東京に住む孫が遊びに来るという。大学を卒業し、4月から奥州仙台に赴任するらしい。久しぶりなのでわくわくしながら歓迎の準備をした。ただ初対面のピスと、孫の仲が心配だったが、なりゆきにまかせることにした。来鹿の夕べ、日焼けした孫が玄関に現れた瞬間から、ピスの抗争が始まった。声をかけても無視、近寄るものなら威嚇する。仲を取り持つすべもなく4日間が過ぎた。「ピスと仲良くしたかった……」とつぶやき彼は帰京した。沈丁花が香るがらんとした居間に、四肢を伸ばしたピスがいびきをかいて眠っている。
鹿児島市伊敷 福元啓刀(76) 3月16日掲載
鹿児島市伊敷 福元啓刀(76) 3月16日掲載