はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

スイカの思い出

2006-09-03 15:23:41 | はがき随筆
 50年近い前、父の勤務地である日置市の山あいに住んでいた。
 スイカを食べる前は、いつも縁側で家族5人。母が、ざく切りして運んだお盆のスイカに、皆でかぶりつく。種を外にプップッと落とす。すると、縁側の下で飼っていた数羽の鶏が、声を上げてついばむ。私たち子どもは、種が、半分に切った竹の餌入れに命中するよう、工夫して飛ばした。
 ある夏、スイカを食べた後、私と弟だけお腹をこわした。布団を並べ、交代で便所に走る。その姿がおかしいと、父母と五つ上の姉は笑った。今は亡き父、母、姉。夏が、また行く。
   いちき串木野市上名 奥吉志代子(58) 2006/9/3 掲載