金沢の紅葉といえば兼六園。
と、誰もがそう思う。
けれど、すでに11月も終盤。
出遅れ感もあって、出かけることが、多少おっくうにもなっていたのだが、
そこは「年中行事」だからと、気をとり直し、兼六園へ向かったのだった。
一方で、水を差すようで、関係筋からお叱りを受けそうだが、
実は、兼六園はそれほど紅葉の名所でもない、とも思っている。
というのも、常緑の松が多いせいか、
京都の紅葉のように、見渡す限り、真紅の絶景とはならないからである。
それで、これまではどこで撮ったかもわからないような紅葉で「お茶を濁して」いたし、
この日にしても、そんな程度の思いしか持たず、兼六園へとやって来たわけだ。
ところが、である。
霞ヶ池を周回する道の途中で、なにげなく目に入った光景に、ふと足が止まった。
Sony α99 Planar 50㎜ (f/5.6 , 1/320sec , ISO100)
霞ヶ池越しに眺める唐崎松(からさきのまつ)の雪吊りとそれを垣間見せるように張り出した紅葉。
唐崎松は樹高があるので、実際にはその高さに覆いかぶさる紅葉はない。
つまりは、間近の紅葉越しに、遠くの唐崎松を眺めたわけで、遠近の取り合わせがとても新鮮な景色として映ったのだ。
唐崎松は兼六園でも人気の景観で、さらにそこに、雪吊りが施されたとあれば、
この松が見える場所はどこも、カメラやスマホを構えた人でいっぱいだ。
にもかかわらず、足を止めたその場所に限っては、
通り過ぎる人はいても、立ち止まって写真を撮る人はほとんどいない。
そこは、うっそうと木々が茂り、言ってみれば裏通り。
立ったままでは、張り出したいくつもの枝がジャマして唐崎松は見えないから、
その場所で屈み、ローアングルで眺めることで、この景色に出会えたのだ。
おおげさだが、「自分だけの紅葉スポットを見つけた」と、ほくそ笑んだ次第である。
さて...。
四季折々に兼六園を歩いてはいるものの、ひと通り回ったら、さっさと引き上げてしまうことが多かった。
しかし、兼六園には、それぞれの季節が見せる「隠れた名所」がまだまだあって、
そんな場所を探し当てるのも悪くない、と思った。
今回の紅葉のように、少し屈んだだけで、これまで見たものとは違う景色が広がったわけだから。
さらに、こう思ったりもした。
そもそも、兼六園の名は 六つの景観を兼ね備えていることに由来する。
そして、命名からは、すでに二百年以上も経ったのだから、
そろそろ、ひとつやふたつ、その景観の数が増えてもよいだろう、と。
今日の金沢は時雨模様。
気温も10℃に届くか届かないかで、これからは、こんな日が多くなる。
ということで、せめて音楽だけでも明るく。
Frank Sinatra - On The Sunny Side Of The Street