カリフォルニアからやってきた、この花水木。
30年以上前に、初めてみたときは衝撃的でした。
息子が生まれた年に、私たち家族は横浜から二子玉川に引っ越してきました。そして数年後には、そこで娘も生まれました。
そんなある日、二子玉川の駅前に玉川高島屋が開店したのです。
どことなくおしゃれな佇まいの玉川高島屋には、街路樹としてぐるっと、この花水木が植えられていました。
初めてみたこの花はどことなく都会的で、そこからおしゃれな風が流れているようでした。
私はデビュー作である『初恋クレージーパズル』(ポプラ社)の街路樹に、迷わず花水木を書きました。
時が経ち、いまでは当たり前のように、あちこちで見かける花水木。
でも二子玉川で見た、あの街路樹の花水木は、いまでも私の中では別格です。
この写真のとは、まるっきり違う花みたいに。
あの花水木は、どこへ行ってしまったのでしょう。
そしてその花水木を思い出すたび、デビュー作を書くために歩き回った広尾の有栖川公園のあたりや原宿界隈を、切羽づまった気持ちと共に思い出します。
作品と、風景と小道具たち。
記憶の底では、さまざまなものが、ずっとずっと繋がり続けているようです。