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折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

悲しき Meiji Street

2021-09-06 | 街の風景

その日、神宮前での所用を済ませた帰り道。

キャットストリートから明治通りに出たあたりで

目の前に広がる煌々とした明かりに圧倒された。


        明治通り(東京都渋谷区) 2021.09.04  19:44   Sony α7R3  FE2.8 16-35 GM (24㎜ ,f/5.6,1/30sec,ISO1600) 

 

一瞬、「なんだこれは!」と戸惑ったのだが、

すぐに商業施設とともに再開発された宮下公園と気づいた。

 

もう50年近くも昔のこと。

すでに朽ちかけた宮下公園と

公園沿いの明治通りは渋谷の中でも

立ち遅れた地域という印象を持っていた。

それで、突然現れた「煌々とした光景」に圧倒されたのだ。

けれども、立ち遅れた中にひとつだけ近未来的な光景を覚えていて

「あれはどうなったのだろう?」と渋谷駅への道を急いだ。

 

渋谷駅の三階のホームを発した銀座線のカナリヤ色の車体は

明治通りをゆっくりと跨ぎ、その後すぐに青山台地へと

吸い込まれるように消える。

「地下鉄の駅がなぜ三階に?」という違和感とともに

空中を行き来する電車が、自分の目には近未来的な光景として映っていたのだ。

その光景を上京間もない私に自慢げに教えたのは

開業当時の銀座線に勤めていた父だったのだが

その光景がどうなったのか...、それが気になったのである。

                  地下鉄の話 銀座線  2017.05.11

渋谷駅とヒカリエの間、

かつて銀座線が走っていた明治通りの上に

大きなチューブ状の橋が架かっていた。

そのチューブはガラスで覆われていて

その中にカナリヤ色の車体が止まっているのが見える。

銀座線のホームが移動したのだ。

 

父が自慢した光景はすでに無くなっていた。

新しい高層ビルとともに駅舎の新装が完了したのである。

それがちょっぴりさみしくもあったのだが

時の流れは仕方のないことだからと、自分にこう言い聞かせた。

「いや、これこそがあの時思い描いた未来の光景なのだ」と。

そして、胸の奥にまたひとつ、失われた光景をしまい込んだのである。

 


 
 悲しきクラクション  杉真理

 

 

 

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