このところの忙しさで、ご恵贈いただいていた新刊のご紹介がすっかり遅れてしまいました。
とてもおもしろいご本満載です。
5冊まとめてですが、ご紹介させていただきます。
『パパとミッポの海の1号室』(田部智子・岩崎書店)
ミッポちゃんシリーズの第三巻です。
ミッポちゃんとパパが住んでいる「イチョウ通りマンション」って、ほんとうに不思議でステキなマンションです。
ミッポちゃんはキュートでかわいいし、パパもステキです。また家事助っ人のくるりんさんも秀逸です。管理人さんだって・・・。
今回,印象的なのはアイテムとしての「あさり」の使い方。私はこれを読んで,直後にあさりを買いに走ったくらいです。
「クプクプ クプクプ」あさりのささやきを聞きたくて。
毎回とっても軽やかにユーモラスに心地よく、事件や出来事を裁いていく田部さんの腕はさすがです。
彼女のセンスにはいつも唸らされてしまいます。
不思議さと、エスプリと、ユーモアに富んだ田部ワールド。
まだお読みでない方は三巻通して、ぜひお楽しみください。
『メン!試練の剣』(開隆人・そうえん社)
「メン!」シリーズの続編です。
一巻目は「剣道部」に入部するまでの出来事でしたが、今回は入部後の出来事が綴られています。
とりわけ剣道のシーンには臨場感があります。
竹刀をふる音や、飛び散る汗や、匂い。そんなものまで伝わってきます。
剣道のディテールが丁寧に書き込まれていて、手に汗を握るようです。
主人公が女の子というのも、新鮮でおもしろかったです。
印象的だったのは、ケンヤと行った武道具のお店での出来事。
一見、男の子と見紛うミクが、桜の花の模様の散りばめられたつばを、ケンヤに「似合う」といわれ高くても買ってしまうシーン。
剣道の物語ではありますが、そんな少女ミクの姿に惹かれて読んでいきます。できればぜひ、第一巻からお読みになってください。
『夢見るアイドル3』(牧野節子・角川つばさ文庫)
『夢見るアイドル』シリーズの第三巻、完結編です。
4年生の青山ルリは、お父さんの転職のため、とうとう軽井沢に引っ越してしまいます。
そこで出会ったカッコイイ男の子や、軽井沢のステキな町並み。おいしいお料理。思わず、読んでいてうっとりしてしまいます。
けれど、そこはさすが牧野節子さん。甘いだけではない、大人たちの現実もしっかりそこに書いています。
「三色アイス」での仲間たちと歌うことの楽しさ、熱い思いもじんじん伝わってします。
また全編を通して散りばめられている、すてきな歌詞の数々。
牧野さんはぜったい作詞家にもなれると、感じさせてくれる見事なものです。それらもお楽しみのひとつです。
音楽好きの子たちに、ぜひ読んでもらいたい一冊です。
『おにんぎょうさんのおひっこし』(石井睦美・ポプラ社)
「ママ、たいへん、たいへん」
肉団子を作っているママのところへ、女の子がかけよっていきます。ゆびにんぎょうの「あみちゃん」が行方不明になってしまったのです。ママとのやりとりが、またステキです。
ママは「だらしなくしてたからでしょ!」なんて決して怒りません。
自分の部屋に「あみちゃん」を探しにいく女の子に、できたての肉団子をひとつ。
そこから豊かな想像の世界がひろがっていきます。
散らかったごちゃごちゃなお部屋が、子どもにとっての「ごっこ遊び」の世界にひろがっていくのです。
石井睦美さんのおしゃれで、なんともいえずやわらかな文体が、心地よく物語世界へと私たちを誘ってくれます。
ラスト、お引っ越ししたゆびにんぎょうの家族の暮らしもとってもすてきです。
子どもの胸に豊かなひろがっていく物語世界を、どうぞお楽しみになってください。
『麦ほめに帰ります』〔一色悦子・新日本出版社〕
この絵本は、日本児童文学者協会で編纂した<おはなしのピースウオーク3>『空はつながっている』に掲載された『麦ほめに帰ります』を改稿して絵本にしたものです。
「たたかい」の愚かしさを、3人の登場人物に語らせています。
核のボタンを押すのが役目だった「ロボメガリス」
軍艦にのって海をこえ、最新式の鉄砲をかかえていた兵隊。
木綿の着物をきた足軽。
その3人が、麦へ声かけをします。
夏。麦たちは金の穂をゆらし、大地はざわめきます。
愚かしい闘いを揶揄し、大地の生きる力を高らかに歌った絵本です。
ぜひ、お読みになってください。