はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

梅の咲くころ

2006-03-13 23:12:47 | はがき随筆
 今年の立春寒波は冷えた。自宅の小屋で零下2・5度を示した。日差しが日一日と長くなり、陽光の中で、もう畑の紅梅は、プーンと芳香を放って数輪咲いている。
 梅が咲くころになると、春風のように温かかった友を思い出す。梅の盆栽を育てていたSさんが逝って2回目の梅を見つめる。
 私に夢をくれた友は、もういない。難病にも最後まで弱音を吐かず頑張った友Sさん。私は見舞うことしか出来ずに本当に悔しい思いをした。
 Sさん。もう梅が咲き始めましたよ。悲しくて優しい梅。
   出水市大野原町 小村 忍(62) 3月13日掲載 特集版-6  

嬉し涙にくれる

2006-03-13 23:00:04 | はがき随筆
 「おいどんたちゃ忘れられた。風音もかわいそうじゃ」と言う息子。いやいや忘れたのじゃない。放送原稿で妻と娘のことしか出来なかった。次は風音のこともバッチリ投稿するから、気にするなと思っていた矢先、息子夫婦と初孫が「ラジオ放送」の記念にと愛らしいラン2鉢をプレゼント。嫁の気配りの良さに感謝。「よか嫁じょもろうたね。行生は幸せだね」と妻に話しかける。妻はラジオ放送で涙ぐむ。息子夫婦のプレゼントに涙ぐむ。きょう1日、嬉し涙に暮れる妻の福福顔。「お父さん、ありがとう」「おめでとう」の繰り言に尽きる
   高尾野町唐笠木 岩田昭治(66) 3月13日掲載 特集版-5

抱きしめる

2006-03-13 22:50:14 | はがき随筆
 母ちゃん、ほら、春。
 8歳の娘が指さした所に水仙の花が咲いている。
 白く光って咲いている。甘く優しい香り。
 娘と春を確認する幸せ。
 母ちゃん、だっこ。
 おや、おや、9歳になるっていばってた人はだれ?
 いいでしょう。
 8歳のあなたを、春と一緒に抱きしめておきましょう。
 水仙の香りと一緒に9歳になる前のあなたを。しっかりと抱きしめておきましょう。
   鹿児島市真砂本町 萩原裕子(53) 3月13日掲載 特集版-4

雪国のみなさんへ

2006-03-13 22:44:53 | はがき随筆
 例年にない大雪に見舞われ、雪かき、雪下ろしと大変ご苦労されているようですね。雪崩、大量の積雪による家屋の倒壊などにより甚大な被害を受けられた方々や、亡くなった方々を思うと心が痛みます。鹿児島市も88年振りに12月の積雪量の記録を更新しました。でも、あなた方に比べれば大した事ではありません。同じ日本に住みながらこうも違うとは驚きです。雪がやみ、春めいてきたら鹿児島に来ませんか。南国鹿児島で心身の疲れをとりましょうよ。私の家は狭いですが、2人ぐらいなら泊まれます。どうぞ遠慮なく。待ってます。
   鹿児島市鴨池 川端清一郎(58) 3月13日掲載 特集版-3

シクラメン

2006-03-13 22:37:35 | はがき随筆
 3年前のピンク、4年前のワインレッドが幸いたくさんの蕾をつけ、今年も2鉢それぞれ4、5本ずつ花になった。 
 開花への過程は年々遅くなるが、色、形とも求めた時同様のもの。まるで蝶が花にとまった形に咲く花は新春や早春の窓辺に可愛らしい風情を醸す。
 球根に水がかからないよう鉢の窓から水や肥料を注ぐ術にもすっかり慣れた。
 心を注ぐと呼応するかのように勢いを盛り返してくるあたり、まるで子供のようだ。
 今年はこれから楽しめそうな気配だ。
   鹿児島市唐湊 東郷久子(71)3月13日掲載 特集版-2

人間社会

2006-03-13 22:30:12 | はがき随筆
 冬の風物詩。梅の枝や椿の花に群れるメジロが今年も里におりて来ない。何年も何十年も繰り返された自然の営みが一つずつ消えていく。人間が便利さを追求するあまり、何かが壊れているような不安を感じるのは私だけだろうか。小さいころ見かけたアカショウビン、カワセミ、コジュケイ、ヤマドリなど、ほとんど見かけない。めったに姿を見せなかったタヌキやイタチが夜はウロウロ。小動物たちが何かを訴えているような気がする。後戻り出来ない文明の進化。どっぷりつかっている私でも何かができないか。ふと思う。
   指宿市十二町 有村好一(57) 3月13日掲載 特集版-1