はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

広がる夢

2007-02-05 16:39:06 | はがき随筆
 「年初め寝たいだけ寝て幸せだ」。素直に自分の気持ちを川柳に作ってみた。息子5人の子育て中は忙しく、たっぷり寝るのが私の夢だった。子育ても終わり、4人結婚した。次は趣味に夢が広がってゆく。昨年は40年ぶりに南日本美術展に出品した。両膝の悪い私は、鹿児島まで1時間ごとに休み、8時間運転して搬送した。結果は没だったけど、挑戦できたことが嬉しかった。今年は9人の孫たちの絵を描こう。私が孫等に残してあげられるものはそれしかない。さあ!夢に向かって突進だ!
   山口県光市 中田テル子(60) 2007/2/5 特集版-6

日本の国技

2007-02-05 16:25:29 | はがき随筆
 テレビ観戦、大相撲初場所13日目。君が代の曲に迎えられての天皇、皇后両陛下の御観戦となり、会場の雰囲気はいやがうえにも高まった。出場する力士達の幕の内の半数が外国人だと言うのに、力士は日本名の四股名で出場し、観客は、日本人外国人のわけへだてもなく惜しみない拍手を送っている。天皇制、愛国心云々の声が聞こえる今日この頃、何のこだわりもない手放しの喝采が充満するこの光景を見て、本当に日本人と生まれて良かったと思ったのは私だけだったろうか。まさしくモーニング娘の歌う世界が羨む国だと実感したものだった。
   鹿児島市 高野幸祐(74) 2007/2/5 特集版-5

もらい風呂

2007-02-05 16:16:30 | はがき随筆
 遠い昔、60年ぐらい前のこと。夕食を済ますと母が「礼子、お隣へお風呂をもらいに行こうか」と私を誘った。家を出ると北風が冷たく頬をなでる。明かりが遠く近くチラホラ見える。「今晩は、お風呂をもらいにきました」「さあ、お上がり」。お茶を出していただく。大人の話ばかり。1時間ほどして「さあ空いた。お入り」。お風呂は裏庭の露天にある。五右衛門風呂であった。箱が踏み台。脱衣は筵の上。明かりはロウソク、洗い場は板の上。薄暗い中、お湯に浸る。夜空の星がきれい。身も心も温かくなり感謝の気持ちでいっぱいになった。
   出水市 橋口礼子(72) 2007/2/5 特集版-4

梅の咲く頃

2007-02-05 16:04:59 | はがき随筆
 暖冬と言われた冬が1月の終わりになって急に冷え込んできた。蠟梅が咲き紅梅が綻び、やがて梅が山かげを白く染める。1年で一番寒い季節である。早朝の散歩も控えて炬燵で新聞を読んだり、短歌俳句を作る日々が続く。2月早々、81才の誕生日を迎えるが、まだ現役の田舎医者。半世紀をすぎた医の世界もせちがらくなってきたが頑固に務めさせて貰っている。長生きしてみて人生の基はやはり優しさだと思う。そこからすべてが始まる。しみじみそう信じている。寒さに負けず今からも優しく生きてゆきたい。
   志布志市 小村豊一郎(80) 2007/2/5 特集版-3

写真はバセさんからお借りしました。

花の教え

2007-02-05 15:40:59 | はがき随筆
 このごろの私は気分が沈んでいる。口が禍して友を失いそうだから。気は進まないが、日課の散歩に出る。人家の庭の隅にぼけの木が1本。静寂な佇みに足を止めて眺める。小振りで名前のせいか、梅と似てるのに梅ほどに讃えられない。が、白色から薄紅色、紅色と見事な変化と絞りも交えて咲く花は、りりしく確かな自己主張をしている。自分は自分だと言わんばかりに……。
 本来の自分に戻ろう。自戒し、現状を打破せねば。物言わぬぼけの花に教えられ、私は上昇気流に乗る。
   いちき串木野市 奥吉志代子(58) 2007/2/5 特集版-2

写真はバセさんからお借りしました。

負けてるぞ

2007-02-05 15:14:39 | はがき随筆
 とても冷え込んだ朝、隣のNさん宅に届け物を済ませてコタツに滑り込もうと、部屋着に半てんを羽織って行った。
 すると、Nさん宅の玄関ドアは開け放たれ打ち水まで……。チャイムの音で出てきたNさんの身だしなみは整い、襟元にはスカーフも。
 今回だけではない。いつも感服する。予定のない日曜日はすっかり無精を決め込む私。帰って電気カーペットとコタツのコンセントを抜き、掃除機をかけたことを念のため。
 ちなみにNさんは爺ちゃん亡きあと一人暮らしで85歳。
   垂水市 竹之内政子(56) 2007/2/5 特集版-1