はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆8月度入選

2006-09-27 10:10:57 | 受賞作品
 はがき随筆の8月度の入選作品が決まりました。

△ 志布志市有明町、若宮庸成さん(66)の「日々是好日」(29日)

△ 南さつま市加世田益山、川久保隼人さん(71)の「哀悼」(16日)
    
△ 同市加世田村原、寺園マツエさん(84)の「再び一枚の写真」(6日)
の3点です。

 若宮さんの作品は、題名から考えて明るく楽しい日々を書いたものと思ったのですが、違っていました。若宮さんは、愛妻を亡くされて2年余りだそうですが、妻を亡くした夫の余命の平均は5年という調査があるから、残りの2年余りでなき妻と同じように愛せる人を見つけて結婚し、「日々是好日」と明るく生きよう、と言います。そんな理屈があるかなあとも思いますが、ダイナミックな元気あふれる文体で書いてあるので、説得力がでましたね。文章、文体の持つ力というものが大切なのですよ。
 川畑千歳さんの「ひからびない」もいい内容ですが、穏やかな表現のため主張が弱くなりました。残念。文体と言えば、上村泉さんの「リバウンド」で、宮園続さんが「赤トンボ」で、表現について考えたことを書きましたが、いい勉強になっていますね。
 さて、8月は夏休みで時間に余裕のある人が多いからか、思い出を書いた文章が多く出されました。
 敗戦当時は小学生だった川久保さんの特攻機への強い思いを書いた「哀悼」、一人の少年の直立不動の姿勢に現れた原爆の悲惨さを書いた寺園さんの「再び一枚の写真」、物のない当時の少女の娯楽は猫を飼うことであったという口町円子さんの「猫のしっぽ」、少女である自分たちだけて炊飯することが当時の楽しい遊びだったという吉利万里子さんの「盆釜」などなど、思い出もこれだけ並ぶと戦後論や時代の論説以上の存在になりますよね。
 さて、随筆を愛しておられた志風忠義さんと文集の表紙絵を描かれた秋峯俊郎さんの初盆を思う小村忍さんの「コスモスと桔梗」には、しみじみとしましたよ。文章を書くことは、何という素晴らしいことか感じ入りました。小村さん、ありがとうございました。
   (日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から
入選作品のうち1編は30日午前8:40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。

◇投稿規定◇

だれでも投稿できるミニ随筆です。日常生活の印象的な出来事を日記がわりに、気軽に書いて下さい。作品は文章部分が250字前後(17字×15行)。他に7字以内の題。住所(番地まで)、氏名、年齢、電話番号を明記し、〒892-0817、鹿児島市小川町3-3、毎日新聞鹿児島支局「はがき随筆」係へ。はがき、封書など書式は問いません。新人の投稿を歓迎します。

うれしい

2006-09-27 09:51:29 | はがき随筆
 神奈川県に住む妹家族の所へ母と行った。飛行機に乗るのも久しぶりだ。こんな大きな物体が、たくさんの人を乗せて空を飛ぶなんて、不思議でたまらない。真っ青な空に真っ白い雲が、ぷかぷかと浮かんでいる。時折、太陽の光を受けてきらきらと輝く。
 羽田空港に着いた。なんとまあ広い広い空港で、迷子にでもなりそうだ。きょろきょろあたりを見回す。人人人──。「いらっしゃい」。迎えに来てくれた妹夫妻のさわやかな笑顔を見て、その変わらぬ優しさや温かさに、、うれしさで胸がいっぱいになった。ありがとう。うれしいな。
   出水市 山岡淳子(48) 2006/9/27 掲載