噴火活動が活発化している桜島。県外から来た私は「これは大変だ」と、気象台の情報が気になる。
だが、「これくらいは、まだまだ。ドーンと響く音で窓がガタガタしなきゃ」
「昼間も降灰で暗くなる。煙の中に稲光のようなものが見える。せっかく鹿児島に来たのだから、あんたにも見せたいね」
「夜は火が上がって、そりゃきれいよ」
私が聞いた鹿児島に住んでる人たち感想だ。今の段階では、何てことないらしい。
桜島の人も「怖くはないですか」の質問に「うちんとこは大丈夫。それより噴火の前に海岸に魚が打ち上げられて、拾いに行ったのよ」と、気象台が噴火を発見する前に地元に現れた異常を話してくれた。
私も海辺育ち。魚が浜に打ち上げられるのは、台風の後としか知らない。やはり噴火となると、自然界の磁場のようなものがおかしくなり魚が異常な行動をするのであろう。
噴火が活発化してからより桜島を注視するようにしているが、天気の日でも島の上空はぼんやりとしている。桜島の全容がなかなか観察できないのなら、せめて近くに行ってみようとフェリーで島に渡った。
周辺を回り、噴煙の写真を撮ったが、空がすっきりしていなくて狙い通りにはいかなかった。時間が余ったのでフェリー乗り場近くを散策、月読神社に行ってみた。
この神社の創建は和銅年間(708~715年)と伝えられている。祭神は月読命。社殿が新しいのは、噴火で移転しているからだそうだ。木花之佐久夜毘売(このはなさくやびめ)も祭ってあると聞き「火と関係しているな」と思った。
古事記に、迩々芸能命(ににぎのみこと)にお腹の子は我が子ではないと疑われた木花之佐久夜毘売が「あなたの子なら何事も起こらないでしょう」と、出産する時に、殿の中に入って回りを土で塗り固め、殿に火を付けてその中で子を産んだという記述がある。この子が火照(ほでり)命(海幸彦)だ。
桜島の名の由来は諸説ある。その一つがコノハナサクヤビメから「サクヤ島」、「サクラ島」になったがある。活動する火山に、歴史ある神社。古人(いにしえびと)の島に寄せる思いをかいま見た感じがした。
新火口は拡大したという。地元の人は「まだ大丈夫」というが、私としては早く沈静化してほしい。
毎日新聞鹿児島支局長 竹本啓自 2006/6/26 掲載