今朝畑の隅で茗荷の花を見つけ、茗荷が好きだった亡父を思い出した。子供の頃、茗荷を食べた父に、翌朝「おはようございます」と、挨拶すると「どなたさんですかね」と惚けて、からかわれた。父は茗荷を食べると物忘れをすると話してくれた。先日、ある季刊誌に「釈迦の弟子に自分の名前さえ忘れる人が、名前を書いた札を背負い暮らした。その後、彼の墓から生えた草に、いつも名を荷なっていたことから茗荷と名付けた」と書いてあった。「おとうさん、そうなんだってね」。夜線香をあげながら父に話しかけた。暗がりの庭からリーン鈴虫の声がした。
出水市 年神貞子(70) 2006/9/7 掲載
出水市 年神貞子(70) 2006/9/7 掲載