はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ハッピーバースデー

2006-11-24 08:43:05 | はがき随筆
 受話器の向こうで、ささやくように歌っている。
 「ハッピーバースデー ディァ サキコ ハッピーバスデー トゥ ユー」
 「ありがとう」と笑った。
 「どんな一日だった?」
 「午前中、電話で少しトラぶっちゃって、午後、『コリント人への手紙』を読みながら心が痛み、反省しました」。おかしそうに笑っている。
 意地悪ね。でも、すてきなプレゼントに免じて許してさしあげます。古稀の扉をハッピーに開いてくれたあなた。
   鹿屋市 伊地知咲子(70) 2006/11/24 特集版-6
写真はTerrilさんTerriyさんよりお借りしました。

恋におちて

2006-11-24 08:37:34 | はがき随筆
 こんなすてきな人に出会えるなんて……。妻に先立たれて、しかも友人姉弟、子供たちとも遠く離れ1人になった時、いつまで生きられるかと思った。しかし、時間というのは有り難いもので、すてきな人に会えば心躍る時も来るのである。まるで少年のころのように。自分の心を伝えることのもどかしさを今、味わっている。1人の時には、すらすら出る言葉が、感動の返事まで想像できるのに。伝えられない言葉、気持ち。好きだし分かち合いたい歓喜は山ほどあるのに。大切な人だから慎重にはなるが、この愛を伝えないわけにはいかない。
   志布志市 若宮庸成(67) 2006/11/24 特集版-5

疲労骨折

2006-11-24 08:32:26 | はがき随筆
 何をしたわけでもないのに疲労骨折。シーネで固定、両手に杖。
ただでさえ不自由な体に、これじゃトイレに行くのがやっと。痛みが走る。一歩でなくて半歩ずつの歩行にガンバレ! 「今日より明日は楽になるよ」。自分にエールを送りながら。
 一生の間で、これも与えられた運命。後何回、このような試練に耐えたら楽になるのだろう。でも両手の使えない生活。何と不便なことよ。
 生きるって難儀なことだけど、楽しいこともたくさんあることを信じて前進!
   鹿屋市 三隅可那女(62) 2006/11/24 特集版-4

可那女さん、どんなに辛いでしょう、それでもあなたの明るい日々に感動しました。
アカショウビンより可愛い花束を送ります。

母の柘植も天国へ

2006-11-24 08:27:29 | はがき随筆
 身内の者が亡くなると、不思議な現象が起きるという話をよく耳にするが、我が家の庭の中心的な存在だった柘植が突然枯れた。生前母が枝ぶりがおかしいとか、この位置でいいのかなどやたらと気にしていたのだが、その母が天国へ旅立ってから間もなくのことだった。水を撒くたびに母が気にしていたことを思い出していたのだが、葉が一晩で黄色に変色したのである。植木職の方が言うには、虫が大分前から浸食に取り掛かり、幹を一周してしまったのだそうだ。直径15㌢と立派に育っていたのに……。母が呼び寄せたのだろうか。
   西之表市 武田静瞭(70) 2006/11/24 特集版-3
写真は花調べさんからお借りしました。

プロポーズ

2006-11-24 08:20:23 | はがき随筆
 あのね、本音でしゃべるとね。血圧も200近いし不安なんだ。病に倒れて逝った義父の年齢を超えて、鬼籍に入った父の年齢に近づきつつある今、「孫の顔を見るまでは生きていたい」って思うんだ。いや本当は古里を捨てて鹿児島まで来てくれ、3回の転職の時も黙って傍らに居てくれた「おまえ」のために生かされてある命を輝かせたい、が本心かな。生きるのが不器用な俺。死んでもこんなセリフは口にできない。だから、「はがき随筆」に残している。2人で歩いてきた22年。この先も「お前に恥ずかしくない男」として凛と歩いていくよ。
   鹿児島市 吉松幸夫(48) 2006/11/24 特集版-2

高齢者講習

2006-11-24 08:13:57 | はがき随筆
 高齢者講習通知書なるものが届いた。通知の内容は、70歳以上の者は免許更新手続き前に「高齢者講習」を受けなければ免許証の更新手続きはできません、と言うことである。免許証を取得してから約50年。車の運転をしない日はまずない。まだまだ年は重ねていても腕には自信がある。なんでいまさら。しかし、義務なら仕方ない。受講料6000円余りを支払って受講した。内容は安全運転に関する講義、実技、適性検査である。ところが、画面を見ながら機敏に動作する適性検査はさんざんだった。年には勝てぬ。知らぬ間に敏捷性が失われていた。
   志布志市 一木法明(71) 2006/11/24 特集版-1 
写真はrosaliaさんからお借りしました。