はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

春待つ心

2006-03-22 11:46:49 | はがき随筆
 1年間の学習の成果を発表する「いきいき春待ちコンサート」があった。出演者の1人1人の輝いた瞳や弾んだ歌声に、ステージの上は既に春爛漫であった。それぞれの歌声が、大きな力となって私の心に強く迫ってきた。女性合唱団Mハーモニーの透き通るような歌声に、心の澱がすっかり洗い清められた。素晴らしい仲間にも恵まれて、新たなエネルギーも分けてもらった。4月からまた更にチャレンジしなければならない歌が、私を待っている。今から自ずと心が浮き立ってくる。時期は今まさに春。胸を張って、大きく一歩を踏み出してみよう。
   鹿児島市中央町 古木一郎(64) (3月22日掲載)

はがき随筆2月入選

2006-03-22 10:15:48 | 受賞作品
はがき随筆2月度の入選作品が決まりました。
 △出水市上鯖淵、橋口礼子さん(71)の「春隣り」(26日)
 △出水市高尾野町柴引 、山岡淳子さん(47)の「小鹿との出会い」(2日) 
 △鹿児島市鴨池、川端清一郎さん(58)の「桜島山」(8日)
の3点です。
 
 2月は、近づいた春を待つ気持ちを書いた文章がたくさん出ました。緋寒桜や白梅を楽しむ橋口さんの「春隣り」、水仙を株切りして亡父に供える松田ハル子さんの「春の音」など。皆さん、しっとりした内容を一文一文短くさらりと書いたのが早春を描くにのぴったりでした。文末も、「春隣り」は「残り少ない人生。澄んだ冬の青空を眺めながら春を待ちたい」。「水仙」は「明日から歩くことに努めよう」。「春の音」は「この春に会えて、どんな日にも負けないで生きよう」といった具合。いいですね。
 さて、山岡さんの「小鹿との出会い」は面白いですね。山道を運転中に出会った小鹿が母鹿に「すごいものを見たよ。風よりも早く走る物体とそれを動かす動物」と言う。母鹿はそれは人間だよと教えている、という楽しい風景です。こういうふうに思う山岡さんのお人柄が、素晴らしいですね。
 面白いと言えば、桜島は島か山かを考える川端さんの「桜島山」、学校給食を作っている娘さんから始終食べ物の検査をされる楠元勇一さんの「賞味期限」、清田文雄さんの「メジロ」などいい味です。
難しいと言いながら短歌を習う小村忍さんの「60過ぎの習い事」、娘さんから1万円のプレゼントがあり福祉住環境の本を買う岩田昭治さん。お二人とも岩田さんの言葉によると「老身に鞭打って前向きに」励む幸せが、しみじみ伝わりました。
 飲み友達と相談して挨拶しない女性に口を開かせた道田道範さんの「むっつりお嬢」も面白い。窪啓子さんの「先のこと」、小村豊一郎さんの「老を生きる」、若宮庸成さんの「娘よ」は、生き方を深く、そして明るく考えていいですね。
   (日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)
係から
入選作品のうち1編は25日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。作者へのインタビューもあります。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。(3月22日掲載)