われることだが、このような過酷な状況の中で、読書が役立 った体験をじかに聞き、物語の力の偉大さ、必要性に、改めて感じ入り、志葉 氏のリテラシーの高さに感服した。この時の収容所体験については『たたかう! ジャーナリスト宣言 ボクの観た本当の戦争』(志葉玲著 社会批評社 2007.6) のなかで触れられている。
言葉の本質を見極め、適切に使われているかを、常にチェックしながら、傍 観者の枠から一歩でもでるために、暮らしの中であらゆる暴力性を排除する努 力とともに、〈非戦〉への対話につなげていかなければならないと肝に銘じる
機会となった。 過去の例を挙げるまでもなく、始まってしまった戦争
は、当事国の世論を一気に偏らせる。戦争をさせないため の根回しが、まさに、若者を交えての今回のフォーラムで ある、今後の企画にも期待したい。 (よねだくみえ:児童文学書評家。月刊書評誌「子どもの本 棚」などで活躍中)
●6月のフォーラムニュースをお届けします●最近テレビを見ていると若いタ レントによる「白メシによく合う」という食レポや CM をよく目にします●コ ンビニなどではカップ麺なども味の濃いものが人気で、それも「白メシによく 合う」からだそうです●なるほどその「美味しさ」はわかります。しかし、と 心配性の老人は考えてしまいます●かつて「ラーメンライス」はきちんとおか ずを買う余裕のない者の強い味方でした。若者の貧困が叫ばれる中、味の濃い カップ麺で空腹を満たすことが「流行」でごまかされていはしないかと(O)
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神保町の出版クラブには、たくさんの大学生の皆さんがお越しくださいました。
志葉さんの映像を交えた、ウクライナ報告は壮絶でした。それでも、志葉さんは控えめにお話しくださったようです。
また早稲田大学の金先生の、二部の采配はお見事でした。短時間に、学生さんたちや志葉さんからたくさんの意見を導き出してくださって・・・。
餃子屋さんの二次会は楽しい会でした。
学生さんたちの柔軟な思考と、世の中を見つめる目。
金教授は、懐の大きい、四方八方に目配り、気配りをする方で、こうして学生たちを、「アジア」に閉じ込めず自由な世界へ羽ばたかせていらした凄さを思いました。
志葉さんとは内緒話や、出版社の社長ともいろいろ日本の情勢についてなど、おしゃべりしました。
志葉さん、金敬黙早稲田大学教授、ありがとうございました。