今夜は中野で、出版お祝い会です。
おおぎやなぎちかさんの『しゅるしゅるぱん』(福音館書店)
佐藤いつ子さんの『駅伝ランナー』(KADOKAWA)
森越智子さんの『生きる:劉連仁の物語』(童心社)、この3人の方々の合同祝賀会です。
読書会のお仲間である、おおぎやなぎさんの『しゅるしゅるぱん』は、彼女のご出身である、東北が舞台のファンタジーです。
6年の歳月をかけ、編集者と作り上げたという、とても完成度の高い作品です。
新人とは思えない筆使いと、構成力と、人物造詣。
宮沢賢治の世界、遠野物語の世界のある東北ですから、そうした不思議さからのファンタジーとばかり思い込んでいました。
ところが、これは「しゅるしゅるぱん」をめぐる壮大な家族のドラマだったのです。
章により、語りの主が変わるのですが、それがすべてくるりと、つながっていく。
おおぎやなぎさんの仕掛けは、とても理系的です。
ファンタジーは、実はこうした理系的な思考が、大切だったということに、途中から気づかせていただきました。
それを、やわらかな文体で、ディテールのすみずみまで、まるで呪文でもかけられたように読者に魔法をかけていきます。
人間の「情」や「業」。そういったものの強さが、異なるものを生み出していく。
その説得力の深さにも感心しました。
この作品の象徴でもある、倉と朱明山と一畳岩、そしてさくら。
おおぎやなぎさんは俳人としてもすでにご活躍されていますが、こうした美意識が、いかにも俳人らしい無駄のない文章で綴られています。
今夜の会は、ご準備などすべてを「季節風」の皆さんにお世話になっています。