中山道 醒井(さめがい)宿の夏。
梅雨の晴れ間、地蔵川のほとりに咲く紫陽花が出迎えてくれた。
地蔵川は伊吹山系の水が長い年月を経て湧き出した神秘的な川だ。
上流に向かって醒井の街並みを1キロほど歩くと川は忽然と消え、
そこでは源流となる水が水面を大きく押し上げて湧き出している。
その自然が創り出した奇跡に見入り、さらに感動すら覚えるのだ。
「まるで砂漠のオアシスだ!」とも思ってしまうのだが
いつの頃からか旅人があふれ出る湧き水で疲れを癒すようになり
江戸時代には中山道61番目の宿場町として栄え始めたようだ。
また、その歴史はさらに古く、日本書紀の記述によると
この地を訪れた日本武尊(ヤマトタケル)が
湧き水で怪我を治したとあるそうだから、
地蔵川は遥か神話時代から湧き出でていることになる。
さて、今の醒井。
訪れる人をもてなす食事処やカフェ、資料館などもあるが、
地蔵川の流れはこの地に暮らす人たちの生活とともにある。
そして、その豊かな清流がもたらすのだろう。
この町はいつもしっとりとした空気に包まれている。
その恵みか、地蔵川のほとりでは草花が活き活きと茂り、
町の風景は彩りと潤いに満ちている。
SONY 7S2 Planar 50㎜ 1.4/50ZA
SONY α99 F2.8G/70-200㎜
そうそう。
醒井にはもうひとつ紹介しておきたいものがある。
夏、地蔵川の流れの中に咲く梅花藻(ばいかも)の花だ。
残念ながら、少し時期が早かったようで
まだちらほらと咲き始めたところだった。
それで撮るには撮ったがとてもご披露するような出来ではなかった。
いや、仮に見頃の時期に撮ったとしても
水中で乱舞する梅花藻の魅力を十分に伝えることなどできないだろう。
興味を持たれた方はぜひ醒井に足を運び
梅花藻で華やぐせせらぎと醒井のやさしい空気感を
楽しんでいただけたらと思う。