はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

緋寒桜の微笑

2007-02-19 16:12:13 | はがき随筆
 西之表市の高台にある史跡・本城址を通る路地にヒカンザクラが咲いている。やっと車が1台通れるほどの細い道だ。かなり急な坂の途中の土手から枝を張り出し、下を通る人に微笑みかけている。行き交う人々も足を止めて見上げ、笑顔を返す。青い空をバックにピンクが一段と映える。白い雲が流れていく。両手の親指と人さし指で四角を作り、その美しさを切り取る。まさに一幅の絵である。私もこの島ならではの景色を即デジカメに収め、パソコンで絵葉書を作成、都会に暮らしている子どもたちや、札幌に住む島出身の叔母に便りをしたため送った。
   西之表市 武田静瞭(70) 2007/2/19 掲載

写真はOYANMAMAさんからお借りしました。

好きだからこそ

2007-02-19 16:03:15 | かごんま便り
 鹿児島支局が移転した。場所はJR鹿児島中央駅に近い。赴任先では、まず支局を中心に歩き回り土地柄、雰囲気、景色などを楽しんでいる。わずかな距離の支局移転でも、その癖が出ている。以前、見た場所でも、より深く観察している。
 そこで数日来気になっていることがある。支局が入っているビルの近くにあるライオンズ広場で見つけた。広場には勇ましい雄ライオンのブロンズ像と噴水、綺麗な公園がある。
 ここの石台に刻まれている文字に「贈ライオンズ像 叫べ正しく 謳え明るく 吠えよ男々しく」とある。男々しく? 元気で活発な女性が多くなり、〝女々しい〟男を叱咤するためだろうか。あるいは「男らしく」「雄々しく」などの間違いかなと、しばらく考えた。
 と、近くに立て看板があり、この広場を整備した趣旨が説明されていた。この中に「叫べ正しく 謳え明るく 吠えよ勇々しく」とあった。このライオン増に希望を託し、青少年の健全な……と続く。なるほど「勇々しく」なら理解できる。
 説明によると1978年(昭和53)年にライオン像が建てられたようである。以来、「男々しく」のままらしい。さて「勇々しく」と「男々しく」のどちらが正しいのか。
 私がメモしたり、写真を撮ったりしている時に、散歩中の男性が通りかかった。近くの人らしい。私は「どっちが正しいと思いますか」と聞いてみた。初めて知ったらしく、興味を示して、「勇々しくだろうね」と答えてくれた。
 鹿児島は偉人たちの銅像や石碑が多い。今、NHKの大河ドラマで篤姫をテーマにした物語が放映されるとかで、観光関係者は篤姫の勉強会などを開いているようだ。しかし、鹿児島を訪れる観光客は篤姫だけが目的でなく、他の名所旧跡や観光施設なども訪れるはずだ。これを機に既存のものを見直し、整備したらどうだろう。
 例えば、軍服姿の西郷隆盛像の近くには中央公園がある。公園にはスケートボードをする若者が集まり、楽しそうに練習しているが、散歩する人や観光客には迷惑だ。他県にはスケートボード専用の施設をつくり、提供している自治体もある。そろそろ鹿児島も必要だと思う。
 今回は観光客の身になって気づいた事を少々。これも鹿児島が好きだからこそ。
   毎日新聞 鹿児島支局長 竹本啓自 2007/2/19 掲載