はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

姉の帰郷

2006-03-19 17:33:01 | はがき随筆
 テレビを消して1人静かにいる夜は、無性に電話をかけたくなる。その相手は千葉に住んでいた、たった1人の姉だった。急逝して1年近いこの春、串木野に帰ることに。
 日置市出身の義兄は転勤族で、故郷を遠く離れて家も構えたので、せめて自分にお迎えが来るまでは、姉を生まれ育った地に移そう、と決めたのだ。
 小さな箱に眠ったまま故郷に帰って来て何になろう、私は一茶の「めでたさも中位なりおらが春」の句を幾度も思い浮かべた。しかし、もろもろの命が躍動を始める季節だもの、みずみずしい春の花で姉を迎えることにしよう。
   いちき串木野市上名 奥吉志代子(57) 3月19日掲載