「9」のつく日は空倶楽部の日。
しばらくは戦いの手を止めて、それぞれが穏やかな夕景を楽しんでいるようだった。
Sony α7R3 FE2.8 16-35 GM (19㎜ ,f/16,1/30sec,ISO400)
湖北水鳥ステーションからの夕景。
いつだったかの冬、この風景をながめながら
日本海側の湿った空と太平洋側の乾いた空の分かれ目が、
いわば「分水嶺的な空」がこの辺りにあるのではないか、と書いたことがある。
もう初冬、とも思えるこの日もそんな空模様だった。
青く澄んだ空に次々と雨雲がやってくる。
夕陽を待ち望む身としてはハラハラドキドキだ。
そして、そんな風景の緊張感をさらに高めたのが湖畔の植物たち。
元々は葦や芒が辺りを埋め尽くしていたはずだが
全国至る所で繁殖する外来のセイタカアワダチソウがここにもはびこっている。
その一方で、在来の植物たちがそれを食い止めようと必死に戦っているようにも見えなくもない。
そんな緊迫した雰囲気を思わせる光景だったのだが...。
雲の合間から沈みゆく陽がのぞき、
あたりを明るい光で覆った瞬間。
それまでしのぎを削り合っていた植物たちが
いっせいに光の方向に目を向け
しばしの夕景に見入っているような
そんな長閑さを感じたのだった。
さて、春から初秋にかけて、
葛籠尾岬に落ちていた陽はもうずいぶんと湖上へと移ってきた。
そして、やがて冬至の頃ともなると、
陽は竹生島の頭上めがけて落ちていく。
その落日こそがこの場所における夕景のクライマックス。
その時、空がどんなドラマを繰り広げてくれるのか、今から楽しみだ。