はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

豆腐屋さん

2006-06-14 10:47:13 | はがき随筆
 都城の安久温泉に月に数回入浴に行く。途中、鄙びた昔ながらの豆腐屋がある。薪で炊くので家中に煙が立ちこめているが、老夫婦はそんなことは気にしていない。固めにできた豆腐はなかなかの人気で、午後になる頃には毎日売り切れる。つるつる頭の好々爺は、二代目の自分で最後だと言っていた。ある日突然、豆腐屋の入り口に忌中の張り紙を見た。それ以来「豆腐あります」の札が消えた。あれからやく1年、忘れかけていた豆腐屋から煙が立ちのぼり「豆腐あります」の札がかかっていた。嬉しかった。後を継いだのは50過ぎの豆腐屋の娘さんだった。
   志布志市志布志内之倉 一木法明(70) 2006/6/14 掲載