はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

おとぎの国

2006-06-30 23:50:18 | はがき随筆
 湖のほとりの曲がりくねった小道を登ったり、下ったり、寝そべった木におでこをぶつけたり、ぬれた岩では滑りそうになったり。
 風も心も翡翠色に染まっていく。
 いつしかおとぎの国に迷いこみ、自動ときめき測定機の針が吹っ飛んだ。
 もどれなくていいと思った。
 もどりたくないと思った。
 あなたといつまでも、どこまでもさまよっていたいと祈るように思っていた。
   鹿屋市 伊地知咲子(69) 2006/6/30掲載