はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ほほ笑ましい光景

2006-06-24 14:25:32 | はがき随筆
 初夏を思わせる暖かい日曜日。電車で鹿児島へ向かった。ドア近くに爽やかなコロンの香りのする娘さんと座った。
 次の駅で高校生らしい男の子たち数人が乗り込んで来た。ダブダブの服にボサボサ頭。補助席に陣取り会話の内容から先輩後輩のようである。
 車内も込み合ってきた。するとスッと立って中年の女性に席を譲った先輩。「先輩僕が……」と照れながら1,2歩前に出た後輩。「よかよか……」と手で制し、何事もなかったように外を見ている日焼けした横顔に心からのエールを送った。
   薩摩川内市宮里町 田中由利子(64) 2006/6/24掲載

遅咲きと早咲き

2006-06-24 08:39:45 | はがき随筆
 春咲きの球根たちが、次々に綺麗な花を咲かせた。根っこの病気を心配していたヒヤシンスが白色の花を咲かせ、にこっとほほ笑んだ。しかし「二つも花をつけている。双子だ」と驚いていたら、その脇からまた小さな花を咲かせ、何と四つ子であった。フリージアがなかなか咲かないので気をもんでいると、ヒヤシンスとチューリップが咲き終わった後に、ゆっくりと白と黄の可憐な花を咲かせた。遅かろうと早かろうと、時期が来ればそれぞれに美しい花を咲かせ、散っていく。人間とて同じだ。自分のペースで心優しく穏やかに歩いていきたい。
   出水市高尾野町 山岡淳子(48)2006/6/23掲載
写真は季節の花300より